「ふれあい」Vol.30 2011年7月号

熊野古道の世界遺産登録を受け、地域に残る熊野古道『荷坂峠』をはじめとするまちの歴史遺産を守り、語り継ごうとする皆さんに、お話を伺いました。


塾長:中村直幸さん

■熊野古道の世界遺産登録を受けて会を結成

熊野古道が世界遺産になり、私たちの地域でもツヅラト峠がクローズアップされました。
その一方で、あまり知られていない荷坂峠のような場所を何とか保存し活用できないか・・・。
そんな思いから会を結成しました。

最初は荷坂峠や芦谷道への案内標識の製作や草刈などの整備から始めました。
当時、荷坂峠の登り口までは案内標識がなく、せっかく歩きに来てもらっても登り口までの道がわからない状況でした。

そこで自分たちで案内標識を手づくりすることにし、2年間で30本ほどを設置しました。

■地元の皆さんにも意識されていない、まちの歴史遺産に光を当てたい

世界遺産の熊野古道は整備されてきても、ほかにも歴史遺産として残したい場所がたくさんあります。

でも実際は、地元の皆さんにあまり知られていないのが実情です。

例えば、農業用の用水路として人の手で山をくりぬいた貴重なトンネルや、熊野古道の宿場町であった駒地区、巡礼の墓を200年来守ってこられた家系の方がみえる阿曽地区など、まだまだ素晴らしい場所があります。

私たちは、メンバー同士でこれらを伝え、大切に残していくための勉強会や意見交換をしたり、その地区の歴史を教わりに出かけたりしています。

これまで活動を続けてこられたのも、新たな発見や知識を深めることができる面白さのおかげです。
また、会の名称に『塾』という意味を持たせたのも、会員みんなで勉強し、お互いに切磋琢磨していく形になればいいなあと思ったからなんです。

■地域の人に話を聞くと歴史がよく分かる

熊野古道は地元の人に案内してもらうと面白いと思います。
私たちも語り部としてお客さんに楽しんでもらえるよう、ガイドブックに載っていないような案内を大切にしています。
そのために、案内する前に地域の古老からお話を聞くなど、地域の人から資料を集めてきて説明していますね。

■まちに残る文化財を、まず地域の皆さんに伝えていきたい

世界遺産は外から人に来てもらう観光地としてだけでなく、傷つけずに守り、そして残していくためのものだと思います。
だからこそ、この地区に世界遺産という大きな文化財があることを地元の皆さんに伝えたい。
これからは若い人にも会に入っていただくなど、まずは地域の人から再確認してもらい、まちの大切な歴史を語り継ぐ遺産として残していきたいと思っています。

■たいき歴史街道塾の頼れる仲間たち

『お互いの強みを生かしながら地元の見どころを案内しています』

私たちの会では、語り部として地元を案内するときは一人ひとりの得意分野を活かして案内を行っています。
例えば、歴史に詳しい者と植物や木に詳しい者がペアで案内することもありますね。


(前野昌成さん)

■大内山・山の道具館「ならり」を運営

私は主に散策中に見かける自然や木について説明をしますね。
案内するために自信をつけようと3年ほどかけて大内山地域の木を70%ほど集めました。
樹木の先生に聞いたり、本で調べている間に、大内山の樹木や古い農機具などを展示する私設資料館も開設しました。
古道に設置した標識も、この館内で製作しました。


(村田惇さん)

■大内山村史の編集に携わった

塾長が一生懸命やっているので協力したい。
それが入会のきっかけでした。

当時、注目が集まっていたツヅラト峠だけでなく、荷坂峠のような認知度の低い所にも歴史的な視点を当てる塾長の姿勢に感心しました。

ツヅラト峠は1000年以上前の平安時代の道、荷坂峠は新しい江戸時代の道としてそれぞれに見どころがあると思います。
これからは世間で知られているツヅラト峠だけでなく荷坂峠にも注目が集まっていけば面白くなるのではないか、と思っています。


(大内錦司さん)

■案内看板の製作・設置を通じ、大内山の歴史を知るきっかけに

中村塾長に声を掛けてもらい入会し、自分の出来る範囲で活動しています。
案内看板の製作・設置を通じ、新たに「大内山の歴史」を知ることが出来たことは、私にとって貴重な体験になっています。


(中桐邦男さん)

■貴重な文化財を守り、伝えていきたい

過去に「大内山村史」の編集に携わったこともあり「歴史」に興味がありました。
先人が残してくれた貴重な文化財を守り伝えていきたいと思います。


(小倉千広さん)

■力を合わせることは素晴らしい体験

小さいころから「歴史」が好きでした。
中村塾長の熱心なお誘いもあり入会し、活動させてもらっています。
少人数でも力を合わせることは素晴らしいことだと思います。