FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年1月16日放送

今回は伊勢市二見町にある『松下社』の神社総代、坂口徳平さんがお客様です。
毎年『蘇民将来子孫家門』の注連縄を作っています。
この松下の場所は、蘇民将来ととても縁がある場所。
自宅の注連縄を自身で作られる人も多いですが、昔から松下社の氏子のみなさんは、たくさんの注連縄を作ってきました。
そしてその注連縄の多くは伊勢志摩地域のお家の玄関に飾られています。
前回の神宮のご遷宮以降は、全国からも注文が入ってきます。
1つ1つ手作りで作っていらっしゃいます。

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る『蘇民将来子孫家門』の注連縄は2000体!

準備は11月初め頃からはじめますが、飾り付けの青物は枯れてしまうといけないので、そちらは12月10日過ぎから準備するようにしています。
作るのは、トータルで大小2000体。
全部手作りですが、総代さんは3人しかいないので、家族や知り合いに頼み、6〜7人で作っています。
早めに作りおきというのが難しい作業なので、その分要領良く行かないと追いつかなくなってきます。
また、近くにある『民話の駅 蘇民』にも出しているのですが、お祓いである16日の『領布始式』を過ぎないと販売できないんですね。
『民話の駅 蘇民』としても早く欲しいから、お祓いが終わるとすぐに取りに来てくれます。
待っているお客さんがたくさんいて、すぐに在庫がなくなり、もっと欲しいと言われます。
松下社で作っている注連縄はすべてお祓いが済んだもの。
ただ、全部お祓いするのは大変なので、代表的なものを持ってきて、お祓いをさせてもらっています。

 

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には安倍晴明ゆかりのセーマンドーマンが描かれている

松下社のものは『蘇民将来子孫家門』と書いてありますが、『笑門』というのもありますね。
私らも、もうよくわかりませんが『蘇民将来子孫家門』の『将』と『門』を『将門』と略していたのが、いつの間にか『将』が『笑』に変わった聞いております。
元は蘇民将来から始まっています。
商売によっても違うでしょうが『笑う門には福来る』という言葉がありますしね。
木札に『蘇民将来』の文字が書かれているのは、蘇民将来の一家が旅の途中の
スサノオノミコトを手厚くもてなしたところ、「家門に蘇民将来子孫と符に書き
吊り下げるよう」と教えられ、その通りにすると難を逃れたことに由来があります。
両サイドには『七難即滅』と『七福即生』・・・七難あっても良いことがまた起きるということでしょうかね。
裏には呪文のようなものが書き込まれています。
『セーマンドーマン』の記号も書かれています。
こういうものは色んな所で作られていますが松下社から出たものは、わかるように、木札の側面に松下社の朱印を押してあるんですよ。

 

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本中から注文が来るように

注連縄は2本ではなく3本の縄を糾って1つの縄にするので、太くなると1人で作業するのは難しく、苦戦しています。
特殊な技術として長く続いており、六尺の長さで直径が8cmほどのものを、それを家の門に吊るように送っているものもあります。
式年遷宮以降、志摩や伊勢地方以外でも注連縄を飾る家が増え、パラパラとですが、全国から注文が来るようになりました。
北は北海道から南は九州まで。
あるときには沖縄から注文が来たことがあります。
最近はインターネットでどんどん広がって、全国的に送らせてもらっています。
「伊勢では年中飾っているんですか?」と聞かれると、ぜひ一年中飾ってくださいとお願いしています。
なので『蘇民将来子孫家門』を飾っている家は、全国どこでも一年中飾っていると思います。
年中飾る理由としては、家の中に災いが入ってこないようにと玄関に飾るんですから、外してしまったら意味が無い。
年末に新しい注連縄を迎えて、新しい年を迎えるということですね。

 

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物と呼ばれる草木は山へ取りに行っている

神様にお供えするサカキ、ヒイラギ、ウラジロ(シダ)、それからユズリハ。
他のところはダイダイを付けているのが多いですが、松下社では付けていません。
ダイダイは生物(なまもの)ですし、もしも落ちたりすると縁起が悪いので。
サカキは神様の木で「栄える」、ヒイラギは魔除け、ユズリハは「代々ゆずる」の意味が込められています。
ウラジロは「腹黒にならないように」との願いを込めて。
青物は山にあるものなので、そのシーズンになると手分けして取りに行っています。
またユズリハは、各家に植えてありますので、その家に頼んで切らせてもらったりしています。

私が総代になってから、18年ほどの年月が経ちました。
サラリーマンとして働いていた時代からずっとやってきて、そろそろ代わりの人にお願いしたいところ。
でも今の人はみんな忙しそうですね。
神様のことなので、もう辞めるとは言えません。
できるだけのことはさせてもらいたいと思っています。