「ふれあい」Vol.30 2011年7月号

何百とある剣術の源流「愛洲影流」の始祖、愛洲移香斎の生誕地である、南伊勢町五ヶ所浦地区。
地元の偉人を称える祭が今年で30周年を迎えます。
全国から名だたる剣士を招き、執り行われる祭を通して偉人の功績を広め、町を元気にしていく取り組みが、地元住民の手で進められています。
そんな祭を支える人々にお話をうかがいました。

愛洲移香斎久忠(あいすいこうさいひさただ)

1452年(享徳元年)~1538年(天文7年)
伊勢国の豪族・愛洲氏を出目とする。
武者修行として全国各地をまわり、宮崎県日南市にて36歳にして開眼、愛洲影流を開く。


五ヶ所浦区長・愛洲氏顕彰会会長 城者勝さん(写真左)
剣祖祭実行委員会事務局長 中世古一芳さん(写真中央)
剣祖祭実行委員会委員長 西岡孝夫さん(写真右)

■南伊勢を代表する偉人、剣道の祖・愛洲移香斎

私たちが住む南伊勢町五ヶ所浦出身の偉人に「愛洲移香斎久忠」という人がいます。

愛洲移香斎は、今から560年前の室町時代にこの地で生まれ、後に剣術の源流のひとつとされる「愛洲影流」を築いた剣術の始祖です。

時代劇などでよく聞く「柳生新陰流」は、愛洲影流が基になったと言われています。

そんな地元を代表する偉人の功績を称え、広くその存在を知ってもらおうと、毎年夏に五ヶ所城跡及び「愛洲の館」を会場に「愛洲氏顕彰祭・剣祖祭」を開催しています。

■愛洲氏の功績を称え、全国から剣士が集まる

この祭では全国から選りすぐりの剣士を招き、居合いや型などの演舞を披露してもらっています。

流派を代表するそうそうたる剣士に参加していただくこともあり、真剣を使った演舞など見ごたえのある内容ばかりです。

演舞が披露される五ヶ所城跡は中世の山城が今も残る貴重な史跡で、独特の雰囲気を持ち、剣道関係者にはすこぶる評判の良い場所なんです。

演舞が終わった後は、少年剣道の試合と合同練習も「愛洲の館」の道場で開催する予定です。

昼食には、この祭の名物である、竹の器を使ったそうめんのふるまいも用意し、一般の方の観覧を歓迎しています。

この祭を見ることで一人でも多くの子どもたちが剣道に親しみ、地元の偉人について知るよい機会になればと思っています。




                    実行委員会の皆さん

■地元住民の参加も促し、より開かれた祭を開催

この祭は、これまで関係者以外にあまり知られていなかった行事だったのですが、今年で30周年を迎えることを機に、もっと一般の方にも知っていただきたいと、今年から前夜祭を開催することにしました。

実はこの前夜祭の誕生には地元住民からの声が反映されています。

南伊勢町として町村合併された後、この地域では子どもたちが集まれる夏祭りがなくなってしまいました。

地元住民からも子どもたちが参加できる夏祭りが欲しいという声があり、それならば本祭に訪れてもらえるきっかけにもなると、剣祖祭の前夜祭として一緒に開催してみようということになったのです。

前夜祭では子どもたちが主役となれるような企画を考えておりますので、多くの方々に参加していただきたいですね。

■多くの人に知ってもらい、町おこしに繋げたい

剣術が最も盛んだった江戸時代には、600もの流派があったと言われていますが、その源流をたどっていくと3つの流派に集約され、その内のひとつが愛洲移香斎が起こした「愛洲影流」になります。

地元を代表する偉人であるにもかかわらず、これまで私たちは愛洲移香斎についてあまり検証することもなく、また南伊勢町が彼の出身地であるとの情報発信もしてきませんでした。

これからは私たちが先頭に立って、剣術の祖として愛洲移香斎の功績を称え、事実に基づいた歴史を伝えていく必要があると考えています。

そして地元の若い人たちに町の歴史や偉人に興味を持ってもらい、この祭を引き継いでいってもらうことが我々の使命です。

そうして、この町がますます活気づいていけば、とてもうれしいですね。