ふるさとの漆器が、今、甦る!『伊勢春慶の会』(ゲンキみえ)

三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2016年9月4日放送

昭和30年代以降、生活様式の変化などを理由に生産が途絶えた『伊勢春慶』。その技術保存と再生を目指し、『伊勢春慶の会』を設立!
地元市民を中心に、平成16年から再興への活動が始まっています!

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こちらは伊勢市の『河崎』です。
江戸時代から勢田川の水運を利用して問屋街へと発展した河崎は、『伊勢の台所』とも呼ばれていました。
現在は、当時の面影が偲ばれる古い町並みが1キロに渡って続き、古い蔵を利用したカフェやショップなどがオープン。
伊勢の新たな観光名所となりつつあります。

 

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河崎のまちの一角にあるのが『伊勢春慶デザイン工房』
今回ご紹介する『伊勢春慶の会』の拠点となっています。
『伊勢春慶の会』副会長の里村悟さんに『伊勢春慶』についてお聞きしました。

「いろいろな商品がありますが、やはり伊勢春慶は『お重箱』など『箱物』が一つの特徴です。
伊勢春慶はすべてヒノキの木地で、赤色で木目をキレイに見えるように作られています」

 

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伊勢春慶の起源は室町時代。
伊勢神宮の宮大工が払い下げられた御造営材で作った器が始まりといわれています。
しかし、高度経済成長期以降
生活様式の変化やプラスチック製品の台頭により、急激に衰退。
やがて、途絶えていきました。

平成16年、そんな伊勢春慶を地元の工芸品として復活させようと『伊勢春慶の会』が発足。
生産技術のマイスター制度を導入し、伝統の技術を甦らせました。

 

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こちらが伊勢春慶を今によみがえらせる作業場。
漆塗りの作業をしていたのは、塗師(ぬし)の神戸さん。

「退職して遊んでいたところ、こちらで募集がありました。
昔、機械の設計をやってまして、趣味でも木工などが好きだったので応募して、春慶にふれてみて、これは面白いということでやらせてもらっています」

おこなっているのは、最後の上塗りの作業。
一度で綺麗な面を出すため、一番気を使う作業だそう。

 

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一番気を使うのはゴミ。
これまでに何度も使っているので、ハケの中に『漆の粉』が入ってしまうそう。
ポツポツと見える粉を、孔雀の羽で1つずつ手作業で取り、またもう1回、上を撫でるという作業をします。

伊勢春慶の完成までには「木地のペーパー掛け」「着色」「柿渋塗り」「漆塗り」など10ほどの工程があります。
漆は乾きづらく、1回塗りこむと拭きとっても1週間ほどしないと乾きません。
そのため、1つの器を作るのには最低でも2ヶ月かかり、塗上がったものを固めるため、お客さんの手に届くまでは3ヶ月かかるそうです。

 

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こちらでは女性の塗師が作業しています。
箸の頭の上塗りをする前に、漆の食い付きを良くするためにサンドペーパーで少しだけ傷つける作業。
細かいですね!

「私は伊勢春慶のシンプルな美しさに惹かれたので、その魅力をほかの人にも知ってほしいと思います」

と、玉木さおりさん。

伊勢春慶の美しい風合い。
それは、いくつもの工程を経て、生み出されます。

 

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こちらでは、塗師の喜多島淳二さんによって、伊勢春慶の修理が行われていました。
傷んだ木地の表面を整えて、再び、着色
そして、漆を塗って、元通りにしていくのだそうです。

「5年前に三重県下で定年を過ぎた人たちにたいして『マイスター制度』の募集があり、それに応募して運良く、塗師になれました。
物作りに興味があったのと、『職』人という定年後の憧れがあり、伊勢春慶に取り組めたことはとてもラッキーでした。
地元の伝統工芸品の継承に、少しでも貢献したいという思いがあります」

 

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『伊勢春慶の会』副会長の中村賢一さんに、お話を伺いました。

「ここ勢田川沿いの河崎・岡本・岩淵という地区を中心に、塗師屋、木地屋、漆器屋、問屋などが多く点在しており、かつては一大地場産業を形成していました。
地元の人たちに盛んだった頃を見てもらうため実行委員会を作り、全国に流通していた春慶を集めたのが、そもそもの始まりだったんですよね。
単に甦らせ再生するのではなく、河地域の町おこしに繋がると考え、実行委員会のメンバーを中心に『伊勢春慶の会』を作ったわけです」

 

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そして、伊勢春慶復活の要として導入されたのが塗師の『マイスター制度』。
伊勢春慶職人の確保、技術の伝承を目的とした塗師の養成講座で、技術の習得度合いが評価され昇格していく4段階の昇級制度。
辛うじて見つけ出した実在の塗師を講師に招き、伝統の技を受け継ぎ、そして、その技を磨き、ひとつひとつ経験を積み、塗師になっていくのです。

 

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伊勢市内にある老舗料理店『割烹 大喜』では、伊勢春慶を使ったお膳を提供しています。

「器はオリジナルで、『大喜』のシンボルマークである『福良雀』と屋号が掘られています。
地元の食材を調理していますので、地元の器に盛り込みたいとの思いで使わさせてもらっています。
『良い塗り物ですね』とか『こちらの塗りの器は、どこかで買い求められますか?』という質問をいただきます」

と、『割烹 大喜』の坂田喜則さん。

 

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最後に『伊勢春慶の会』会長の村田典子さんに、お話を伺いました。

「2015年10月に10周年記念を開催しました。
その時にようやく作品を作る人たちの手で展覧会ができました。
職人を作っていくこと、木地師を作っていくこと、そういう大きなテーマの中で、この10年があったのだと思います。
伊勢の方々、三重県の方々、そして、日本の方々に手に取ってもらい、使ってもらって、その魅力をもう一度引き出していくこと。
これが『伊勢春慶の会』のこれからのテーマだと考えています」

 

伝統と歴史。
地元を愛する熱い思い。
そして、未来への希望を幾重にも塗り重ね、完全な復活を目指す伊勢春慶。

これまでの概念にとらわれない
新たな商品の開発にもチャレンジをしています。

伊勢春慶のシンプルな美しさを、見て味わってみませんか。