三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2016年2月21日放送

萬古陶磁器工業協同組合が中心となり、国、県、地元自治体、さらに、地元の文化財団などの協力も得て、広く研修生を受け入れ!
萬古焼の未来を担う技術者の養成を行います!

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四日市を代表する地場産業、萬古焼。
急須や土鍋が代表とされる萬古焼の中でも、特に優れた耐熱性を活かした土鍋は国内シェアの占める割合が、8割を超えると言われています。
そして急須は国の伝統的工芸品に指定されています。

しかし最盛期に比べると、その売上規模は4割ほどに縮小。
産業を支える技術者の数も減り、高齢化も大きな問題となっています。

 

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そこで、萬古陶磁器工業協同組合が中心となって始まった取り組みが『やきものたまご創生塾』
国、県、地元自治体、さらに、地元の文化財団などの協力も得て、広く研修生を受け入れ、萬古焼の未来を担う技術者の養成を行っています。
平成18年にスタートして、今年で9年目。
これまでに40人以上の研修生を受け入れ、その修了生のほとんどが、萬古焼の世界で働いています。

 

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こちらでは現在の研修生3名が、実習を行っています。
講師の稲垣竜一さんに、ここでの実習についてお聞きしました。

「1日の流れとしては、僕がいるときはロクロ全般です。
土モミから始めてロクロをひいて。この時期には削りをしたり、釉薬掛けをしたり、絵付けをしたり。
実習が始まった去年の夏は、1日中土モミばかりしていましたが、それが出来るようになったら、ロクロを回してモノを作る練習をしていきます」

定員は6名程度で、期間は8ヶ月半。
研修は原則、月曜日~金曜日に行い、ロクロ成形・デザイン・絵付け・釉薬・焼成・商品企画などを学びます。

 

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『萬古陶磁器工業恊同組合』理事の山口典宏さんに、『やきものたまご創生塾』に対する組合の反応についてお聞きしました。

「始めた頃は、一部の人しか興味を持っていませんでしたが、最近は職人が減っているという現状があるため関心が高まり、求人を取ってくれるようになりました。
職人としてのノウハウをここで学んで、会社に入り現場で働らいてもらっているので、会社として業界としても、非常にありがたいと思っています」

 

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こちらで行っているのは、絵付け実習。

「800℃ぐらいで焼いた素焼き状態の皿に、『ゴス』『テツ』という絵具を使い
絵付けをします。
この後、釉薬を掛けて、窯に入れる状態になるわけです」

デザインの基本にはデッサン。
7月からデッサンの勉強を始め、水墨画を学び、筆使いに慣れた頃、自分でデザインを描いて絵付けしていくのだそうです。

 

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「ここに来てからデッサンに対する意識が変わりました。
飲食店へ行った時に、今まで何気なく使っていた器に目が行くようになりました。料理よりも気になります」

と言うのは、地元四日市出身の阪恵梨子さん。
前職は会社員でしたが、地元での仕事に就きたいとの思いから、この研修を受けることにしました。

 

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繊細な絵付けをしているのは、同じく四日市出身の大槻俊介さん。

「僕は以前も陶芸の学校に行っていたからわかるのですが、他の学校は、職人肌の先生が多く『盗め』という人が多いです。
けれど稲垣先生は、1からちゃんと教えてくれます。
『ここは、こうするんだよ』という風に、しっかり教えてくれるので、ゼロからでも上手くなるし、上達するのが他の学校よりも早いと思います」

研修はここだけでなく、組合員企業や関連業者での、実際の現場での研修も行います。
さらに他の焼き物の産地での見学も行っています。

 

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こちらではロクロを使った成形の実習。

「土の硬さや異物がたまに入っていることがあるので、難しいです。
基本である『同じ厚みに揃えて、真っ直ぐ上に上げて引く』というのが、その日のコンディションで、上手くいったりいかなかったりで」

と語るのは、片山光規さん。
以前からモノづくりに興味があり、研修に申し込みました。

 

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ロクロ成形の際に使われている、こちらの道具。
これは「とんぼ」と呼ばれるもので、器を同じ大きさ、同じ深さにするために使われています。
塾生に求められているのは、陶芸家になることではなく職人としての技。
均一な製品を、手際よく、高い質で作り上げる。
そのための基礎技術の習得が必要とされています。

 

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こちらは『やきものたまご創生塾』を5年前に修了した卒業生、倉岡茉希さん。
現在は、四日市市内に窯を持つ『竹政製陶』で、主に製造の仕事を任されています。

「大学で陶器の勉強をしていましたが、実際、産地の中でどのように焼き物が作られているかなどは、大学では学べませんでした。
創生塾では、色んな企業を研修させてもらったり専門的に教えてもらったので、そういう所が、知識として身に付いて良かったかなと思います」

 

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『武政製陶』代表の竹内理さんに、『やきものたまご創生塾』の取り組みについてお聞きしました。

「なかなか技術がいる職種もあるので、入ってもらって、「すぐに」とはいきませんが、1年2年と経つと、どんどん戦力になるので心強いです。
この先、年に数名ずつでも創生塾の修了生が出てくれば、5年10年と経つと、どんどん、人が増えてくるので、大きな意味があると思います」

 

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「それぞれみんな作風が違うので、見ていて面白いです。自分では思いつかないようなアイデアであったりするので。
刺激になります」

「私、食べることが好きなので、直火に掛けられる土鍋や陶板などを作れるようになりたいですね。おいしい料理といっしょに」

「僕は、急須を作りたいという思いがあって。萬古焼の急須を、後世に
残していきたいと思っていて」

 

250年の歴史を持つ地場産業を、将来に伝えたい。
自分たちが作ったものを、後世に残したい。

実際に、土をこね、ロクロを回し、絵を付け、そして、焼く。
その思いを、ひとつずつ形にしていく。

受け継がれてきた技を未来へつなぐ。
それが、やきものたまご創生塾なのです。

 

※やきものたまご創生塾は、平成28年度も開講します。
ただいま、塾生募集中。