江戸時代、粋な縞柄と生地の丈夫さから、松阪商人らが売り出し、当時江戸の人々の間で 大流行した松阪木綿。 その歴史ある手織り松阪木綿を伝え、未来に繋ぎたいと製品づくりや手織り教室を開催! さらに原料となる綿も、松阪産を目指します!
工房には、さまざまな松阪木綿の作品が展示されています。 夏にオススメなのは、こちらの扇子。 手織りだからこその、薄さと透け感です。
こちらはストールと、デザイナーさんに依頼して作ってもらったという、松阪木綿のコサージュ。 ストールには細い糸を使って織られており、松阪木綿のイメージがガラリと変わります。
『手染め・手織り工房おらんせ』の梅垣かおりさんに、この織物をするきっかけをお聞きしました。 「たまたま手織りを体験する機会がありまして、そこで初めて、奥深い手織りの技術の魅力を感じました。 いずれ織り手さんになってくれる人が出てくるかもしれなませんが、1ヶ月、2ヶ月で習得できるものではありません、 そこで、技術を伝えていく場の必要性を感じ、お店や教室を構えました」
こちらは機にかける前の経糸。 糸は先染めをしているため、最初にたてる時点でガラを決めきちんと順番に則って、糸の準備をします。 これが一番重要な作業で、織りの80%は、この出来で決まるそうです。 なんと長さはおよそ20m!
『おらんせ』では松阪木綿の特徴のひとつ『平織り(ひらおり)』を学ぶことのできる教室を開催しています。 まず、のべ8時間のベーシックコースを受け、その後は、受講生の目標に合わせたスキルアップ講座へ。 経験を積めば、松阪木綿の反物を自分の手で織ることもできます。 「始めて丸3年になります。 最初は不安でしたが、やってみると意外にできたので、楽しく続けています。 知った時は、手織りが身近にあったことに驚きましたね。 『鶴の恩返し』くらいしか思いつきませんでしたし。 織り方の丁寧さが、とても大事だと思っています」 と、手織り教室の受講生。
教室だけでなく、もちろん手織りの体験コースもあります。 体験で織った松阪木綿は、希望に応じて、カードケースやブックカバーなどに仕上げてくれます。 松阪の伝統工芸・松阪木綿の手織りが体験できてそして、世界にひとつだけのオリジナルグッズが手に入る。 みなさんも、いかがでしょうか。
また、梅垣さんは手織りだけでなく、手染めにもこだわり、現在、藍染めにもチャレンジ中。 こちらは実際に梅垣さんが染めたもので、出来栄えは上々のようですが。 「ようやく藍を建てるところまでこぎつけた感じです。 もっと染めたい気持ちもありましたが、今の段階でここまで染められたことに満足しています。 染めてみて良かったのは、手で擦った時に藍の色が手につかないんですね。 色落ちなどが一番気になっていたので、この目で確かめられて良かったです」
さらに、原材料となる綿(わた)も、松阪産にこだわりたいとの考えから、綿の栽培も行っています。
しかも綿を育てているのは、以前『ゲンキみえ生き活きレポート』で紹介した『NPO法人 亀さんの家』代表の亀井静子さん! 『亀さんの家』は、生ごみを使った堆肥づくり・畑づくりで高齢者福祉と資源循環型社会を結び付けていこうと取り組んでいるNPO法人です。 「たまたま私が綿を作っていて、何とか松阪木綿に繋がればいいなという思いがありました。 そんな時、知人から梅垣さんを紹介してもらい、話しているうちに娘のような気がして、一緒に頑張ろうとなり、今つながっているんです」
現状はまだ多くはないものの、バッグの柄そのものに手紡ぎの糸を織り込んだものが、お店に並んでいます。
「いずれはここにオーナー制にして、家族で自分の名札を立てて、綿を播くところから摘むところまでをしてもらい、それを『おらんせ』に持って行って、松阪木綿に仕立ててもらえば、もっともっと知名度が上がるので、実現していきたいですね」 と、亀井さん。 「それはとても良いことだと思います。 私自身、綿を地元産にしたかったのは、地域の活性化につながってほしいとの思いからでした。 それを具体的に、考えられていたのが亀井さんなので、とても素晴らしいと思います」
松阪の歴史と文化をつむぐ。 松阪の人と地域をつむぐ。 先人の遺産と現代の感性で生み出す『おらんせ』の松阪木綿。 夢は、世界への発信です。