「ふれあい」Vol.31 2011年9月号

汗びっしょりになって叩く、子どもたちの真剣な演奏が観客を圧倒する芸能集団『賀楽多』。
その名が示すように、音楽を『多』く『楽』しむ演奏を通して、子どもたちの心身の成長を見守り、地域の伝統芸能の継承に取り組む皆さんにお話を伺いました。


代表・山脇弘二さん

■楽しく、そして真剣に和太鼓に取り組む

私は尾鷲市の出身で、尾鷲節保存会というところで和太鼓を習っていました。

その後、紀北町に移り住んでからも和太鼓の活動をしたいと思い、平成17年1月に、今の『賀楽多』を立ち上げました。
現在『賀楽多』には小中学生二十数名が在籍しています。

最初は地元の民謡や尾鷲節などの演奏をしていましたが、子どもたちに力がついてきて、創作太鼓に徐々に取り組むようになりました。

さらに力がついてくると、子どもたち自らが譜面を作って曲ができるようになっていきました。

■子どもたちの中でチームワークが育っていく

太鼓を通じて、伝統芸能の良さとチームワークを伝えられたらと思っています。
伝統芸能の良さとは、大人が技術やチームワークの大切さを言葉で伝えるのではなく、上手な子がみんなに教えていくという“流れ”の中で、技術とチームワークが醸成されていきます。

例えば「バチを上に上げる」振りを全員で揃えるときに、誰かが1センチでも違っていれば、そのずれが舞台上ではっきりと見えてしまう。

そういうところから「息を合わせる」「全体美を追求する」ということの大切さが自然と身に付いていきます。

■「あの子みたいに上手になりたい!」が、やる気の源

楽しいだけでなく、時には厳しく指導することもあります。

上手にできないとすぐにあきらめてしまう子も多いので、そういう時は叱咤激励しますが、子どもたちが何よりもやる気を出すのは、同じチームに自分より上手な子がいるときです。

上手な子の演奏を見て、「私もああいうふうになりたい」と思うことが一番のやる気の源になるようですね。

■指導者として学んだこと

太鼓の指導では、私はあまりでしゃばらないようにして、子どもの自主性を尊重するようにしています。

なかなか難しいことですが、指導者として「見守ること」「待つこと」の大切さともいえるでしょうか。

次に「仕掛け」も大事ですね。
少人数で活動しているため、どうしてもマンネリ化は避けられません。
それを解消するため、これまでもプロの演奏を見せたり、他団体の指導者を迎えて教えてもらったりもしています。

そういう試みは子どもたちに刺激を与え、新たな成長を促すことができたと考えています。

■子どもたちには十分力がある!

子どもたちも人前で演奏することで自信がついてきたため、「お客さんが多ければ多いほど燃えてくる」なんて言っています。
おかげで燈籠祭や七夕祭など、街の大きなイベントにも参加できるようになりました。

また、私たちがイベントで遠方に出張するときは、保護者の皆さんに準備を手伝っていただいています。

そのため、なるべく多くのイベントに出演し、『賀楽多』の演奏を聴いていただき、皆さんに演奏の上達と子供の成長を喜んでもらえるなら嬉しいですね。

私たちの演奏を聴いてくれた観客の皆さんからは「すばらしい」「感動したよ」と褒めていただけるので、それを励みにホームグラウンドの海山公民館で練習しています。

今後はこの地域での活動はもちろん、県でのイベントや他団体とのジョイント演奏などを通じて地域をPRしていきたいですね。

「プロの曲をカバーして、プロの技を身につけていきたい」

太鼓が、かっこよくて好きだったので始めました。
練習した成果をお客さんに見てもらい拍手をもらえた時が嬉しいです。
特に自分で開いた新春演奏会で拍手をもらったのが印象に残っています。
これからは、お客さんがいっぱい来るような大きなイベントに出たいです。

「もっとうまくなって、太鼓を人に教えられるようになりたい」

賀楽多の演奏を見て、かっこいいと思ったので、自分でも始めました。
もっと練習してうまく太鼓を叩けるようになって、大勢のお客さんの前で披露したい。
たくさんの曲を叩けるように練習して、みんな「良かった」と思ってもらいたい。

「太鼓を叩く前までは緊張するけど、叩き始めたら大丈夫!」

寄席太鼓は子供から大人まで出場できるので、大人になっても続けたいです。
それに太鼓は叩くだけでなく曲を作るのも楽しい。

最近、東日本大震災の被害に遭われた地域に復興の願いをこめて『復活』という曲も作ったので、ぜひ被災者の皆さんに聞いてもらいたいです。
踊りや琴などの皆さんと演奏することも楽しみです。

新しい曲のヒントになるとともに、たくさんの人と演奏できたらうれしいです。
そのためにも、私たちと一緒に太鼓を叩くメンバーも募集しています。

「太鼓を叩くのが本当に楽しいみたいですね」

お客さんから拍手をもらうのがうれしいみたいで、お客さんが多いほどやるきが出るみたいですね。

1年に1回、賀楽多の演奏会がありますが、その時のお客さんの数が自分たちの成績表みたいな気持ちでがんばっています。

私たち保護者もその時のイベントは一緒になって手伝いますが、子どもたちが自分の意思で楽しんでやっているのがいいかなと思っています。