紀北町『「おかずの店祐美」の武岡由紀子さん』(カフェ)

FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年1月23日放送

今回は、『おかずの店祐美』の武岡由紀子さんがお客様です。
お客様からは「ゆっこさん」と呼ばれて、いつもおいしいお料理と楽しい会話を届けてくれます。
お店には紀伊長島の新鮮な魚を使った一品とゆっこさんのエッセンスでアレンジされたメニューの数々が並んでいました。
漁師町なので味付けはちょっと濃いめが好かれます。
お母さんから引き継いだ長島の味がここにあります。

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重県の南の地方で食べられる『じふ煮』

鯖やソウダガツオと白菜豆腐、お麩を入れて炊いた『じふ』という料理があるのですが、その家々で作り方が違っています。
うちはかなり変化していて、よそとは全然違う作り方になっています。
長島の魚町に行くと、鯖の骨でお出汁を取って、それで炊くという感じなんですが、うちでは最初からお醤油とお砂糖とみりんで煮付けみたいにして、魚を味がしみるまで炊いた後、白菜や豆腐やお麩を入れます。
そこから水が出てくるので、一切水を使いません。
すき焼き風ですね。
そうすると鯖に味が濃くつくので、美味しく食べられる・・・というのがうちの母の作り方だったので、他のところのとはちょっと違うなと。
アレンジが入っているんです(笑)。

 

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入りのなます、あずきご飯が節句の料理

長島では節句の時や、お正月や豆まき、成人の式、それから1月15日に行われるお祭りの前日『宵宮』の晩に、あずきご飯とお魚入りの紅白のなます、お刺身、それから『おひら』を炊きます。
『おひら』とは、7種類もしくは奇数の材料を使った料理。
鯖、高野豆腐、しいたけ、蓮根、昆布、人参、ゴボウ・・・これらを炊いた煮物が『おひら』です。
これを宵宮と大晦日の晩に必ず食べるんです。
長島ではお正月の用意をして、それからすぐに宵宮があるので忙しいですよ。
さらに丁寧な家は、神様の年越しである『節句』に、神棚に大根なますとあずきご飯を上げています。
私もやってますよ、自分で。
なますにお魚が入るのは、南の方だけみたいですね。
使う魚はビンナガマグロ。
塩をして酢で洗って、大根と人参を塩もみして洗った後、一緒に胡麻酢で和える。それをたっぷり作って、お正月の間中、朝も昼も夜も食べる・・・というのが私の子ども時代でしたね。
それからもう一つ、普通は大豆で作る『五目豆』を、黒豆で作るんです。
それを長島では『煮しめ』と呼び、こちらも鍋いっぱいに造ります。
西長島だけかもしれませんが、お正月には白菜と角餅のお雑煮と、この煮豆と、おひらなど前の晩に残ったものを、朝いただきます。

 

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祝いごとには大きなおはぎ

子どもの時には建前やお祝いごとがあると、大きなおはぎをもらっていました。
母や叔母などみんな集まって、ご飯を炊いて、大きいおはぎを握って。
実は子供の頃は、そんなにおはぎが好きではなかったんです。
「あ〜、おはぎか〜」的な。
そしてとにかく大きいんです。どんぶりサイズ。
しかも餅米が入っていないんです。
地域性だと思いますが、お米を作っている土地だったらお米と一緒に餅米を炊いたりするんでしょうけど、田んぼが1つもない地区なので、餅米は貴重だったんでしょうね。
魚町なので、魚はたっぷり食べますけど。

今の季節は磯のものがおいしくなってくるはずなんですが、今年はちょっと潮がおかしくて、お魚が本当に少ないんです。
秋刀魚の丸干も今年はとても高いし、干している光景をあまり見ないでしょう。
本当だったらおいしいアジの丸干ができる季節なんですが、アジも少ないし、逆に3月頃採れる小さなアジが揚がったりして、ちょっと海の様子がおかしいです。
ナマコも少ないと漁師さんが言っていました。
ナマコはとても寒い時に動き出すそうなんですが、海があたたかすぎて、まだ動き出さないみたいです。

