鳥羽唯一のゲストハウスを取材するべく、誰にも頼まれていないのに前日夕方から鳥羽に入ったサルシカ隊長。
当然のごとく鳥羽の夜を満喫! そしていよいよゲストハウスをご紹介!
ゲストハウス「かもめnb」のオーナー鼻谷くんと、ワタクシとの付き合いは結構長い。
サルシカがNPO法人としてスタートして間もない頃、当時彼は地元ローカル新聞の記者で、確か元旦の特別企画でもう1面まるまるぐらい使って、われわれサルシカの活動を紹介してくれた。
その後、彼が新聞社を辞め、文筆業を生業にしたいと相談を受けつつ、われわれサルシカの拠点であるサルシカ秘密基地の建造工事を手伝ってもらったりした。
で、しばらく音沙汰がないなあと思っていたら、なんと鳥羽でゲストハウスをスタートさせていたのである。
では、改めて、ゲストハウス「かもめnb」の場所を紹介しよう。
鳥羽1丁目。
昔ながらの観光旅館やホテルが立ち並ぶ中心地。
そこを流れるお堀に面して、その1軒屋のゲストハウスはある。
鳥羽駅から歩いても数分の距離。
鳥羽を代表する観光スポットである鳥羽水族館、ミキモト真珠島までわずか400メートルという好立地である。
鼻谷くんは何ヶ月も鳥羽に通い、この1軒屋を見つけて大家さんと交渉。
幾多の苦難を乗り越え、今年(2016年)5月3日に、ようやくゲストハウスを開業させた。
おとなりの黄色い建物は、昨夜お邪魔したクレープ&カフェバー「KILLIBILLI」。
飲んで食べる場所と泊まる場所が隣接しているのだ。
「いらっしゃいませ」
と、お出迎えの様子を撮らせてもらった。
うーむ。
まだ表情が固いなあ。
お客さんを迎える目じゃなくて、スクープを狙う記者の目だよ、それじゃあ(笑)。
改めて鼻谷くんの紹介をしよう。
鼻谷年雄(40歳)。
三重県津市出身。
東京大手出版社に勤務後、三重に戻り、地方新聞社、地方出版社で記者や編集の仕事に携わる。
10年前、ワーキングホリデーでオーストラリアで10カ月ほど過ごしたことがきっかけで、旅と宿に興味を持つように。
それが、ゲストハウスの開業へとつながっているそうだ。
続いて施設紹介。
玄関を入ってすぐにあるのが、キッチン。
ここは宿泊者および鼻谷くんの共有スペース。
宿泊者は、食器や調理器具を自由に使うことができる。
Wi-Fiも完備。
光ファイバーなので快速快適!
2階の客室。
ドミトリー(相部屋)で3人が宿泊可能。
こちらは女性専用ルーム。
エアコン完備。
こちらは男性用のドミトリー。
決して広くないけれど、うまく仕切りがつけられていて、なんとかプライバシーが守られている。
ベッドメイキングは宿泊者が自分でやる。
シーツは毎回交換。
鼻谷くんが毎日洗濯している。
清潔ですごくいい柔軟剤の香りがするシーツが、おじさんをやさしく包んでくれる(笑)。
こういう空間ってなんかワクワクする。
実際、子どもたちが泊まると、最初は普通の家なのでとまどっているものの、この秘密基地的空間に大はしゃぎになるらしい。
わかるわかる(笑)。
家族3〜4人なら、部屋を独占しての利用も可能。
我が家の場合、妻と娘と3人家族だから、ひとり宿泊費3000円として、おお、1万円でお釣りが来るではないか!!
