三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2016年11月27日放送

今年10月、地元の空き家を利用して整備を進めてきた尾鷲市梶賀地区の郷土食『あぶり』の販売施設『網元ノ家』がOPEN!
運営を担う『地域おこし協力隊』のメンバー2人を中心に、町の有志たちの取り組みの様子を紹介します!

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尾鷲市の最南端、人口200人弱の小さな漁師町、梶賀町。
こちらで受け継がれている食文化が、この『あぶり』。
獲れたての魚を塩のみで味付けして、桜や樫の木であぶった魚の燻製。
今から100年以上前、冷蔵庫のない時代に保存食として始まったとされています。
煙に燻された独特の味わいが人気を呼び、今や密かなブームとなりつつある『あぶり』。
あぶるのは、春先の小サバをはじめ、大鯖や小鰹、イサギやタカベ。
最近ではブリのあぶりも作っているそうです。

 

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そしてこの10月に、梶賀のあぶりや郷土料理を食べられる施設が完成しました!
それがこちら『梶賀 網元ノ家』。
『網元ノ家』を管理するのは、尾鷲市の『地域おこし協力隊』として、この梶賀へ移り住んできた浅田克哉さんと中川美佳子さん。

 

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浅田さんは大阪出身。
梶賀へ来るまでは、デザイナーの仕事をしていました。

「梶賀町には昔から『大敷網』という大型の定置網漁をしていまして、その一番偉い『網元さん』が住んでいたのがこちらの家でした。
20年ほど空き家で色が抜けていたのを、お母さんたちと一緒に蜜蝋ワックスで全部塗り、障子も張り直し、廃校となった小学校から棚などを綺麗に洗って運び入れました」

 

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一方、津市出身の中川さんは、東京の大学を卒業後、金融会社に勤務。
この春にUターンし、ふるさとを飛び越えてこの梶賀で生活を始めました。

「『あぶり』自体は昔から作られていましたが、梶賀町の婦人会の集まりがもととなって結成された『梶賀まちおこしの会』が、あぶりの商品化・販売などを担当し、県内外のイベント等であぶりを販売し全国に発信しています」

 

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「こちら『網元ノ家』は、あぶりの販売施設としてオープンし、店内であぶりなど梶賀の郷土食を味わうことができるようになっています」

 

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こちらが店内で提供される『梶賀のあぶりと餅茶セット』1000円。
『餅茶(もちぢゃ)』とは梶賀町の郷土料理。
朝早く漁に出る漁師さんが、「手っ取り早くお腹に溜まるもの」として白飯の上に焼餅を乗せ、お茶漬けにして食べたそうです。
お店ではほうじ茶にお出汁を効かせたものを出しています。

 

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『あぶり』はすでに2時間ほどかけて中までしっかり火が通っているので、表面だけ炙る程度で。
無駄な油が落ちているため、味がギュッと凝縮され、驚くほどの美味しさ!
骨まで食べられるのも嬉しいですね。

 

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そしてもうひとつ、梶賀を味わえるメニューが『甘ぁ~い焼餅ぜんざい』500円。
想像を超えた濃厚な甘さと、焼き餅の素朴な味わいが人気です。

 

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営業時間になり、お客さんがやってきました。
今日のお客さんは、ご近所さんのようです。
網元ノ家は、観光客の拠点としてだけではなく、地元の人たちがふらりと立ち寄る、そんな憩いの場所にもなっています。

「だいたい毎週来ていますね」

「ここに来れば話し相手がいるし、情報交換もできるからね」

「浅田さんと中川さん、積極的にやってくれていますよ!」

「私たちは袋詰するだけですが、小分けしたり小さくしてみたり、そのままの姿で販売したり・・色々工夫してくれるので、販路が広くなり忙しくなりました」

お客さんの中に、『梶賀まちおこしの会』のお母さんも来ていました。

 

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「販売場所などの問い合わせがかなり多くなってきていて、ここ数年伸びているのを、みんな実感していると思います。
11月に東京・築地場市場に新たにオープンした商業施設内でも、『あぶり』の取り扱いを開始したこともあり、これからこれから第2第3のヒット商品が生まれることを期待しています」

と、梶賀地区区長の濱中靖人さん。

 

「『あぶり』の販売・販促に関しては、もともとしていたデザインやプロデュース関係の仕事と通じるところがあり、そのままこちらでもできると思いました。
やりたいことをさせてもらって、さらに町の人もとても協力的・・・ご近所さんが本当のおじいちゃん・おばあちゃんみたいです。
今、とてもあたたかい場所で、とても充実した毎日を送っていますね。
これから『梶賀 網元ノ家』が町を活性化するための拠点となっていってほしいと思います」

と、浅田さん。

「町の方たちの思い入れのある商品なので、大事にしながらもたくさんの人に食べてほしいですね。
今はおじいちゃんおばあちゃんたちと『あぶり』の売り出しをしていますが、それを続けつつ、若い世代の人たちとやっていけると面白いですね。
『あぶり』の販売だけでなく、梶賀町で新な仕事を一緒に取り組むとか。
一人ひとりが輝いている今の梶賀町を、今後も輝かせ続けたいです」

と、中川さん。

 

手間ひまをかけた、決して大量生産のできない逸品。
親から子へと受け継がれてきた梶賀の伝統の味が、今、全国へと広がります。