FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年10月22日放送

今回は尾鷲市早田町の漁協の職員さん、湯浅光太さんがお客様です。
ウィークエンドカフェには、2回目のご来店。
早田町は、およそ150人の人が暮らす海のまち。
ここで湯浅さんは、早田の魚をたくさんの人に知ってもらおうと、さまざまな活動もされています。
おいしい魚をもっともっと食べてほしい。
これからが忙しくなる季節、と同時に、おいしい魚が獲れる季節になってきます。

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身といえば食べ切れない量が当たり前!

母が早田出身で、父も漁関係の仕事をしていたため、刺し身は大量に出てきて余るものと思っていました。
もっと食えと言われても、もうお腹いっぱいで。
男ならもっと食え!と言われるのが刺し身。
なので都会に出て、『〜〜刺し身定食』で2〜3切れ出てきて、そういうのは尾鷲弁で「奥歯にはさかる」と言います。
「食べた気がしない」という意味です。

 

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田大敷のはじまりは10月末から

10月末か11月頭から早田大敷が始まるので、現在準備中。
水揚げが始まる前に、大漁祈願を毎年行っています。
それぞれの町に大漁祈願の験担ぎがあります。
早田にある『小口』という場所に行って掃除をする人もいますし、僕らは八木山に登って庚申堂にお酒をお供えして大漁祈願をします。
いろいろありますね。
大敷の大将や社長は毎日早田神社に行って、参ってくるとか。
漁師町は神様を大事にします。
僕らはそんなにこだわりませんが、こだわる人は家を出る時に右足からとか、ありますもんね。
あとは大安とか仏滅など、六曜も気にします。
そういう昔からのものが大事ですね。

 

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シダイが揚がるとその後ブリが来る!

早田では基本的にはアジ、サバ、青魚などの回遊魚、それからブリの若魚ワラサが揚がります。
これからの時期、ドーンと来てほしいですね。
最近、尾鷲ではイワシが揚がっているそうですね。
それからヘダイ・・・方言ではマナジと言い、ちょっと白っぽい鯛も揚がります。
イシダイが揚がると、その後すぐにブリが来ると言われています。
イシダイがブリの道を作るみたいな。
町の生き字引の漁師さんが言っていたのですが、確かにイシダイが来ると、次の日ブリがドンと来たりします。

台風の時期と資源保護のために夏は休みますが、大敷網は毎年仕掛けて毎年上げます。
大敷網を仕掛けるのは漁業権の関係で、毎年同じ場所に決まっています。
そこに経験から培った、魚の道があるんですね。
昔の人たちが一生懸命考えて網を仕掛けた場所というのが、今、県の水産研究所が調査したり、潮の流れを調べたりしたところ、早田の大敷網の場所は良い、との回答をいただきました。
やはり、歴代の知恵の結集なのかもしれませんね。

ブリがたくさん揚がるころ、早田の町で祝い事があると作られるのが『べっこう寿司』。
甘辛く炊いたタレを煮詰めみたいにして、寿司の上にちょっと塗って食べると、これがまた美味いんです。
飴色に光るので『べっこう寿司』と呼ばれています。

 

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味しい早田の魚文化を広めたい!

僕が毎日食べている、早田の美味しい魚をみんなに食べてほしいという思いから、個人で『魚会(さかなかい)』というイベントを始めました。
金曜日に魚をたくさん仕入れ、仕事が終わったら車で走っていって、そこから魚をさばいて、友だちに食べてもらって、どんちゃん騒ぎ。
で、「やっぱり早田の魚は美味いなあ!」と言われて、ご満悦で帰ってくるわけです。
今は販路となる『きより』ができ、地域おこし協力隊の石田元気君や青田京子さんがそっちに関わってくれています。
最初は自分で交通費とか計算に入れずに、趣味みたいな感じで周りにご理解いただいてやっていて。
それでもこんな安くてこんなに美味しい魚、名古屋ではまず食べられませんからね。
最初の頃は、魚食の普及・・・魚をもっともっと食べてもらって、魚の価値を上げて、漁師さんの所得向上なども漁協の職員から考えて、まず名古屋の知り合いに広めようと。
とても美味しいと言ってくれるので、もっと普段から魚を食べてねと言うと、
「いや、こんな美味い魚食べてしまったら、名古屋ではもう買えない」と。
しまった、そういうことかと。
でもそこから、魚の通販『きより』ができて。
捌き方も教えつつ、丸ごとこの漁村の魚文化を伝えようとしているところです。

 

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期で4年目、早田漁師塾

『早田漁師塾』は、今年で4年続いています。
1期生が2人、2期生1人、3期生1人、そして4期生が4人。
4週間早田に来て、寝泊まりしながら早田の漁業と尾鷲の漁業、座学として法律も学んでいきます。
1期生〜3期生まで一人ずつ地区に残り、早田大敷に入って、今も水夫として頑張ってくれています。
4期生は梶賀大敷へ1人入りました。
先日会いに行ったら、とても楽しいと笑顔でいろいろ話してくれました。
愛知県、奈良県、大阪・・・など、さまざまな地域から塾生は来ています。
4週間泊まり込みということは、人生の一大決心だと思うんです。
仕事をしながらは無理ですし。
つまり、本気じゃないと来られない。
本気の子が来ると、やはり強いですね。
そういう人たちのバックアップができるというのは、僕たちも嬉しいです。
早田大敷は今、乗組員が20人なんですが、そうやって他所から来て頑張っている若者が11人。
半分以上。
そこに地域おこし協力隊も2人いて、町自体が若返ってきています。
新しい風が入るのは大切です。
狭いところなので、人間関係も大事ですけど、本気で来る子はちゃんとそういうのもわかってきていますね。
4週間寝泊まりしていると、だんだん人間性もわかってきますし、本人もこちらも適性を考えます。