FM三重『ウィークエンドカフェ』2015年10月17日放送

志摩市阿児町安乗は、灯台と文楽で有名な町。
ここで生まれて漁師歴は55年になる、『あのりふぐ協議会』会長の浅井利一さんが今回のお客様です。
とらふぐ漁を始めてからは今年で31年め。
70歳を過ぎた今も、奥さんと一緒にとらふぐ漁をしています。
安乗のフグ漁の歴史は100年以上前から。
西は和歌山、東は関東、九十九里浜までふぐを追っかけていました。
現在、所属する船は32隻。みんな一丸となって頑張っています。

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漁場に恵まれている安乗

『あのりふぐ』は志摩半島から伊勢湾、遠州灘にかけての沿岸地域で獲れる、体重700g以上の天然とらふぐのことを言います。
それより小さいものは再放流し、大きくなってから獲ります。

『あのりふぐ』をみえブランドにしていただき、『あのりふぐ協議会』を作ってから1年ちょっとで総務大臣賞もいただきました。
みえブランドまでの4年間に立ち上がる農山漁村賞もいただきまして、なにかトントン拍子だったというか。
漁業者がやろうと努力をしたのと、みんなが応援してくれたのが大きいですね。
市や県や水産庁も協力してくれましたし、それが良かったのではないでしょうか。

安乗は伊勢湾の先端であり、的矢湾の一番入り口です。
良い所に恵まれていまして、何を食べてもおいしいんです。
あのりふぐもおいしいし、海老もおいしい、牡蠣もおいしい。
来年には『伊勢志摩サミット』もありますので、伊勢志摩は何を食べてもおいしいと言われるように、一生懸命応援しています。
海老もふぐも食べてもらおうと、安乗の漁師たちは一生懸命がんばっていますよ!
そのせいか、安乗は活気があると、よく言われます。

 

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出漁は夜中の1時、そして15時に帰港

私は昭和35年に中学を卒業してからずっと漁師をしていて、漁師生活50年になります。
最初は車海老漁からでした。
卒業したら私が漁師になると思って親父が待っているから、就職活動なんてしませんでした。
高校にも行かずに、ずっと漁をしてきました。

みんな、基本は一年中漁に出ています。
ふぐ以外の時期にはサバもありますし、一本釣りも行い、安乗のアジはおいしいと人気が出てきて、1匹1500円もするようになって来ました。
みんながいろいろな商売を行っています。
しかし一番魅力があるのはふぐですね、やっぱり。
ふぐ漁に行くと、海の中からひらひらと見えてくるんですよ。
一匹釣ると1万とか2万とか・・・キラキラ光って、忘れられないです。
早い人たちは夜中の1時に出港します。
遠いと静岡県の手前まで行きますので、早めにゆっくりとボチボチと。
みな、自分の働くところが決まっているので、余計なガゾリンを使わずゆっくり行って・・・経費節減ですね。
漁場が近い人は朝4〜5時に行く人もいます。
帰ってくる時間は15時くらいなので、長いと15時間くらい働いているわけです。
しかしまあ、2日も3日も行くと大変ですけど、最近は2日連続で出る日は、もうなくなりまして。
船もとても増えたので、漁場に行くと、愛知・三重・静岡の船が集まっているわけです。
すごいですよ。
大漁の日は、1日に30トンとか揚がるんですよ。
ふぐはとてもおいしいので、一般庶民にも味わって欲しいですが、やはり高い魚です。
11〜12月になると、忘年会などがあるのでキロ2万円ほどしますが、最初は3〜4千円くらい。
そこから2万円まで上がっていくんです。
これは年々同じですね。

 

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獲るだけではなく、どれだけ残すのかという漁法

以前、稚魚の放流を下関の方で教わってきまして、4万匹ほど放流しまして。
その後たまたま稚魚が成長したのか天然魚が湧いたのか、もう釣って釣って釣りまくりました。
平成2年の10〜12月の3ヶ月で50日くらい出漁しました。
今は同じ期間で15日ほど。
3分の1です。
ちょっと釣り過ぎたんですね。
今の考え方は変わってきて、どれだけ残すかを考えないと。
回遊魚のような魚は自分のところに来た時に獲らないと損だと思いますけど、ふぐの場合は、伊勢湾周辺にずっといるので、上手に釣るのが大切。
本当なら20日くらい出漁したいところなんですがね。
10トンの船もあれば、3トン4トンの船もあると、小さい船のことも考えないといかん、とかいろいろあるんですよ。
また、三重県だけでも安乗、答志、石鏡とか、愛知県へ行くと日間賀、豊浜、佐久島、こういろいろあるんですよ。
三重、愛知、静岡、3つの県の漁師さんたちが規定を作り、資源を守る漁業を
行っています。
私らは県のリーダーのいうことを聞き、休みかどうかが決まるんです。

 

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あのりふぐは、安乗の料理人がおいしく調理!

来られるお客さん、みなさん『てっさ(ふぐの刺身)』を喜びますね。
私は何でもおいしいと思いますし、唐揚げも好物です。
中でも、塩焼きがおいしいのですが、みなさん食べたことがないと言いますね。
私はふぐ調理の免許を持っているので、自分で調理をして塩で焼くんですよ。
また、てっさもポン酢ではなく、良い塩を付けて食べるとおいしいです。

そうそう、安乗の人はてっさを引くのがとても上手なんです。
私、感心しますわ。
安乗の旅館の若い子も、てっさを引くのが私よりよっぽど上手で安心します。

私ら漁師は生きたのをそのまま引きますが、本当は新しいのはダメなんです。
3日から1週間サラシを巻いて寝かせて、3℃〜7℃と温度を調整。
お客さんの注文があると、その3日前に締めて、上手いタイミングでてっさに引いてくれるんです。

私たちのは釣ってすぐその日に食べます。
格好良くはありませんが、それはそれでおいしいですよ。
一番オススメの時期は、正月前から3月頃までで、白子が大きいのでおいしいんです。
1匹の白子で2キロというのもありました。

 

努力する人は報われる

努力をする人は、必ず報われます。
海の中にはお金がいっぱい落ちているんです。
努力する人はそれを上手に見つけて、お金持ちになれる。
私はそう思います。
今日ふぐが休みなら、一本釣りに行こうとか。
それでアジを釣ったりサバを釣ったり、サワラを引きに行ったりとか、みんなが負けないように競争するとお金になります。
あのりふぐを筆頭に、あのりさば、あのりあじ、宝彩えびと、安乗のブランドがたくさん生まれています。
その名前をもっと広めることで、地元の漁師たちがもっともっと輝けるようにしていきたいです。