FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年2月4日放送

今回のお客様は書道家、飯田祥光さん。
伊勢市内にある教室では、百人一首を書いたり、凧に干支の酉の絵や今年の抱負を書いたりとそれぞれに楽しみながら書道に触れられているようです。
どのようにしたらいい字がかけるかな?
飯田先生にご指導いただきましょう。

道を始めたきっかけ

小さい頃、たくさんの生徒さんがいる教室で書道を習っていたところ、幼稚園の子が教室に入ってきました。
座る場所がないので私が場所を空けて、小学校2年生なりの知識で、自分が分かる範囲の指導をしたんです。
帰る時にその子がとてもいい笑顔だったのを見て、その時に、将来書道の指導をしようと。
今もみなさんが書いているところや笑顔が見たくて、書道を続けています。

 

手とうまいは違う

文字というのは線の集合体。
一つ一つが変化のある線を習って集まったら、いいものが書けるし感動するものができる・・・そういう技術的なものだと私は思って、書道を続けています。
線をうまく書く。
上手とうまくは違って、うまく書く。
そういう書き方をみんなに指導しています。
『上手』というのは、見た目がとても綺麗でスゴイなということ。
しかし残るものがない。
『うまい』というのは、線がやっぱり生きていると感じるもの。
そういう物を創作するのが『うまい』ということ。
だいたいはみな、上手の方に向いてきて、キレイに書けないから諦めてしまいますが、それは違うと思います。

 

まいに魅かれる

ビックリするのは、小さな子が書いたもの。
迫力があってその線に惹かれるということがよくあります。
その子たちは自分の字に満足できていないと言うのだけど、一生懸命書いたという線の素晴らしさには感動させられます。
子どもたち本人は形にこだわって、これはイカンと言ってきますが、私はやっぱり『うまい』というものに惹かれるから直しようがありません。
子どもたちの書く文字には、一生懸命に書くパワーが出ていますから、勝てるわけはないと思っています。
やはり一生懸命書くということがいいんですね。
自分の思った形の良し悪し、型にはまってしまうとどうしようもありません。
形はやっていれば後からできてきます。
最終的には線の組み合わせであって、この線をこう持っていったらうまく書けるとかという問題になってきますから。
うまい線を書く。
それからあとから魅力のある線と形を作ればいいと思います。
みんな人間、簡単なことをしようとはしないんです。
難しいことに挑戦するから。
でも簡単なことが基本なので、それをしっかり勉強して、修練を積んでもらったら、どなたも良い文字がかけると思います。

炭の色や香りで体験してもらうと、また楽しいですよ。
楽しみ方はいろいろあるので、自分の楽しみ方を探してあげるのが指導者の役目だと思います。
そしてうまい人たちは、もっともっと日本の書を伝えてほしいですね。

 

典から学んだことを表現

古典から学び取ったデザインなどを表現することもあります。
自分の持った物を表現するだけであって、あとは見た人がそれをどう感じるかに託すだけだと、私はそう思っています。
私はロゴの制作や似顔絵イラストも描いています。
皇學館大學の学生と三重県の明和町などが行った『日本酒プロジェクト』で完成した『神都の祈り』という日本酒のラベルを書かせていただきました。
皇學館大學からも喜んでもらっていると聞き、これを書いたお酒の瓶をいただきました。
ロゴを書いて実際に看板やラベルになったときの面白さはあります。
私が書いたものは完成品であって、書いたものは自分がすべて納得しているから、デザインのようにたくさん書いてそのうちの1つを選ぶとかではないんです。
一回で書いたものが完成品です。

 

弟子さんたちは貴重な存在

毎日筆を持たないと・・・一日でも持たないと自分でなにか違和感を感じたり。
2日持たないと、他の人たちから変だと思われないだろうかと。
そして3日持たないと全部が変だと自分で思います。
毎日が積み重ねの修練。
子どもたちのお手本を書くために自分でも勉強していますし、子どもたちや弟子がみんな私の先生だと思っています。
書かせてくれるのが嬉しい。
お弟子さんたちは貴重な存在です。
私に筆を持つ機会を与えてくれるのが、お弟子さんですから。
現在は70名ほどのお弟子さんに指導をしています。
生徒さんたちは中学生、高校生、大学生がとても多いですね。

長い付き合いのお弟子さんもいます。
今は大学受験のために休んでいますが、幼稚園から来てもらっている子もいます。
その子は野球のピッチャーをしながら、小さな文字も書きに来る。
頭の切り替えになるのか、とてもうまいです。
大学生でも休みの時に戻ってきて、楽しんでくれます。
そういうのが嬉しいですね。
しばらく筆をもっていなかった生徒さんでも2,3か月の練習で、元に戻ることができるんですよ。
なので遠ざかっていても電話をしたりして、呼びかけをしています。
ぜひとも日本の書をみんなに伝えたいし、続けてもらいたいですし。
夏休みなどにたまに帰ってきてこちらに寄ってくれ、「久々に先生の筆の運びを見た」と言ってくれる子がいるのが嬉しいです。

 

実は飯田先生、NHKで放送されていた真田丸では書道シーンの手元吹き替えを担当していらっしゃいます。
そのときの先生から学ぶことがたくさんあったそうです。

『先生の書いている姿だけでなく、そこまでの道中や会場についてからの姿勢というのが、とても印象を受けました。
なかなか見られないところですし、私自身も書道の部分だけでなく、生活する上でいろいろ取り組んでいかないといけないなという意味で、とても刺激になりました』

――お弟子さんの川畑佑果さん