「ふれあい」Vol.24 2010年11月号

南伊勢町南島庁舎内に開設されたアマチュア無線の社団局を拠点に、
行政やアマチュア無線の仲間と協力しあい、災害時に地域の被災情報を収集する訓練や地域の防災力を高めようと町の防災に取り組む皆さんに、熱い思いをお伺いしました。


代表 加藤 元さん(写真右)
副代表 仲林 幹太さん(写真左)

アマチュア無線を
        地域の防災に役立てる

私は約10年前に名古屋で災害バイクボランティアに入会しました。
そこで、仲間から阪神・淡路や中越地震の被災地へ行った際の話を聞きました。

全ての電話が通じない状況で、車が通れない所へバイクで様子を確認に行った際、現地の報告をするために何度も往復しなければならないところを、アマチュア無線を使うことでスムーズな情報収集ができたということでした。
これをきっかけに私はアマチュア無線の免許を取得し、地域防災活動に役立てられないかと考えるようになりました。

そんな折り、副代表の仲林君から「この地域でも防災ボランティア団体を設立しては」との提案があり、「南伊勢アマチュア無線防災ボランティアネットワーク」を設立しました。

メンバーのほとんどは消防団の経験者や現役の消防団員であることから、地域の防災力がこのままではいけないと常々感じていました。

何故ならば、この地域は、災害時にライフラインが復旧するまで相当時間がかかると考えられ、災害状況を知るための情報も入手できず、孤立集落がいくつもできてしまう可能性があるからです。

平成19年に起きた亀山市の地震の時も携帯電話が不通になりました。
その日は少年野球の県大会で、三重県内から亀山に人が集まっていましたが、監督として参加していた副代表の仲林君が現場にいたお陰で、無線により周辺の地域がどうなっているかなどの災害情報の確認ができ、安心することができました。

このように自然災害時の経験や仲間の話を通じ、私たちは、ほとんどのメンバーの車に無線機を積んでいて、自宅にはアマチュア無線の固定局を持っていることから、この無線を有効活用し「地域のみなさんのお役にたてたらいいなあ」と思い、無線仲間で活動を始めました。


M-ARNメンバー:[写真左上]小山雅人さん、[写真右上]小山洋さん、[写真左下]橋本務さん、[写真右下]松平哲治さん

いっしょに活動できる
         アマチュア無線の仲間を!

地域活動への思いが通じ、平成22年5月に南伊勢町役場の支援のおかげで、社団局を南島庁舎内に立ち上げることができました。
この社団局は、グループで登録すれば、アマチュア無線に必要な無線従事者免許を持っていれば誰でも運用できます。

今後は、コールサインをなくされた方にも訓練へ参加してもらい、いざという時に運用してもらえるようにしたいと思っています。
できれば復帰してもらって一緒に活動してもらえたら、もっとありがたいですね。

また、まだ免許を持ってみえない方にも私たちの活動を知ってもらい、参加してもらえるようにしたいとも思っています。

現在は、その一環として地域の集会所などで防災啓発活動を始めています。
私たちの活動内容や防災に関する知識を知ってもらい、地域の防災力を高めたり、夏休みには、小学生対象の夏休み防災教室などの取り組みも行っています。

子どもたちにタウンウォッチングをしながら、免許のいらないトランシーバーを使う体験をしてもらった際には、電話とちがった面白さが新鮮だったようで無線機にも興味をもってもらいました。これをきっかけに親子で免許をとってもらえれば、立派な無線局になりますね。

今後もほかの地域にも協力してもらいながら町内各地で、様々な取り組みを行っていきたいと思います。

お互いに顔の見える
        防災ネットワークを広げたい

アマチュア無線は手軽に利用できるので、東南海地震の発生などの災害に備えて、アマチュア無線のネットワークを広げたいと思っています。

まちを越えての連携は、今後の課題でもあるため、7月に津市で開催されたアマチュア無線の防災連絡会議に参加しました。
やはり個人や市町単位でやっているだけですと情報に偏りが生じ、なかなか正しい情報が共有できないんですね。

アマチュア無線の情報は、インターネットの情報と似ていますので、知らない人からの無線情報の信憑性を判断する難しさもあります。
そのため、普段から信頼できる繋がりが大事になります。
災害に備えて、日頃から訓練や親睦を通じて連携を深め、お互いに顔が見える関係を築いておけば、有事の際に、すぐに信頼できる連携がとれるため、ネットワークづくりを大切にしたいと思っています。