いよいよ神島散策。
神島名物ともいえる細い路地を右へ左へ、上へ下へ・・・。
まるでネコになったみたいな気分だ、と隊長は笑った。

港から1本、車も走れるメイン通りを渡ると、もうそこは細い路地が蜘蛛の巣のように広がった集落となる。
車は入れない。
せいぜい走れても原付バイク。
人間の足が主たる移動手段だ。
港の周辺は、明るい南の島の雰囲気であったが、細い路地に入ると、日本の離島の雰囲気が濃厚に漂っていた。
島でひとつの郵便局から路地へと入ると、いきなりタバコ屋さんを発見。
カーテンが下りている。
「休みかあ、残念だなあ」
カメラマンのYU君と共にくやしがり、歩みだすと、ガラリと店が開いた。
どうやら営業開始のようだ。
まるで我われを見て開けてくれたかのようである(笑)。
店のお父さんに声をかけて店内も撮影させてもらう。
お孫さんたちが賑やかに騒いでいた。
ここで暮らしているのかとお父さんに聞くと、「お盆で帰ってきてる・・・」との返事。
お父さんの写真を撮ろうと思ったが、「わしゃあ写真は好かん」と奥へ逃げられてしまった(笑)。
神島にはコンビニはない。
本屋さんもない。
八百屋さんも魚屋さんもない。
レストランもない。
映画館はもちろんビデオレンタル屋さんもない。
でも何にもないわけではない。
不思議な豊かさを感じる。
それは路地で会う人、会う人がみな笑顔であいさつをしてくれ、
そして道に迷っていると、いっしょに歩いて案内してくれる。
しかもオリジナルのウワサ話が折り込まれた観光案内がもれなくついてくる(笑)。
「じんじろ車」を発見!!
「おお~、これだこれだ、これなのだ!」
隊長であるワタクシは感動し、思わずキコキコとじんじろ車を押す。
「なんです、これ? 壊れた乳母車ですか?」
と、20代カメラマンのYU君。
バカモノ!!
これは「じんじろ車」といって、鳥羽の離島では欠かせないものなのだ。
島のお年寄りは、これに荷物を乗せて細い路地を行き来する。
前に菅島で小学生のガイドさんに説明してもらったのだが、
「じんじろ車」は昭和の初め、鍛冶屋(かじや)の甚次郎さんが考案しつくったものらしい。
だから「じんじろ車」なのだ。
昔ながらの生活がずっと続けられているため、昔の道具がそのまま使われているのだ。
ガイドブックにも載っているスポットもめぐっておこう。
まずは「神島の時計台」。
その昔、富山の置き薬屋さんが神島の各戸を回っていて、島の人のほとんどはその薬を使用していたという。
島に時計がないことを知った薬屋さんがお礼として島の中央に設置したのが、この時計台。
いつ頃つくられたかは定かではないが、最近になって時計そのものは交換された・・・と、案内マップには書いてあった。
が、時計は見事に故障中(涙)。
続いては、
三島由紀夫が1ヶ月間滞在したという寺田家。
本人の希望で、宿より民家の方がよいということで、当時漁協組合長をつとめていた寺田さんの家の2階に滞在したという。
※三島由紀夫は、1953年の3月と8月に三島は神島を訪問しており、『潮騒』は2回目の旅行の直後に執筆されている。
その寺田家のすぐ下にあるのが、洗濯場。
いまは答志島から海底水道管が引かれている神島であるが、それまでは表流水が流れるこの共同洗濯場で島の人びとは洗濯をしたという。
近所の人と話しながら笑いながら洗濯物を足で踏む様子は、『潮騒』にも描かれている。
で、ワタクシも洗濯のまねごとを(笑)。
洗濯場からさらに上に登ると、急な階段ばかりになる。
神島を知る人いわく、「これぞ神島!」ということらしいが、まあ正直息が切れる。
雰囲気は確かにバツグンだが、休み休みじゃないと楽しめない(笑)。
階段をのぼり、路地をくぐり抜け、また階段をのぼる。
時折、家と家の合間から海が見える。
これがすばらしい。
集落の最上部から見下ろす。
非常に日本的であって現実的じゃない風景。
まるで夢の世界に迷い込んだみたいだ。
神島の集落を見下ろすその最上部に、八代神社がある。
奇祭のひとつ『ゲーター祭り』の舞台となるところで、海の神様が祀られている。
『潮騒』で恋の成就した新治と初江が訪れた場所として、縁結びの神様とも言われている。
が、ここの石階段は214段。
恋の神頼みも、そうそう簡単ではないのだ。
この日の気温37°Cオーバー。
おっさんは汗を吹き出し、あえぎつつ階段をのぼる。
「隊長、後ろの風景すばらしいですよ、ちょっと見てみたらどうです?」と、YU君。
「ヒイヒイ」
「あ、隊長、船が見えますよ」
「ゼエゼエ」
「あ、キレイなお姉さん」
「どこ?」
こうしてようやくワタクシは、八代神社へ登る階段の途中からすばらしい景色を見たのである(笑)。
確かにすばらしい。
が、このあと、カメラマンYU君を蹴り倒したのは言うまでもない。
暑さと疲れで頭がまっ白になっている隊長のワタクシ。
もはや祈りごととか願いごとなどないのだ。
頭に邪念も煩悩も思考回路もなーんにもないのだ。
つまり解脱しちゃってるのだ(笑)。
が、灼熱の島めぐりはまだまだはじまったばかりなのであった。
続いては、草をかきわけ突き進む「神島探検」なのだ!
※神島散策は、基本情報の「島の旅社」でもプログラムがある他、健康づくりツアーの「ウェルネスの旅」でも案内していただけます。詳細はそれぞれのページへどうぞ。