FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年1月9日放送

今日は鈴木洋子さんと前田憲司さん、伊東将志さんがウィークエンドカフェをお送りします。
四日市生まれの前田さんがお正月に食べるものといえば「すき焼き」。
そういえば年末、老舗のお肉やさんの前には、とても長い行列ができている
光景をよく見ましたね。
三重県内なら、どの地域でも食べているものだと思っていたそうです。
でも、伊東さんや洋子さんに話を聞くと、鳥羽や尾鷲の町ではちょっと違うようで・・・
縦に長い三重県、いろいろあるようですね。

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いたことのない料理はすぐ注文!

前田 先日京都へ行ったんですが、『名古屋ふぐ』っていうメニューがあったんです。
僕はメニューで聞いたことのないものがあると、頼んでしまう。
出てきた『名古屋ふぐ』は、まあ白身でコリッとしていて美味しかったのですが、後で名前の理由を聞いたところ、普通のふぐだと言われたんです。
どうにも腑に落ちないので、すぐにネットで調べたところ、市場の符牒で、『ショウサイフグ』のことを『名古屋ふぐ』と呼ぶそうなんです。
これは、「尾張名古屋は城でもつ」の「尾張」を「身の終わり=死」にかけたもので、さらに名古屋は「美濃尾張(身の終わり)」にも通じるからなんですね。
ネーミングの妙を感じました。

 

三重県各地のお正月料理

前田 お正月にすき焼きって食べます?

伊東 食べないですね。

前田 やっぱり。
北勢から中勢あたりまでは、お正月というとすき焼きというイメージがありますね。
市内の有名なお肉屋さんにも、年末になると行列ができていますし。
だから県外の人に三重県のお肉を送ってあげると、とても喜ばれるんです。

伊東 土地柄でしょうね、やっぱり。
こちら(尾鷲)では、魚ですね。

鈴木 魚ですき焼きをするって言ってませんでした?

伊東 そうなんです。
去年いろいろ調べていたら、文化として魚のすき焼きみたいな料理があるんです。
聞いたら、肉がなかったから代わりに魚でしてたんや、と。
使うのはソマガツオで、ぶつ切りにして肉の代わりに。

前田 味付けは砂糖と醤油で?

伊東 そうそう。
具材もすき焼きと同じもので、食べるんですよ。
この料理『じふ煮』と呼ばれていて、港町・漁村の味と言われています
『夢古道おわせ』の、昨年12月のランチバイキングで、『じふ煮』を出したところ結構人気で、「懐かしい」という声も聞こえました。
ランチバイキングでは卵は付けませんでしたが、家庭では付けるそうですよ。
尾鷲の中心街ではあまり食べませんが、集落の方に行くと、いまだに残っているそうです。

前田 確かに昔はお肉は貴重品でしたね。
お正月にすき焼きはしたけど、それこそ年に1回くらい。
僕が暮らす四日市でも海に近いので、魚が多かったですね。
磯津という漁協のおばちゃんが、自転車の後ろにトロ箱を積んで、家の前に来て魚をさばいてくれました。
やっぱり魚中心で、肉はそんなになかったですね。

 

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節を感じる旬の魚を楽しむ

伊東 尾鷲では、その時期時期で美味しい魚が揚がるので、それが楽しみでもあります。

前田 そうですね。
それと僕は紀州に行くと、エビ・カニ類の豊富さに驚きます。
奇妙なエビがありますよね。
カニも、タカアシガニが揚がったりとか。

伊東 先日市場に行ったら、生きたタカアシガニが売られていましたよ。

前田・鈴木 ええ〜!!!

前田 僕もタカアシガニだけは忘れられないな。
特に美味しいというわけでなく、大味なんだけど、竹を割るような感じで。

伊東 1m以上ありますから、トロ箱に入っていませんでした。

鈴木 甘いんですか?

