FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年6月4日放送

今回のお客様は『皇学館大学教育開発センター』助教の池山敦さんです。
大学と自治体との関係、今の大学の役割とは?
玉城町と学生との取り組みも紹介してください。
まずは、皇学館大学の教育開発センターについて教えていただきましょう。

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ち合わせなどのボードを設置

学生との打ち合わせ内容などをホワイトボードとか模造紙に記録をしていっています。
すぐ忘れてしまうし、「あの話ってどうなったっけ」ということが多いので、書き留めて携帯で写真を撮りLINEで共有するなどして、学生たちと打ち合わせ内容を共有しています。

 

(知)の拠点事業について

今、皇學館大学教育開発センターでは文部科学省からの助成を受けまして『地(知)の拠点授業』略して『COC』を行っています。
『ち』には『知性』と『地域』の二重の意味をかけています。
大学というのは地域においての知性でもあり、地域の拠点でもあるべきだということで、伊勢志摩の3市5町からはじまり、周辺の自治体と連携。
地域が持っている課題を学生たちが学んで、現場に出て行き、現場の声を聞くことでさらに学んでもらいます。
そしてその知識やスキルを持った学生を、課題解決のために社会に送り出していくという教育プログラムを、教育開発センターで、開発中です。

その中で私が担当しているのは、主に地域活動。
地域に学生を送り込んで、現場でいろいろ体験したり、現場の方に話をうかがうなど、体験を通じて学ぶプログラムを担当しています。
ウチでは『CLL(Community Learning labo)』・・・コミュニティ・ラーニング・ラボと呼んでいますが、たくさんのプログラムを地域の自治体や商工会などから提案してもらい、その中から我々教員が「学びの効果が大きい」と判断したものに、何人かの学生を送り込み、現場での地域の課題解決の活動をさせています。

 

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方は人口減少、その中で地域資源をいかに掘り起こしていくのか

大きな問題として、どこの市町にも共通しているのが、地方の人口減少。
東京や大阪などの都市圏に人口が集中するとともに、地方ではだんだん人口が減ってきています。
現在、各市町では人口ビジョンというものを作っていて、これからの人口減少に向けての取り組みをみんなで考えあってもらっています。
しかし人口が減るからといって、必ずしも悲観的になる必要はないと思います。
人口が減っていく中でも、この伊勢志摩地域には、まだまだ掘り起こされていない地域資源がたくさんであります。
それを学生と掘り起こすことによって、私を含め、伊勢志摩地域で暮らしている人が、これからも幸せであり続けるためにはどうしたら良いかを考えあっているのが現状というところです

今のところ、南部で人口が減っていないのは玉城町だけ。
玉城町は昔から企業を誘致したり、福祉政策をしっかりと行っていて、積極的に色々なことに取り組んでいます。
その中でも去年、学生を連れて行って実際に乗せてもらったのが『ゲンキバス』。
町内のバスをダイヤで循環するのではなく、予約をするとバスが来てくれるという、オンデマンド形式と呼ばれている方法。
経費も削減できることもさることながら、お病院の行き帰りや福祉センターでの催しなど、お年寄りにたくさん利用してもらうことで、積極的に家から出ていく仕組みができ、とても良い取り組みだということで全国からも視察が来たりしています。
地方でも、新しいことや良いこと、面白いことがないわけではないので、そういうのをもっと掘り起こしていきたいと思います。

 

学卒業後、すぐに社会人とコミュニケーションがとれないのは当たり前

私は、最初からコミュニケーションを積極的にとっていく方ではありません。
もちろん大人なので、社会生活上コミュニケーションを取ってはいますが、あまり得意ではありませんでした。
しかし得意ではないからと、思ったことが言えない場というのに、疑問を感じていました。
コミュニケーションが得意な人はバンバン意見を言えるけど、言えない人は、いつまでも言えません。
そんな場で話し合いをしても、それは偏ったものにしかなりません。
個人のコミュニケーション能力に依存せず、みんなが思った時に思ったことを意見できる場が必要だと思っていました。
そこでワークショップや対話でデザインして、できる場をいっぱい作っていきたいです。
地域しかり会社しかり大学しかり・・・これが『皇學館未来対話団』というプロジェクトで考えていることです。
学生さんは就職活動でコミュニケーション能力が必要ですよね、とよく言われますが、彼らの今までの生活を考えると、小中と、みんな同じ年齢で分かれているわけですよね。
つまり同じ年齢の子しかいない。
次に受験があり、ある程度学力が似た子たちが集まってくる。
さらに受験があり、似た学力、似た好み、似た思考を持っている子たちが集まってきて・・・だんだん純粋化していった集団で学年を経ていくわけです。
その子たちが大学生活を送り、卒業したらいきなり、いろいろな世代の人と話をする必要が出てくるんですね。
定年間際や、50代の自分の父親くらいの人や、子育て中の40代・・・これまで接点のなかった人たちといきなりコミュニケーションをとれと言われて、できないと、「コミュニケーション能力のない、今時の若者は!」とか言われてしまうんです。
意外と過酷な要求をされているのではないでしょうか。
そのトレーニングのためにも月に一回対話セッションを行っています。
僕の指導している学生は、現役の行政の方や学校の先生など、また、まちづくりのしごとをされているずいぶん年上の方など、まったく接点のない、異世代や、職業思考の違う人たちと対話をすることを通して、コミュニケーション能力が高めるトレーニングをしています。
実際、僕が受け持っている学生たちは世代の違った方とも打ち解けますし、思ったことも言えていますね。

 


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和町と米とお酒のプロジェクト

学生たちに、最近どんな大人と話したかを聞くと、両親か学校の教員かバイト先の店長・・・そのくらいです。
その中で大人の考えていることをわかれというのは難しいから、わかることのできる場、大人と接することのできる場を作らないといけません。
我々がやっている対話セッションでもそうですし、CLL活動で、現地に行って話を聞くとか。
最近、皇學館大學と明和町との連携事業で、お米を作ってお酒を作るというプロジェクトを始め、先日は田植えを行いました。
大学で学ぶのはもちろん不可欠ですが、それをベースにした上で、大学の外へ飛び出して現場に行くことによって、いろいろな世代の方と話したり、大学ではできないことを学んだりして、大学時代の学びに、もう少し肉付けしてあげたいと思います。
世代や考え方の違う人たちとふれあい、コミュニケーションを取ることの大切さを、最近痛感しますね。
そういう時間をたっぷりとれるのも、学生時代ならではだと思います。
旅をしても良いし、ボランティアでどこかの地域に入っていくのも良いし・・・今しかないと思うので、ぜひ学生たちにはやってもらいたいです。

 

験を通じて色んな人と出会い三重で就職してほしい

大学ではもちろん、理論というか座学によってたくさんのことを吸収しなければなりません。
というのは、大学を卒業するときに学士という資格を取るにあたって、専門について深い知識を得るのは大切だからです。
その知識を確保した上で、自分の力にしていくためには、一回、自分の生活や体験をくぐらせ、照らしあわせて、それらを通した知識にしていかないと、使えるものになりません。
単純に勉強として九九を覚えるのではなく、九九を使って、1箱に3つはいったリンゴが10箱あったらいくつ・・・ということに置き換えるのと同じように、体験を通してこそ真の生きる力になると思うので、今僕らがやっている『地(知)の拠点』という事業で、体験や経験を付けてあげて、専門知識と相まった力にして欲しいです。
最終的には、三重県のことをよく学んだ人材を、三重県の職場・・・行政や教員として送り出していきたいというのが、私がこのプロジェクトに対して抱いている思いですね。