第141回『サルシカ隊長レポート』2015年10月

古い蒸気機関車が展示され、時に子どもたちの格好の遊び場になっている公園がある。
あ、私も××公園で遊んだことある!って方は多いのではないであろうか。
私もそのひとり。
津駅近くの偕楽公園に置かれている蒸気機関車でよく遊んだ。
運転手になった気分で、小さな窓から線路なき前方を眺め、吹き上げる煙と車輪が動き出す音を想像してコーフンしたものだ。
県内には、蒸気機関車を展示している公園(無料で入れるところ限定)が6ヶ所あるという。
そのすべてを回ろう!!
そんな思いつきの旅に写真師マツバラと出かけた。

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汽車はいく、少年の夢を乗せて!

え、もう少年じゃないだろうって?
いいのいいの。
ワタクシはもうすぐ50歳だけれど、少年の心を持っているのだ。
写真師マツバラだってもう40代の後半だけれど、身長は子どもと変わらない(笑)。

そんな2人のおっさんが、県内の公園に眠る蒸気機関車をめぐる旅に出かけることになった。

まわるのは、伊賀、
亀山で2ヶ所、
あと津と松阪と玉城町の計6ヶ所。

考えてみれば1ヶ所で1時間取材したとしても6時間かかる。
移動時間を考えると8時間以上。
たった1日、しかも陽が暮れるまでにすべて回れるのか。
まさにウルトラ超特急の耐久レースなのである。

 

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伊賀の蒸気機関車をさがせ!

ワタクシが暮らす三重県津市美里町は、伊賀との市境にある。
というわけで、まずは伊賀から回ることにした。

午前8時30分。
まずわれわれは、伊賀市柘植町にある「余野公園」へとやってきた。
ここは鈴鹿国定公園に指定されている。
とにかく広い。
蒸気機関車を探して車で中へ入ったら、そのままトンデモナイ山奥まで入っていってしまった。
慌てて引き返し、入口の看板を確認する。
が、そこに蒸気機関車の展示場所は記されていない。

 

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偶然とは恐ろしい

余野公園の入口のそばに広大な芝生公園がある。
そこを何気なく見ると、管理人さんらしき人がこちらに向かっててくてく歩いてくる。
まだ朝が早いので他に人の姿はない。
で、私も管理人さんらしき人の方へと歩いて、機関車の場所を聞こうとした。

お父さんとの距離、15メートルのところで、向こうが「ああッ!」と声をあげた。

「あんた、テレビに出とる人やな!!」

話を聞いてみると、なんとその方は、三重テレビで非常にお世話になっている方のお父さんであった。
ボランティアで公園の管理をやっているという。
なんという偶然!

 

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広場をひたすら歩け!

蒸気機関車は、広場の一番奥、茂った木の中にあるという。
公園の入口付近の駐車場からは直接見えないので要注意。
駐車場に車を停めたら、そのまま広場を突っ切ればそこにある。

 

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蒸気機関車は木漏れ日の中で眠っていた

なんとも神秘的で感動的な光景である。
巨大で質量のある黒い歴史的物体は、木々の中で息を潜めている。

 

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高い金網が歴史を囲んでいた

「え、まさか中に入れないの??」
「わっちゃー、いくら腕のいいボクでもこれじゃあ写真撮れないよ〜」

写真師がさりげなく言わなくていいことを言う。
無視して金網のまわりをさぐる。

 

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入場時間は午前8時30分から午後4時30分

なんと!
ここは午前8時半から午後4時半までであれば自由に中に入ることができる。
もちろん手に触れることもできるし、乗り込むことだって出来るのだ。

 

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ついにご対面! D51831

余野公園に展示されている蒸気機関車「D51831」は、国鉄OBのみなさんが中心になって結成された伊賀市蒸気機関車保存会のみなさんによって管理されている。
車両の修繕はもちろんのこと、機関車の周辺の草刈りまでやっているという。
そのためか保存状態はとてもいい。
雰囲気がそのまま残されている。

 

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機関車の詳細を紹介しておこう

展示されていた「D51831」は、昭和17年2月に国鉄鷹取工場で製造。
当時の価格で、なんと1000万円!
今の金額に置き換えると、一体いくらになるのであろうか。

東海道本線、山陰本線、関西本線を30年に渡って走りつぎ、昭和48年に休止。
総走行距離は、なんと200万キロを超える。
高度経済成長期を支えた働き者なのだ。

 

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さあ、中に乗り込もう

歴史に触れ、歴史の中に入り込むのだ。

 

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黒々とした機関

萌える。
こいつは萌える。
可動部は少ないが、かつて石炭を放り込んだ燃焼部が口をあけている。
この巨体を動かす水蒸気の力ってすごいんだなあ、と改めて思う。
ここで真っ黒になって石炭を次々にくべていた人たちもすごいなあ、と思う。

 

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撮影、取材時間は40分程度。
駐車場へ戻ると、管理人室からさきほどのお父さんが出てきた。
ぜひお茶でも飲んでいって、と誘われたが、残念ながらわれわれには時間がない。

さあ、次へ行こうではないか!

 

D51形蒸気機関車
国鉄の前身である鉄道省が設計、製造した、単式2気筒で過熱式のテンダー式蒸気機関車。
主に貨物輸送に用いられた。
製産台数は1,115両に達しており、ディーゼル機関車や電気機関車などを含めた日本の機関車1形式の両数では最大を記録した。この記録は現在も更新されていない。
「デゴイチ」の愛称は、日本の蒸気機関車の代名詞にもなった。

 

写真:松原豊