FM三重『ウィークエンドカフェ』2016年12月24日放送

今回は尾鷲市で『地域おこし協力隊』として活躍している浅田克哉さんと中川美佳子さんがお客様。
2人のミッションは梶賀町の特産品である『あぶり』のプロデュース。
そして町のプロデュース。
2人が着任してまだ1年も経っていませんが、すでにいろんな仕掛けが始まっています。
毎日がワクワクの連続です。

12-24-1

んとなく決まっている町の人の役割

中川 なんというか、これは男の仕事だからやっちゃダメとかというのではなく、なんとなく、これはお父さんにやってもらう仕事、お母さんにやってもらう仕事と決まっていますね。

浅田 男女ではなく、自然とそうなっていったような。

中川 大敷に乗っている方の家の話を聞くと、魚をさばいて刺し身にするのはお父さんの仕事。
そのほうが美味しいと。
とても良い信頼関係だなと思いますね。

浅田 男女というか、町にいる人の絶対数が少ないからか、各々の役割が一個人として、とてもはっきりしているんです。
大工さんでもないのに、何かちょっと壊れたらあの人に頼めとか、こういうことは俺に言ってくれとか。
料理でも煮物ならあのおばちゃんが美味しいよ、とか・・・みんなが一人ひとりオンリーワンというか。
一人ひとりのおかげで、梶賀町が成り立っているのを感じます。
都会にいる時に感じる『キャラがかぶる』ということがないんです。
この人にしかないオリジナルの技能を持っているということを、すごく感じます。

 

12-24-2

田さんが地域おこし協力隊になったきっかけ

浅田 もともと大阪でデザイン関係の仕事をしていまして、化粧品のパッケージやロゴなどのデザインをしていました。
しかしもっと大きな範囲で、もっといろいろなことをしたい、もっと自分の力を出したいと思っていたところ『地域おこし協力隊』を知りました。
町単位で自分のやりたいことをできる、町をプロデュースできる、さらに梶賀町の場合はそこに『梶賀のあぶり』という特産品がありました。
それをプロデュースし、もっと世の中に出す手伝いをしてほしいというミッションがあることで、今まで自分でやってきたことを活かしつつ、自分のやりたいこともできるかなと大きな魅力を感じて、大阪から今年の2月に来ました。
今、26歳です。
地域おこし協力隊というと「地域のために入っています」というイメージですが、それだけではなく一番は自分がやりたいことをやる。
それが地域のためになればいいなあということです。
別に、ボランティアとか奉仕という感じではなく、お互いWinWinになればいいなと思っています。

そもそも、地域おこし協力隊を知ったきっかけは『ボンビーガール』というTV番組。
石垣島に女の子が行く
アレを見て、すごい楽しそうだなと。
ほぼ思いつき(笑)。
素晴らしいカリスマ的な人がいて、ここに行きたい!・・・というのでは全然なく、本当にふとTV見ていて。
古民家を改装して、町の人と一緒にワイワイしながらイベントに参加して。
都会では近所付き合いとかないので、そういう人間らしい生活がとても良いなと思いました。

 

12-24-3

川さんのミッションとは

中川 私はもともと津の大門出身です。
東京でサラリーマンをしていて、春にこちらに来ました。
私としては戻ってきたという気持ちなのですが、友だちからは「なんで飛び越して尾鷲に行くんや」と怒られました(笑)。
いきなり津に帰ってきて仕事をするのは大変かと思いました。
その点尾鷲はダイビングで何度か来たことがあるので、町の雰囲気もわかっていたし、サイズ的にも手頃かなと。
東京にいると、三重県の知名度が低いんですよ。
お伊勢さんは知っていても、三重県だと知らないとか。
なので、三重県をもっと売り出せると面白いかなと。
せっかく地元で何かするのだったら、外にアピールするような仕事に繋げられればと思っていました。
『梶賀のあぶり』という、とてもはっきりしたテーマがあって、これを売り出せたら尾鷲や梶賀が注目してもらえるのではと、3年間、これでがんばってやってみようかなと。
それでいろいろ経験を積んだら、もっと『あぶり』を売っていってもいいし、他の三重県の産品を外に売り出すための勉強にもなると思い、梶賀に来ました。
『梶賀のあぶり』はその姿も目を引くものがあり、みなさん細々と作っていますが、やりようでは、もっと外に出ていくのではと、思うところがありまして。
浅田さんがデザインで行くように、私はプロモーションでやらせてもらえるので、やり甲斐があります。
『地域おこし協力隊』になる前に、商品は見せてもらっていました。
『絶対に美味しい』という作り手の誇りも感じられる、いい商品だなと感じました。
物はしっかりあるし、気持ちも込もっているし、あとはやり方次第というか、良いテーマだと思いました。