 

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堂やお店が減り続けている

食堂や居酒屋がだんだん減ってきて、今、長島は人口の割にお店が少ないんですよ。
この魚町からソース1本買うために、車に乗って橋を渡って、駅前の役場の方に行かないと、なんにもないんです。
昔はなんでもある町だったのが、今は何もない町になっちゃって・・・それが少しさびしいですね。

魚町のおじさんおばさんたちも、自転車やバイクに乗って、橋渡って行くんですけど、橋を渡ることにとても抵抗があるんですよ。
自分のエリアの外というか。
私は車なので、まだ良いですが風が強い時とかは大変だなあと思います。
誰か西長島でやってくれないでしょうかね。
田舎はどこもいっしょで、空き家ばっかりですよ。
長島でも、みんな郊外に出て行ってしまうし。

ただし運動会は面白いですよ。
パワーがスゴイというか、各街のカラーがあって。
派手好きなのかな。
「せめて綱引きだけでも優勝しなきゃ・・・」とか思って、一致団結するんですよね。

 

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えゆく地域の郷土料理を残したい!

冠婚葬祭で、例えばお葬式の後、精進落としをするでしょう。
こちらでは、魚ご飯や、酢にしたお魚を混ぜたお寿司を必ず食べるという風習があり、その時にパックに詰めて大量に持たされる・・・なんてことがありました。
しかし最近では何でもお弁当になり、魚ご飯やお寿司をいただくことが本当になくなりました。
今思うと、大きな電気釜で2升も3升も炊いて、それはそれでとても美味しかったですね。
魚ご飯は今でも、年に1度か2度は家庭で作りますが、お魚の入ったお寿司を食べる機会は本当になくなりました。
懐かしいというか、美味しかったというか。・・・。
会館ができて、葬儀が便利にはなりましたが、そういった文化がなくなっていくのが、少し寂しいですね。
みんなで集まって、普段のではないご飯を食べるのは、やはり冠婚葬祭ですからね。
煮物を炊くのが上手なおばちゃんがいたり、料理上手な人がいるんですよ。
ちょっと口うるさくて、「あのおばちゃんには逆らったらいかんよ」みたいな(笑)。

前の日にお手伝いに行って、山程のゴボウやら人参やらを刻んで、みんなで炊いて、あのおばさんに味を見てもらって・・・ということが、ここ10年くらいありませんね。
あれはあれで良かったよね、と近所の人とも話していたところです。
今はコンビニやスーパーができて便利になり、全国同じ味を食べることができて、それはそれで良いのかもしれません。
でも、地域の味がなくなるのは寂しいですね。

私が懐かしいなと思う料理に、『そま(ソウダガツオ)』の塩づけがあります。
『そま』がたくさん揚がったとき、たくさん買って新巻鮭のように塩で保存する。
今では、ほとんど作られなくなってしまいましたが、親戚のおばちゃんが作ってくれたこの味も大切にしていきたいものの1つです。
私が母から教えてもらったように、どのお家でもお母さんから子供たちへ、その家の味が受け継がれると嬉しいですね。

私は最近、料理を勉強したいと思う気持ちが強くありまして。
テレビ番組も雑誌も本も、料理に関するものばかりです。
なんというか「作る」ことをもう一度見直そうと思うんです。
地元にいると、料理といえば、お刺身と塩焼きと煮付け、干物、まあフライまで。
それをもうちょっと簡単に食べられるような料理をしたいと思っています。
最近好きなのは味噌漬け。
魚が新鮮なため、家でお魚を味噌漬けにするという文化が長島にはなかったんですね。
今人数が少ないので、大きな魚をもらっても余ってしまうでしょう。
先日は大きな鯛をいただいたので、みんなに配って後は味噌漬けにしました。

郷土の食文化を守りつつ、簡単で美味しい魚料理を開発したいです!