お風呂はシャワーのみなれど、こちらも清潔。
脱衣所にて鍵がかかるようになっているので女性の利用者も安心。
シャンプー、リンス、ボディソープが用意されている。
あとタオル、バスタオル、歯ブラシもある。
ゲストハウスにしてはありがたいサービス。
思いついたら手ぶらで宿泊ができる。
写真左は、ドアがそのまま旅の落書き帳に。
さまざまな言語でいろんなメッセージやイラストが描かれている。
オープンからすでに60人ほどの宿泊者がいるそうで、
そのうちの半分が海外の人、半分が国内の人だという。
ちなみに海外のお客さんは、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、フランス、ポーランド、マレーシア、香港、台湾から。
伊勢志摩サミットの影響も大きいかも知れないが、驚くほどインターナショナルだ。
写真右は、耳寄り情報をマップに貼ってもらうサービス。
自分が知り得た情報をここに貼ると、なんと宿代から100円キャッシュバック。
面白い仕組みだ。
SNSとは違う、泥臭くて顔が見えるネットワークをつくろうとしている。
朝のコーヒーを飲みつつ、オーナーの鼻谷くんに話を聞いた。
「もともとは伊勢でゲストハウスをやりたかったんですよ。
でもいい物件が見つからなくて、どんどん南へ南へと移動しつつ探していたら鳥羽にたどり着いて、ようやく物件に巡りあったんです」
−−鼻谷くんは独身だよね? ぶっちゃけ思ったのは男ひとりなのにずいぶん綺麗にしてるな、と。
「見栄っ張りなんで人にいいところ見せたいんで(笑)
誰も来なかったら、もうぐちゃぐちゃでひどいもんですよ」
−−でも掃除やら洗濯やら大変だよね?
「朝は6時すぎには起きてトイレやお風呂の掃除をして・・・お客さんをお見送りしたらそこから部屋の掃除。
それからシーツやバスタオルの洗濯・・・まあ昼過ぎまではかかりますね」
−−昼からは?
「僕はライターもやってるんで、仕事があれば取材や記事を書いて・・・
またお客さんがやってきたら、宿の対応ですね」
−−休めてるの?
「ほとんど休みらしい休みはないですねぇ。
でもお客さんと話しているのは楽しいし、どこか自分も旅行気分なところがありますから」
※工事の様子の写真(鼻谷くん提供)
さて、このゲストハウス「かもめnb」だが、かなりの部分を自分でリノベーションをやったという。
多くの友だちにも手伝ってもらったが、思っていた以上に助けてもらったのが、津に住むお父さんだったという。
知らない土地で宿をはじめる息子を思いやってのことだと思うが、お父さんも作業自体を楽しんでいたらしい。
「いつも母とやってきて、作業を終えたら鳥羽を観光して津に帰っていくんですよ。
母は・・・あ、カーテンを縫ってくれましたね(笑)
心配はしてるんでしょうけど、自分たちには想像もつかないことなんで楽しんで見守ってくれてるって感じですね」
※工事の様子の写真(鼻谷くん提供)
この家を借りたのは昨年の12月。
鼻谷くんはそこからずっとここに寝泊まりをしつつ、コツコツと宿づくりをしてきた。
最初は風呂がなかったので、近くの旅館の風呂に通っていたという。
「工事は大変でしたけどそれなりに楽しかったし辛くはなかったですね。
辛かったのは宿として営業するための申請関係。
これはいろいろ大変でした・・・」
売り上げ的にはまだ決して手放しで喜べる状態ではない。
でも伊勢志摩サミット開催によって、この鳥羽も確実に海外からの注目を集めている。
そんな地域において、唯一のゲストハウスというのは大きな強みであろう。
鳥羽ある宿は観光旅館がほとんどで、素泊のビジネスホテルはほとんどない。
そのわずかなホテルでも宿泊費は6000円ほどするというから、その半額で泊まれる「かもめnb」はどんどん旅人を集めるに違いない。
観光地・鳥羽ではなく、
人が暮らすひとつの地域としての鳥羽の魅力を知ってもらいたい・・・。
旅行者だけじゃなく、旅人がやってくる町へ・・・。
鼻谷くんや、お隣のクレープ&カフェバー「KILLIBLLI」のオーナーは、そんな店と町と価値観のリノベーションをやろうとしているのだ。
最後に気になっていたことを聞いた。
−−宿の名前である「かもめnb」だけど、この「nb」ってなんなの?
「海外にB&Bという簡易宿泊所があるじゃないですか。ブレックファースト&ベッド。
あれをよく「bnb」と表記するんですよ。
「&」が「n」です。
で、うちは朝食なしのベッドだけなんで、頭の「b」をなくして、「nb」なんです。
最後にドットを入れたのは、デザイナーの思いつきです。
すんません、ただそれだけの話で(笑)」
「かもめnb」の詳細は基本情報をご覧ください。