FM三重「ウィークエンドカフェ」2011年8月13日放送

今日のお客様は2回目の登場。
伊勢で1300年以上続く名刹・松尾観音寺のご住職、木造隆誠さんです。
ご先祖様を敬うお盆について。
そして、東日本大震災の被災地へ趣いたときに感じられた、被災者の方々に対する思い、「生きるということ」についておうかがいしました。

■ちょうど今、お盆の時期ですね

そうですね。
地域にもよりますが、だいたい13日にご先祖様をお迎えして、16日にお帰りいただく・・・ご先祖様の短い里帰りです。

仏教的な話をすると、若い人は耳にフタをしてしまうんで、私はこう言うんです。
「ご先祖様の家庭訪問だ」と。
先生が家庭訪問にいらっしゃる時、「お茶が良いかしら、甘いものはお好きかしら」って、色々心を砕くでしょ。
それと同じ。

飾り付けて、ご馳走を用意して、おもてなしをして・・・生きている私たちが仲良く、元気で暮らしている姿を見てもらうんです。

盆休みだからといってすぐ遊びに行かないで・・・まずは仏壇を掃除してお墓参りして、家をきれいにして・・・遊びに行くのはそれからでも遅くありません。

ご先祖さんが帰ってこられないと、申し訳ないでしょ。


■東日本大震災の被災地に行かれたそうですね

岩手の陸前高田市と宮城県石巻市へ。
亡くなった方の供養をさせていただき、また、伊勢市観光協会メンバーとしてボランティア活動をしてきました。

7月にお邪魔した石巻市は、本当は今年、花火サミットの会場となるはずだったんです。
たまたま昨年の会場が伊勢だったこともあり、何か協力できることはないかと石巻の観光協会に電話をしたら、なんと電話が復旧したその日だったんです。

これも縁だということで、何はともあれ現地へ。
伊勢うどんを1000食、炊き出しで用意しました。

最初は何にしようか迷ったのですが、東北の方は信仰心が強いので伊勢に来ている方も多く、食べたことのある人もいらっしゃいます。

食べて伊勢を思い出し、元気になる力に。
初めて食べる方も、復興したらまたこの伊勢うどんを食べるために伊勢に行くよ・・・と言って下さって、嬉しかったですね。

9月にもう一度訪問するんですが、ボランティアメンバーにうなぎ屋さんが多い関係で、うなぎの炊き出しをさせてもらいます。

暑くて体力が落ちる時期なので、被災地の方にいっぱい精を付けてもらいたいですね。

■被災地で感じられたことは?

最初TV見ていたら、被災者の方々が「世界中、日本中の方に助けられているから、私たちもがんばります!」と言っていたんですよ。
正直、TVであの様子を見る限り、本当にそんな風に思えるのかと、疑問に思いました。

しかし、実際に被災地に行ってみると、本当なんです!
自分たちがしっかり生きないと明日に繋がらない!・・・そんな思いが、言葉の端々や雰囲気から強く強く伝わってくるんです!
ボランティアに行ったはずの私たちが、逆に励まされ、元気付けられました。

こちらに帰ってきて、被災地に行った話をすると「大変でしたご苦労さま偉いですね」と言われます。
でも、私全然偉くありません。
4~5日で帰ってきて、家があって家族がいて、熱いお風呂に入ることができて・・・。
被災地では、今も1万人以上の方々が避難生活を送っていて、眠るのすら気を使う、不自由な生活を送っているのです。

自分たちが、いかに与えられ恵まれているか・・・実感しました。

■ボランティアを通して、こちらの人々に伝えたいことは?

今年のお盆は、日本にとって特別な行事となりました。
被災地の方が口をそろえて言うのは、「忘れず、このことを伝え続けて欲しい」ということ。

私が訪れた大石という地域では、お風呂が欲しいという住民の声から、出車を入れる小屋を改装し、お風呂を作ったんです。
すると自然とその周りに、無料の床屋や、喫茶店、マッサージなどが集まり、お風呂を中心にコミュニティができまして。
そこで毎日、高校生の女の子がお手伝いをしているんですが、聞くと、その子の家族はみんな亡くなってしまったんです。
寂しいから、人がいっぱいいてホッとできる、ここに来ているんです。
でも、その子だけじゃありません。
子供だけでなく大人も、大勢の人が家族を失い、それでも生きているんです。

先程の喫茶店のご主人も、6人の兄弟を失い、奥さんも失い・・・。
苦しみを抱えながら生きている姿を目の当たりにしました。
生きることの難しさと、感謝の気持ち・・・「生きる」ということの本来の意味を考えさせられました。

そして私たちができるのは、この出来事を風化させずに、いつまでも語り継ぐこと・・・それが生きることを考えることに繋がると思うんです。