伊勢市『汐湯 おかげ風呂 旭湯 当主の酒徳覚三さん』(カフェ)

FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年1月2日放送

明けましておめでとうございます!
新年最初のお客さまは、『汐湯 おかげ風呂 旭湯』当主の酒徳覚三さん。
『旭湯』自慢の禊の湯は、お伊勢まいりに縁があるおもてなしです。
毎日毎日、二見浦の海水をトラックに積んで運んでいます。

大晦日の営業は、お昼12時から夜中の3時まで。
翌日の1日はその9時間後、お昼12時にオープン。
これが『旭湯』の正月の迎え方です。

1-2-2

日、タンクローリーに潮を積んでくる

天照大神が『かの神風の伊勢の国は常世の波の重波よする国なり。 傍国のうまし国なり。この国に居らむとおもふ』という言葉があります。
常世の波・・・波が、最初に寄せるのが、ここ二見なんです。 

私が海のことをしているので、それにこだわって昼の12時オープン。
そして深夜0時までの12時間が営業時間です。

営業が始まる前に海に行き、海水をタンクローリーで汲んでこないといけません。
これも潮の満ち引きがあるので、いつ行ってもいいというわけではない。
この潮にもこだわりがあります。
人間は十月十日で生まれてきます。
お医者さんは予定日は教えてくれますが、生まれてくる時間は教えてくれません。
その時間は何を見るかというと、潮の満ち引きを見るんですね。
『潮』という字は十月十日の組み合わせで出来ているのです。
その潮に合わせて生まれてくるんです、人間は。
この潮を毎日取りに行き、お客さんにひたってもらうことで、生まれ変わっていただくわけです。
私のところにはたくさんカエルがいるのですが、意味があるんです。
元の自分に生まれ帰ると。
それがお風呂の原点なんです。
みなさん、当たり前のように入るのがお風呂だと思っていますが、そんなに優しいものではなく、意味があるんですよ。

 

1-2-3

00年途絶えていた温浴場をオープン

以前は寒かろうがなんだろうが入水しました。
その名残として、正月に行われる御頭神事がありますが、今残っているのは伊勢市御薗の高向神社。
御頭神事に携わる当番の方は、二見に来て入水し、そのまま帰らず、公民館などにこもるんです。
帰ったら不浄が入りますから。
それだけ厳正なお祭りの精神を養う行事なんです。
禊の行事なので、一般の方には非常に難しいということから、これを温かくしたら、年中禊ができるのではと考えた人がいたんですね。
賓日館のところに碑が立っていますが、その場所にかつて海水浴場、温浴所というのがあったそうなんです。
その考えはとても良かったのですが、海水による塩害がひどく、設備がダメになってしまい、途絶えてしまいました。
それから100年ほど途絶えていたのですが、私が勉強する中で、これが風呂の原点だと気づきました。
賓日館の前身である『二見館』という旅館に元祖という形で残っていたので、当時の社長と話してご理解いただき、旭湯として営業することになりました。
しかし忠告されたのは、海水でやるということは相当厳しいと。
昔は釜の時代なので、ボイラーがすぐに壊れてしまうよと。
「あんたは頭で考えているだけ、私は身体で感じてきたので無理なことがわかる、とうていできるような状態ではない」
と社長に言われましたが、それでも始めました。

 

かげさまの心で商いを

営業を開始した23年前は、前回61回目のご遷宮の年。
平成5年にご遷宮でしたので、2回経験させてもらいました。
それまで持たないだろうと周りから言われていたので、よくここまで来たと思います。
しかし正直に言うと、内情は楽なものではありません。
普通の湯を沸かせばそんな苦労をしなくても良いのはわかっています。
しかしやっぱり歴史や文化を継承するのは生易しいものではないと、一日中がんばっています。
お客さんは地元の人も多いですが、最近では観光客も増えてきました。
近くにゲストハウスもあればホテルもあり、いろいろな形の宿泊方法があります。
そこに『旭湯』の案内も置いてありますし、今はネットの時代なので、『旭湯』を目指して来る方もいるんですよ。
うれしいことに、京都から毎月1回来てくれるお客さんがいます。
どこかに寄ってから来るのかとお聞きしたところ、ここを目当てに来てくれると。
海水に浸りたいと。
どこにもないやんか、とお客さんから言っていただきました。
毎日寒い中海水を汲みに行くのは大変ですが、そういう声をもらうから、続けられます。
私の想いが地元はもちろん、他県の方にまで伝わったと思うと、うれしいですね。
本当にありがたく、おかげさまの気持ちです。

 

1-2-4

勢与一の話

私が来ている黒いTシャツには『元祖 伊勢与一』という字が描かれています。
江戸時代、伊勢参りの人々が二見浦の海水に浸かり心身を清めているのを伊勢出身の与一さんが見て、そこからヒントを得て、江戸の銭瓶橋に湯屋を作ったのが銭湯の始まりと言われてます。
銭湯に関して勉強している私としましては、伊勢の与一の研究家になりたいと思っています。
旭湯はまちかど博物館にもなっていて、銭湯に縁があるものを見ることもできます。
『バス(風呂)ガイド』も要予約でしていますので、お気軽に問い合わせてください。

 

た「伊勢に来たい」と言ってもらうために

昔の人はお伊勢参りで来たお客さんに、おにぎりどうぞ、お茶でもどうぞと振舞っていました。
お風呂施行というのもあり、その名も『おかげ湯』。
お互いにおかげさまでしょう。
お客さんが来てくれるから、こちらも迎え入れることができるわけだし、来られた方はおもてなしを受けたことへの「おかげさま」。
受ける側も受けられる側の両方が「おかげさま」という気持ちが合い通じることで「おかげまいり」という名がついたくらい。
施しの施行というのが昔の伊勢にはありました。
そして今、私は、心の施行をしなくてはと思い、お客さんにもお話しています。
お客さんが帰ってから、また伊勢に行きたいなと思ってくれれば、私がこうしてお話していることに意味があるのではないでしょうか。
そうすることで、伊勢は栄えるのだと思います。

新しい年を心身ともに清らかにして、お伊勢さんに行ってほしいですね。