三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2016年2月7日放送

漁師の担い手不足解消のため『志島』『畔名』『甲賀』の3つの地域が立ち上げた『畦志賀漁師塾』!
独立した塾生たちは、今度は新たな塾生を受け入れ、教育する立場に、そして、地域を支える存在へと成長していました。
今回は、そんな彼らの「いま」を追います。

2-7-1

2-7-2

志摩市阿児町・志島(しじま)。
海で働き、海と共に暮らす。
そんな暮らしが、今なお残る、小さな漁師町です。

ここ志島と、その両隣の『畔名(あぜな)』『甲賀(こうか)』の3つの地域が連携して、漁師の担い手不足を解決していこうと立ち上げたのが、『畔志賀(あしか)漁師塾』。
漁師塾では、はじめの1年で地元の漁師さんから、海女漁や刺網漁などを学び
漁業の基本を習得してもらいます。
その後も、漁師さんたちが必要に応じて、サポートしながら塾生が最低限1人で、漁が出来るレベルまでに育て上げます。

これまでにも番組では、漁師塾の取り組み、そして、独立して、志島の海で生きる塾生たちの姿を追ってきました。
漁師塾を通じて、若者たちに受け継がれていく、海の仕事と暮らし。
独立した塾生たちは、今度は新たな塾生を受け入れ、教育する立場に。
そして、地域を支える存在へと成長していました。
今回は、そんな彼らの「いま」を追います。

 

2-7-3

海女漁に出ているのは、山内和(やまうち・かず)さん。
東京都出身。
4年前に、畔志賀漁師塾の1期生となり、その後独立し、志島で男性海女・海士(かいし)を生業にして生活しています。
共に船に乗り、潜り、そして、海女小屋で身体を温める先輩の海女さんからも、今では、すっかり信頼される存在に。

 

2-7-4

こちらは2年前の取材時。
和さんは、海女小屋の近くに家を借り、気ままなひとり暮らしをしていました。

「夜ご飯はだいたい、人の家で食べています(笑)
近所に杉浦さんという(海士の)先輩がいるんで、そこで食べさせてもらったり」

 

2-7-5

とはいえ、一方では厳しい現実も。
海女漁の漁期は、きびしく制限されているため、漁期外の収入が必要となります。
和さんは伊勢海老を獲る刺網漁も同時に始めましたが、そのために、借金をして船を購入。
大きな覚悟を持って、漁師人生はスタートしました。

 

2-7-6

そして昨年12月。
初めて和さんを取材してから、3年目の冬です。
午前3時過ぎに、港を出た和さんは、寒風吹きすさぶ中、自ら仕掛けた網を引き上げていました。

 

2-7-7

港に戻ったら、伊勢海老を網から外す作業です。
手間と時間との戦い。
鮮度を落とさず処理をするため、近所の人に応援を頼んでいます。

 

2-7-8

そんな中に、ひとりの若い女性がいました。
樋口陽子さん。
岡山県出身。
2年前、畔志賀漁師塾に入り、海女として志島で暮らし始めました。

「不安よりも海女になりたいという気持ちが強く、こちらに来ました。
アワビが取れた時は嬉しいです!
精神的にも、とても充実しています」

と、樋口さん。

 

2-7-9

朝7時、遅い日の出の頃に、網に掛かった伊勢エビを市場に持ち込み、その後、漁で破れた網の補修・・・あれ!?お隣りにいるのは、ひょっとして・・・?

「籍を入れたのは2014年の4月だったかな」

そうなんです。
こちらは和さんの奥さん・文子(ふみこ)さん。
京都府の出身。
サーフィンが好きで志摩に通っていたところ、知り合いを通じて2人は出会いました。
そして、去年5月、新しい家族が増えました。

 

2-7-10

こちらは現在、和さんたち家族が暮らすお宅。
家自体は空き家だったため、購入してからリフォームしたそうです。

「家族ができて、一番変わったのは責任感」と、和さん。

 

2-7-11

和さんのお宅に、朝、網の手伝いをしていた樋口さんが遊びにやって来ました。
今度は後輩の面倒を見る立場になった和さんです。

「自分もいろいろ周りに人にしてもらって楽しかったので、同じように楽しいかなと思います。1人より2人、2人より3人で大勢で飲んだ方が、言いたいことも言えますし。
うちの嫁もいるので女同士の方が話しやすいこともあるでしょうし」

と、和さん。

「志島に来たとき、不安はもちろんありました。
文ちゃんに買い物できる場所を聞いたり、連れて行ってもらったり、来た当初からいろいろお世話になっています。
和さんや他県から来た人が土台を作ってくれた所に、私は飛び込んだので、地域の方も受け入れ方を知っているというか」

と、樋口さん。

 

2-7-12

「自分より年上の人が多かったので、年齢が近い人が来てくれて、本当に楽しいです。相談もしやすいし。
ここでいい人を見つけてもらって、ずっと居座ってほしいという気持ちはあります」

と、文子さん。

 

2-7-13

よそから来た若い新参者たち。
しかし、今、彼らが志島の海を支えようとしています。
この日は、塾生たちによるアワビの稚貝の放流。
漁業の未来を育てます。
また、それに応えるように地域も新たに、水産物の加工所を作るなど、さらなる雇用の創出、漁業による収入アップを目指し取り組んでいます。

「漁師を始めたときから、生涯暮らすのはここでと決めていました。
子育ての環境にしても、ここが一番だと思います。
家族だけじゃなくて、地域の人が見守ってくれているという温かさがあるので。親として面倒をみている間は、やはり、子どもも志島にずっといて欲しいです。
家族の財産ですね。この志島の場所と海は」

と語る和さんでした。