FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年2月27日放送

今回は『特定非営利活動法人 ほがらか絵本畑』の理事長・三浦伸也さんがお客様。
子供たちはしんちゃんって、三浦さんのことを呼びます。
絵本を読む人となり公演や講演会の依頼は年間300本。
小さな子供たち、小学生や中学生、高校生、大人までいろんな人たちに絵本を読んでくれます。
「畑があり、子どもたちは希望の種。
絵本でその種から芽を出し、花を咲かせたい。
だから『ほがらか絵本畑』なんです」
と、しんちゃん。

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本を読むきっかけ

それまで僕は、絵本の読み聞かせも見たことがなかったし、興味もありませんでした。
たまたま友人が絵本の世界にいて、「家で本を読むと、家の空気が変わるよ」と言われて。
読もうと思っても家に絵本がなかったので、買いに行ったところ、どの絵本が良いのかわからないんですよ。
見たことあるな、というタイトルの絵本を買い、家で読んだところ何も変わらず。
それを2回繰り返したかな。
そして3回めに、ワケの分からない絵本を読んだんですよ。
『るるるるる』という五味太郎さん作の、『る』しか書いてない絵本。
ホントにワケわからないです。
でも家で読んだら、子どもたち大喜び。
それを見て、うちの子大丈夫かと心配になりまして(笑)。
そこで、公園にいる知っている子を集めて読んだら大喜び。
さらに他の公園に行って、知らない子を集めて読んでも大喜び。
これは・・・と思い、保育園に飛び込みで行ったら、やはり大喜び。
こんなにワケわけわからないのに大喜びというのは、これまで経験がありませんでしたし、何より僕が心地よかったんです。
その時、直感で、この世界はとてつもないものが眠っているのではないかと感じました。
それが絵本を読み始めたきっかけですね。

読み方は毎日変わります。
最初は冊数もあまり多くありませんでしたが、今も毎回、何を読むかは決めていません。
この仕事を始めて14年になりますが、初期の頃は読み聞かせのボランティアの人から「何を読むんですか?」と聞かれました。
まだ決めてないと言うと、とても驚かれて早く決めてほしいとせっつかれる。
なぜそういう反応なのか理解できなかったのですが、その後、仕事を続けていると、他の人たちは前もって決めているとわかりました。
僕にとっては、逆に衝撃的でしたね。
僕のトレードマークは、赤いニッカボッカ。
僕も赤が好きなんですけど、赤という色は子どもたちに覚えてもらいやすいんです。
1年たっても僕の絵を描くと、赤いズボンをはいている絵ですから。
それにまあ僕の雰囲気は、よくも悪くも一度見たら忘れないと思います(笑)。

 

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生たちに必要なのはしっかりとした土台

ある時、けっこう荒れているという噂のある中学校へ行きました。
そういうところは特に念入りに打ち合わせをするんですよ。
よくあるのは「うちの子たちは元気が良くて・・・」という、オブラートに包んだような言い方。
僕はそういうの大嫌いですし、それよりも事前にいろいろな話を知りたいので、担当の先生と打ち合わせをしました。
この時に校長先生も同席したのですが、包み隠さず、全部話してくれました。
さらに「わしは、あの子たちが学校に来ること自体がスゴいことだと思っている」と。
いろいろな状況の子がいますからね。
校長先生のこの言葉を聞き、この学校は大丈夫だと確信しました。
実際、荒れていたんですが、僕は安心して絵本の読み聞かせを行いました。
4〜500人はいたでしょうか、みんなじっくり聴いてくれました。
大切なのは、まわりにいる大人の土台。
僕は、保育園、幼稚園、小学校の先生方、中学・高校の先生方が日々努力してやっている土台に乗せさせてもらっているんです。
だから土台が大事なんです。
土台がもろいのに気がついたら、僕は言っちゃいます。
先生たちにも気づいて欲しいので。
たいていそういうのは、見えない雰囲気で感じますから、何がとは言えませんが、外からだとよく見えてしまうんですよ。
終わってから校長や教頭先生に話したり、あまりにも違和感のあるときは、直接言ったりもします。

 

11-08-14-02

供の世界から大人が教えてもらう

いろいろな人と出会って感じたのは、ほとんどの人が「子供の世界は幼い」と思っています。
自分たちが通ってきた道だからと、思ってしまいがちなんですね。
でも本当はそうじゃないんです。
子供の世界に触れている人・・・保育園の先生などは、わかっている人がたくさんいます。
だけど、一般社会から見ると、「子どもは幼い」と。
その概念を変えたいんですよ。
大人が子どもの世界に触れることで、大人自身に良いことや気付かされることがたくさんあるんです。
そのためには、今までまったく絵本に触れることがなかった世界の人たちが、絵本に触れてゆく機会をいっぱい作っていく必要があります。
すでにいくつかの取り組みは始まっていて、まったく絵本に関係ないけど、僕の考えに賛同してくれて、子どもに触れ、想像力を豊かにしようという企業も現れました。
それから少林寺拳法でも、指導者が子どもたちに絵本を読むことで、子どもたちに与えると同時に、子どもたちから受け取るものがたくさんあるとの発見がありました。
子どもたちに絵本を読んで、自分を磨いていくというプロジェクトが今、始まっています。
絵本の世界は深いです。
僕は新しい時代を作りたいですが、大半は子どもたちの世界は幼いと思っています。
でもこれが変わると、例えば金曜日の夜、OLさんたちがストレスいっぱいの1週間の仕事を終えて、飲みに行こうとしている時の会話で、

「私は海に行ってサーフィンして、発散する!」
「私は山ガール。1人で山に行ってぼーっとするの」
「私は明日の午前中、子どもに絵本を読みに行って、パーッと開放すんねん!」

という会話が生まれてくるようになります。

そう、海に行くのと山に行くのと同じように、同じ並びに子どもがいるんです。
つまり僕は、子どもたちに絵本を読むことが、休日の選択肢の一つとなるような時代を作りたいと思っているんです。
そのために今、いろいろアプローチをしているんです。

 

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本は、子ども達の世界へ連れていってくれるパスポート

僕が思うに、子どもに触れることで、大人が楽に生きられるようになるんですよ。
最近、余裕のない大人が多いでしょう。
スマホばっかり見ている大人。
駐車場から幼稚園までの道を、手をつないでいる親子も少なくなりました。
もちろん我が子は24時間一緒だから息が詰まることも多いと思います。
だからこそ、人の子どもに絵本を読むんです。
時間も限られているので、お互いにいいところだけを見られるんです。
抑圧された大人の世界から開放されるきっかけを、子どもたちが作ってくれるのではないでしょうか。
その世界は、大人は絶対に行けないんですよ。
何故かというと言葉が発達してしまい、意味とかいろいろなことを考えてしまうから。
子どもたちはまだ発達していない分、その世界にいられるんです。
絵本は子供の世界に行くパスポートだと思います。
読むことで、子どもたちが絵本の世界に手を引いて連れて行ってくれるんです。
僕は一体感を作るために、いろいろなことを考えながら前でやっているおかげで、連れて行ってもらっているんです。
だから、いつも元気!
それが想像力なんです。
ないものを作っていく、今までなかった時代を新たに作っていくというのが、想像力なんです。
そういう大人が増えることで、子どもたちは早く大人になりたいと思うようになりますよね。
まずは、そういう大人が増えて欲しいです。