「ふれあい」Vol.30 2011年7号

紀北町と尾鷲市の農業者が立ち上がり、3年前に『紀北農業者の会』を発足。
地元農業者や家庭菜園者の生き甲斐となる直売所を作り、就農者を支え続けています。
住民たちの交流の場ともなっている直売所の運営や、これからについておうかがいしました。


副代表理事 藤原政則さん(写真右)
副代表 加藤雄也さん(写真左)

■地元の農業者が立ち上がり『紀北農業者の会』を設立

紀北町や尾鷲市では農業者同士のつながりが薄く、情報交換できる場がありませんでした。
また、紀伊長島区三浦地区にサービスエリアができる予定ですが、そこに出荷するためには個人単位では難しく、農業者のまとまった組織が必要と考え、3年前に『紀北農業者の会』を発足しました。

現在の会員数は約80名で、イベント等での販売や、県の技術員を招いての研究会、外部講師による研修会などを行っています。

かつては様々なイベントに出向いたり、テントによる販売活動を行ってきましたが、自分たちの拠点を持たない活動は不便で、専用の直売所の必要性を強く感じました。

とはいえ、ほとんどの会員は小売りの経験がなく、不安の声が多かったことから「直売部会」を設け、農産物直売所『さくらファーム』の運営を開始しました。

『さくらファーム』では毎週水曜日と日曜日の朝8時から朝市をやっています。
この直売所の建物は直売部会の会員が出資し、建築は会員全員で行いました。

この場所は活動に賛同してくださった地元の方からお借りしており、駐車場も広く、大変良い場所だと感謝しています。

■新規就農者を手助けし、農業者の活躍を支える

朝市では、出品者から売り上げの一部をいただくシステムで、その手数料が10%と少なく、品物の大きさや形の決まりもないなど、初めて農業に取り組んだ人や、家庭菜園をしている人も安心して出荷してもらえるのが特徴です。

実際、ここで農作物を販売することで名前が知れ、取引が広がった農業者もいます。
最初は直売所の運営も大変でしたが、今では売り場が増えたと喜んでもらい、様々な農作物を出荷してもらっていますよ。

■高齢者の生き甲斐作りや地元住民の交流の場にも

会員は70歳を超えた方も多く、自分の育てた農作物を販売することが生き甲斐となっている人もいます。
商品も、スーパーにないものを取り揃えたり、特色を出しています。

お蔭様で、最近ではお客さんに並んで開店を待ってもらうような状態で、多くの方に利用していただいています。

また、生産者やお客さん同士が井戸端会議のようにおしゃべりをし、住民同士の交流を深める場ともなっています。

これからも地元の農業者同士が力を合わせ、この売り場を末永く続けていきたいです。
こうした私たちの活動が、少しでも元気な町づくりに役立てば、うれしいですね。

■生産者(会員)インタビュー

(岩本修さん)

2年前に紀北町に移り住んで農業を始め、昨年のゴールデンウィークよりトマトを出荷するようになりました。
ここは出荷の手数料が安く、ここで売れることで口コミで名前を広めてもらい、大変助かっています。
お客さんからの喜びの声を聞くことが嬉しく、農業を続けていくための原動力となっています。
これからは同世代の仲間をどんどん増やしていきたいですね。

(龍きみ子さん)

2年前の直売部会発足当初から農作物を出荷しています。
今日は、破竹・らっきょう・ブロッコリー・白菜などを持ってきました。
夏場にはトウモロコシがたくさんできますよ。

この直売所では大きさや形がバラバラでも出荷できるのが気楽でいいですね。
これまでつながりのなかった方からも「おいしかったよ」という声を聞けることが嬉しく、生き甲斐になっています。