「ふれあい」Vol.28 2011年5月号

春には樹齢130年の巨大なしだれ桜が境内を彩り、多くの花見客を集める大紀町の不盡山龍祥寺。
「開かれたお寺」を目指し、活動する住職夫妻とお寺を支える地域住民の強い思いがつながり、連携した活気ある活動が行われています。
そんなお寺や地域に対する熱い思いを伺いました。

住職夫人 小倉 真弓(おぐらまゆみ)さん(写真右)
婦人会 会長 出口 美代子(でぐちみよこ)さん(写真左)

年女と檀家の婦人が
         強い結束でお寺を支える

婦人会ができたのは、1979年のこと。
先代住職の時に、お寺の下働きをしていただいていた年女(ねんにょ)さんと檀家のご婦人達により、お寺を地域に開放した拠点にできないか、と考えたのがきっかけです。

普段はお寺の行事などの下支えや、カンボジアやミャンマーなどの子どもたちへ絵本を送るボランティア活動を行っています。
活動資金は、お寺の祭りなどで手作りの五平餅を売り、自分たちで集めているんですよ。

また、住職の奥さんと婦人会有志が熊手を作り、お寺で販売しています。
このお寺の階段は段が高くてとても歩きづらいので、その階段を補修するために資金をなんとかしたいと、お寺にあるお稲荷さんを信仰する方が多いことから「熊手」に目を向けました。

「熊手」は、色鮮やかな和紙を使い、宝船や招き猫など、おめでたいモチーフをデザインしたもので、毎日、時間があるとお寺へ自由に集まり、ひとつひとつ手作業で作っています。


婦人会役員 生駒(いこま) えり子さん(写真上段左)
小野 春代(おのはるよ)さん(写真上段右)
伊東 富子(いとうとみこ)さん(写真中段左)
小野 千恵子(おのちよこ)さん(写真中段右)
奥村 恵美子(おくむらえみこ)さん(写真下段左)

みんなが集まるお寺を
          目指し地域で一体となってもり立てる

このお寺の住職はとても檀家さん思いで、いつでも気軽に地域の方々が訪れることができるお寺作りを目指していらっしゃいます。
私たち婦人会以外にも、280軒の檀家からなる「護持会(ごじかい)」、「龍祥寺音頭保存会」、「御詠歌(ごえい か)」の方々など、さまざまな団体さんがお互いに協力しながらお寺のために活動しています。

お祭りやお盆の時には年長者が先頭に立ち、本当に熱心に頑張っていただいてるんですよ。
他の団体さんの支えなくして、私たちもここまで活動することはできませんでした。
今後も、みなさんのお力をいただきながら、桜祭りなどを実施したり、そこで地域の特産品を販売したりしていきたいですね。

次の世代にもお寺の大切さを
               伝えて行きたい

今の子どもたちを見ていて「道徳」の必要性を強く感じます。
私たちの時代はお寺で遊んだりして自然とお寺が生活の中にありましたが、今の子はそうではありません。
だから、そうめん流しや地蔵盆などの行事を実施し、子どもにもお寺に足を運んでもらい、住職からさまざまなお話を聞かせてもらってはどうかと思っています。
いつかは私たちもお寺に入ることになります。
次世代にもお寺の大切さを伝えていきたいですね。

地域の皆さんのご協力を得て
            拠り所となるお寺を作りたい

〈住職 小倉康司さんインタビュー〉
お寺に地域の人を集め、少しでも地域の拠点となるお寺にしたい、そんな想いで日々活動しています。
年間を通じていろいろな行事を行っていくためにも、各団体さんのご協力は不可欠です。
婦人会の皆さんはとても熱心で、おかげでお寺の運営もうまくいっています。

お盆の準備の時などは、暑い盛りであるにも関わらず汗だくになって働いてくださる方がみえます。
その姿には本当に頭が下がる思いで、私自身も随分勉強させていただいております。

利害関係で結ばれたものではなく、純粋な奉仕の気持ちで集まってきていただいている方ばかりなので、つながりはとても強いですね。

お寺の象徴はおそろいのTシャツです。
一体感を感じていただけるよう、みんながお揃いで着られるものをと思い、制作しました。

寺の名前よりも「STAFF」の文字が大きいのは、活動する人が前面に出てこそだという意味からです。
これからもより一層、みなさんの拠り所となるお寺をめざして、地域の方々と手を取り合って頑張っていきたいですね。


村田昭生(むらたあきお)さん 護持会総代長(写真左)
奥山幸徳(おくやまゆきのり)さん 護持会(写真左)
生駒喬(いこまたかし)さん 護持会(写真中央)

お寺を支える大黒柱として
             活動の中心的な役割を担う

「護持会」は、3名の総代、13名の役員、280軒の檀家からなっています。
先祖代々お世話になっているお寺というだけでなく、地域や檀家を思い、開かれたお寺を目指す住職夫妻の人柄も、私たちが活動を続けられる理由の一つです。

この地域も住民が少なくなっており、檀家も減ってきます。
「みんなでお寺を守っていこう」という気持ちを持ち、お寺への関心を高めてもらえるよう、より一層頑張っていきたいと思っています。


稲森伊久治(いなもりいくはる)さん 龍祥寺音頭保存会会長

灯籠送りでみんなが踊る
            阿曽独特の盆踊りを伝える

 
阿曽には江戸時代より続く独特の音頭と踊りがあります。
戦争により一時途絶えましたが、今から20年前に我々がその音頭を復活させました。
扇を使った「扇踊り」はどこにもないこの地域だけの踊りで、私たちが音頭をとり、婦人会の方に踊ってもらっています。
お盆の灯籠送りの時には境内に釣り灯籠を灯し、その周りをみんなで踊ります。
おごそかな中にもとても華やかさがあり、初めて参加された方もとても感動されますよ。