前田 いや、大味です。水っぽいというか。
ちょっと表現は悪いけど、カニカマに近いような。

伊東 何ならカニカマの方がカニの味があるような(笑)。

前田 後、ガスエビとかクモエビとか、いろいろありますよね。
やっぱり尾鷲の方に行かないと見ませんね。

伊東 そうですね、底引き網で揚がるようなエビですから。
僕は、『オニエビ』が一番美味しいと思うんですよ。
小さいくてトゲトゲしていて、頭がとても大きいんです。
この辺りの何軒かのお寿司屋さんでも出していて、だいたいゆでて食べます。
表現が少し変なんですが、エビミソの味が、ちょっとカニ寄りなんですよ。
カニとエビの間くらいで、濃厚でクリーミーなんです。
ぜひ尾鷲に来たら食べて欲しいですね。
多分、東京とかからきた人はほとんど知らないと思います。

それからガスエビは、足が早く傷みやすいため、少し時間を置いてしまうとにおいがしてくるんです。
そこで漁師さんたちが『ガスエビ』と名付けたと言われています。

 

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さばき会で、魚ばなれを食い止めたい!

前田 昔の話を聞くと、ご飯に砂糖を載せるのがすごいごちそうだったそうなんですよ。
甘いものがごちそうだったんですね。

伊東 『夢古道おわせ』のランチバイキングではぜんざいも出すのですが、畑をしている人たちが作ると、とても甘いんですよ。
それはやっぱり、ごちそうだからなんでしょうね。
体を使って働くから、甘いものが欲しくなるのだと思います。

前田 今はお弁当とかも薄味で上品に作るようになっていますよね。
そこで相可高校の村林先生に聞いたところ、どういう時にお弁当を食べるかで、甘さや味の濃さも考えないといけないと言っていました。
労働の後に疲れて食べるのなら、味付けは濃いほうが喜ばれますよね。
最近のは上品すぎて、インパクトがないと思います。

伊東 自分たちのシチュエーションに合わせて何かを食べるのではなく、食べ物に合わせてしまっている感じがあります。

前田 出来合いのものを使うと、どうしてもそうなってしまいますよね。

伊東 作り手側も少なくなってきてますから。

前田 魚をさばける人も、どんどん減っていっているでしょう。

伊東 そうなんですよ!
家に包丁もない、まな板もない、魚焼き器もないという家が増えているんです。
魚をさばける人が減ったから魚の消費量も減っているのではと、漁師さんとも話しました。
そこで『魚のさばき会』というのをやろうと。
僕自身、自分で魚をさばけるようになりたいという気持ちが三十代後半に芽生えて、包丁を勝ってそろえ始めて。
で、さばけるようになると格好いいじゃないですか。
そういう人を作っていきたいな、と思い、昨年『東京さばき会』を開催しました。

前田 東京でやったんですか!?

伊東 そう、東京で、東京の女子たちに向けて、「魚をさばけるいい女になりませんか」というイベントを開催したところ、ものすごい人気で。
アジをさばいただけなんですが、すごい盛り上がりになりました。

 

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田のはまぐりしゃぶしゃぶ

前田 後、三重県の名産といえば、はまぐり。
『桑名の焼きはまぐり』といいますが、実際に街道沿いに茶屋が一番出ていたのは富田だったんです。
富田は桑名藩の領地だったため、『桑名の〜』となったわけです。
四日市市内にもはまぐりを養殖しているところがありますし、名古屋に出しているお店では、はまぐりのしゃぶしゃぶを出しています。
出汁を沸かして、チャポンと入れてパッと開いたらそのままいただく。
また、その後の出汁が美味しいんですよ。
何年ものの大きなはまぐり・・・正直1つが高いのですが、そういう食べ方をしたことがなかったので、知っておいてお客さんを招待すると、とても喜ばれます。

鈴木 私が忘れられないのは、ひじき・・・伊勢ひじきとか有名ですよね。
ひじき採りが解禁となる『ひじきの口開け』という日があり、その日にみんないっせいにひじきを刈りに行くんです。
そのまま食べるのではなく、干して、まだ戻して食べるのですが、国崎や石鏡は海が荒いので、ひじきの感触がしっかりしていて美味しいんです。

前田 ひじきでそんなに違いがあるのか・・・。
最近、アカモクなども含め、海藻が見直されてきていますよね。
スーパーの売場でも、以前は酸っぱく味付けしたものしか売っていなかったのが、最近ではそのままのもずくが売られているんです。

伊東 磯物が、豊かな海の象徴ですよね。

前田 魚やキノコ、野菜など、自然のものからいただいてきて、家で土を落とし、魚をさばきということを、なかなかしないようになりましたよね。

伊東 それはもう旅行とか、非日常になっていますよね。
体験教室に近いものになっていますよね。
旅の途中ですることのような。
だからこそ、魚をさばくこととかも、一過性にしたくないですね。