第133回『サルシカ隊長レポート』2015年8月

平成26年3月。勢和多気インターから尾鷲北インターまでおよそ55キロ間において紀勢自動車道が全面開通した。
津市から尾鷲まで国道42号だと約130分かかっていたのが、紀勢自動車道を使うと約80分。驚くほど便利になった。
高速道路が開通して、並走する国道42号線沿いの地域はどう変わったのか。
サルシカ隊長の奥田は、相棒の写真師マツバラと共に国道42号線を南へとくだる旅に出た。

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ほんの数年前まで、尾鷲や熊野に津からいくとなると大変であった。
まったく高速がない頃は、熊野まで車で4時間近くかかった。
同じ県内でありながら、日帰り旅行のコースでなかった。

「だからさあ、尾鷲で朝から撮影だと、前泊だったのよ。
 で、おいしい魚を食べて飲んで楽しむことができたわけよ」

ハンドルを握りながら眠そうに目をこすり、写真師マツバラが言う。

「そうだったねぇ、いい時代だったねぇ」

サルシカ隊長のワタクシは、写真師が何を言いたいのか、次に何を言うのか、もう百も承知だったのでテキトーに返事をした。

「まあ高速が出来たんだから尾鷲の日帰り取材は当たり前だろうと思うんだけどね」
「うんうん」
「きょうは国道で尾鷲へいくんでしょ」
「そうそう」
「途中あちこち寄っていくわけでしょ」
「ふんふん」
「いくら帰りは高速とはいえ、日帰りはちょっとキツイんじゃないのって思うわけよ、ボクは」
「そうだねえ」
「だからさあ、尾鷲に着いたら風呂にでも入ってさ、ビールなんか飲んじゃって夜の町でパ〜っとさあ!!
 ねえ、ダメなの隊長!? ボクいっぱいいっぱいがんばるから、ねえねえ隊長ってばあ」

まったくもってうるさいのである。
ワタクシだって尾鷲で飲んで泊まっちゃいたいけど、予算も時間もないの!
ダメなもんはダメなの!!!

 

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さて。
伊勢自動車道の勢和多気インターチェンジから分岐し、国道42号線に沿って三重県を南下する紀勢自動車道は、いずれ和歌山でも延伸中の紀勢自動車道とがっちゃんこし、紀伊半島をぐるりとまわる自動車道になる。

平成18年から供用を開始し、おととしの平成25年に紀勢大内山ICから紀伊長島ICまでが開通、そして昨年(平成26年)に尾鷲北ICまで開通した。
発表されているデータによると、紀北町や尾鷲市など東紀州地域に流入する車の量は大幅にアップしているという。

が、それは自動車道を走って流入する車が増えたということである。
ならば、通過点となってしまった地域はいまどんな状況なのか。
国道42号線を実際に走って、その状況を見ていこうというのが今回の目的である。

ちなみに、尾鷲や熊野にしょっちゅう取材に出かけるワタクシや写真師マツバラも、いつも自動車道を使っていて国道を走ることはほとんどない。
久しぶりに走る42号線の旅であった。

 

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松阪から国道42号に入り、そのまま南下。
多気町へと入る。

このあたりは、松阪の通勤圏、生活圏であるせいか、交通量が多い。
以前とまったく変わらない感じである。
勢和多気ICを越えて、大台町へと入っても交通量はそのままである。

 

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最初の立ち寄りポイントである道の駅「奥伊勢おおだい」に入る。
平日の午前。
それもかなり早い時間である。
それにしては車も結構停まっている。

 

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道の駅の敷地内にある大台町観光協会の案内所を訪ねてみた。
実は数週間前に、ワタクシが出演しているテレビ番組「とってもワクドキ」(三重テレビ放送)のロケでこちらのみなさんにお世話になったのだ。

 

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大台町観光協会のみなさんは、大台町を流れる日本一の清流「宮川」の魅力をたくさんの人にしってもらおうと、SUPという新たな水辺のスポーツの体験ツアーをはじめたのだ。
SUPとは、スタンド・アップ・パドルの略で、大きめのサーフィンボードに立ってのり、パドルで漕いで水面散歩を楽しむスポーツ。
ワタクシも体験させていただいたのだ。

写真上は実際のロケのときの様子。
宮川の水の美しさ、自然の壮大さを全身で味わうことができた。

>>SUPの詳細はこちら!!

 

今回は、観光協会のみなさんに大台町を訪れるお客さんの状況を聞いてみた。
ちゃんとしたデータがあるわけではないが、実感としてほんの少しであるがお客さんは減っているようである。
しかし紀勢自動車道の開通はピンチではなく、チャンスと考えている。
だからいま、SUPをはじめ、さまざまな体験プログラムやイベントを企画準備しているそうだ。

「大台町を通過点ではなく、目的地にしていただく。それがわれわれの仕事ですから!」

大台町観光協会の決意は強い。

 

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続いてさらに南下し、大紀町へ。
大紀町に入ってすぐ、紀勢大内山インターを左に折れ、海へと出る。
そこにあるのが、大紀町で唯一海に面した町、錦である。

漁港を抜けて走ると、南国ムード漂う海水浴場がある。
錦向井ヶ浜遊パークトロピカルガーデン。

>>トロピカルガーデンの詳細を見る

ここも何度も何度も取材に訪れているところだ。
海開きをしてまもない時期であるが、やはり午前中だからかあまり人の姿が見えない。

 

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話を聞いたりする人もいないので、仕方なくトーテムポールに抱きついてみた(笑)。

が、帰り際、浮き輪やタープなどのレジャー道具を満載にした車が何台もやってきて、子どもたちが飛び降りてきた。
よかったよかった。
これから浜辺は賑わうようだ。

とはいえ、ここは三重県人もまだまだ知らない穴場の海水浴場である。
まだ来たことがないって人はぜひともどうぞ!!

 

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さあ、国道42号に戻ってさらに南下。
紀勢大内山ICを超えると、とたんに交通量が減る。
前も後ろも見えるところに車がいなくて、走っているのはわれわれの車のみ、という状態が長くなった。

 

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実は、紀勢自動車道は、紀勢大内山ICを超えたちょっと先に料金所があり、ここまでは有料。
これから先は無料なのである。
その理由は、紀伊長島IC以南は、高速道路会社によるものではなく、国と地方自治体の負担による直轄事業であるから、らしい。
ま、いまひとつ理由は理解できないが、とにかく無料なのだ。

無料だから地元のひともどんどん高速に乗る。
ここまで節約して下道を旅してきた人も、やれやれと高速に乗る。
で、一気に国道42号線から車がいなくなったわけなのだ。

※注:紀勢大内山ICから尾鷲方面へ乗ると、紀伊長島ICまでの料金は課金されます。
交通量が減った要因は紀勢自動車道の無料エリアに入ったことだけではないようです。
訂正してお詫びします。

 

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国道42号を行く車も人も極端に減った。
が、代わりに道に沿って流れる大内山川に人の姿が増えてくる。
鮎の友釣り楽しむ人たちである。

考えてみれば、川や海、山の自然は、人を集める強力なスポットである。
高速がつながったおかげで、名古屋や大阪などの遠方からも釣り糸を垂らしにやってこられるわけだ。

他から見て、その地域の魅力は何なのか。
目的地になる地域資産は何であるのか。
しっかりと考えていく必要がある。

42号の旅もいよいよ大紀町に別れを告げて紀北町に入る。
そこでわれわれはあっと驚く祭りの準備に出会うのであった。

次回につづく。

 

写真/松原 豊