 

12-24-5

元ノ家が10月にオープン

浅田 梶賀町は180人と登記されていますが、実際はそこまでいなくて150人くらい。
コンビニも含め、ものを買う場所がまったくないんです。
梶賀の中でお金を使おうと思うと、2〜3の自販機、もしくは『あぶり』を買うしかなくて。
それもあって町に1ヶ所、住民の方々がゆっくりできて、お話をしたりコーヒーを飲んだり、ちょっと食べたりできる『茶屋』みたいなのを作りたいと思っていました。
さらに僕らの事務所も兼ねられるような場所があれば良いなと。
僕が最初にこちらに来た時に、いろいろな空き家を見せてもらって探していたところ、梶賀の中で一番大きくて立派な家がありました。
昔、梶賀大敷という定置網で網を持っていた人、いうなれば社長さんのような人が住んでいた家が空き家になっていたんです。
あまりの立派さとカッコよさに一目惚れしてしまって、ここでやりたい!と。
で、そこをいろいろ改修しながらはじめたのが、10月にオープンした『網元ノ家』です。
今、そこでは定食ではありませんが『あぶり』を食べられ、町の人が来てもらえるよう、コーヒーやぜんざいをお出ししています。
一番は物販として『あぶり』を購入できる場所だということです。
梶賀の中で誰でもいつでも『あぶり』を買える場所ということをメインにしています。

今まで、町の中でコーヒーを飲んだりして落ち着ける場所がなかったので、文化として根付いていないなと感じることがありました。
集まる場所といったら、誰かの家のガレージで、そこに椅子がポンポンと置いてあって、前を通りかかった人がすっと入る・・・そういう感じの文化しかなかったようなので、最初はなかなか苦労しました。
オープンして1ヶ月ちょっと、ようやく町の人も「コーヒーをゆっくり飲む時間ってけっこういいんやな」と。
週に2日オープンしていますが、気に入った人は2日とも来てくれるようになり、町の人がちょっとずつ『網元ノ家』を受け入れてくれてきているのを感じますね。

 

12-24-4

ぶりへの想い

中川 初めてあぶりを食べたのは、こちらに来てから。
袋を開けたときの、煙の香りがふわっと鼻に抜けるのがとても良かったです。
魚で燻しているものってあまりないし、魚ごとにそれぞれ味が違うんですよ。
味付けは塩だけなので、魚そのものの味が楽しめるのも良いなと思いました。
一番最初に食べたのは、鯖を一匹丸々開いたもの。
好きな薬味を付けて味の変化を楽しめるのもいいですね。
ポン酢とか、お酒に合わせるならマヨネーズと七味とか。

浅田 僕は面接を受けた日におみやげに買って帰って、その夜に食べました。
僕も鯖の開きだったと思います。
もともと燻製は好きなんですが、調味液みたいなものに漬けている味のイメージだったので、本当の燻製の香りと魚の旨味を最大限に活かした『あぶり』を食べたとき、衝撃が受けました。
これは絶対売れるわ!なんでもっと出せへんのやろ!
・・・と、その時は安直に考えていたんですけど。
見た目や売り出し方をちゃんとしたら、素材的には最高だと確信しました。
中川さんも言っていましたが、素材の味がすごい出ているので、味付けは塩だけなのに、魚種を変えるだけで全然違うんですよ
魚が持っている脂の旨味や、魚そのものが持っている味、風味、そういうのを180%、いや200%味わうことのできる、素材を生かした製法なんです。
あぶりがホントに大好きで、これをお金にしたいとか、そういう思いだけでなく、あぶりがスゴイ美味しくて大好きなんです!
語れば番組が終わってしまうくらい(笑)。

 

12-24-6

人だからできること

中川 同じことをしていても興味を持つ範囲が違うんですね。
例えば同じイベントに行っていても、感じることが全然違うというか。
Facebookの発信の仕方も違うし、それに反応する人の種類も違うので、2人で活動しているから単純に2倍になるのではなく、何乗にもなるような形で活動できていると思います。
広がるし、教えてもらうことも多いです。

浅田 本当に中川さんがいてくれないと、ここまでは。
もし僕1人だったら、本当に好きなことばっかりしてちっとも前に進んでいないだろうなと。
中川さんが淡々と進めてくれるんで。
中川さんがやってくれるからこそ、自分がしていることが生きていると思いますし、とても助かっています。
自分が正直やりたくないと思うような苦手な分野も、ガンガンやってくれる。中川さんと一緒にやれているからこそ、尾鷲市内にも梶賀のことが広まっているし、梶賀のあぶりもグイグイ来ているのだと感じます。