気負わず、伝統技能を未来へ『辻村表具店』(ゲンキみえ)

三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2017年2月5日

絵や書に布や紙を張ったり継いだりして掛け軸・ふすま・屏風などに加工して保存・鑑賞を目的に仕立てる『表具』
表具職人として研鑽を積んだ『辻村表具店』の辻村さんが、2月10日より静岡で開催される、熟練した技能者がその技を競う『第29回技能グランプリ』の表具部門に三重県代表として出場します!

みなさんは『表具』をご存知ですか?
絵や書などに布や紙を張る、継ぐなどして掛け軸や額、ふすま、障子、屏風を保存・鑑賞を目的に仕立てるもの。
今回は、そんな伝統の技能を磨く、表具の匠をご紹介します。

 

表具師、辻村真一さん41歳。
伊勢市尾上町『辻村表具店』の三代目です。
辻村さんは大学卒業後、21歳で家業を継ぐ形で表具師となりました。

「卒業したら後を継ぐのを条件に、大学で4年間過ごしました。
最初はこの仕事が嫌で、妻と子がいるのに遊んでばかりいました。
しかし組合の若手の子たちがグランプリなどを目指して頑張っているのを見て、自分の中の何かが変わりだしました。
この仕事はとても奥が深いです。
同じものを直しても、表具屋さんによってやり方や手順がまったく違う。
正解のない世界だからこそ面白いですね」

 

表具師の仕事は、書や絵に、布・紙などを貼り、掛け軸・屏風・ついたてなどに仕立てること。
こちらは主に掛け軸に使う反物。
古布や、一反で軽自動車1台分くらいの値段がする布もあるとか!

そして辻村さんが実際に使っている仕事道具。
刷毛だけでもこんなにたくさんのものを使っています。

 

辻村さんが行っているのは、お客さんから預かった掛け軸の修復。
かつてこの掛け軸を手掛けた職人さんの仕事を見ることができ、勉強になるとのこと。
シミは薬品を使って洗います。

 

別の作業場では、辻村さんの奥さん・夏子さんが大型機械を使っての、お土産用の掛軸づくり。

 

さらに古文書の修復作業も。
欠損している部分に、和紙の原料を流し込み補修。
貴重な文献、歴史がつづられた記録を再生しています。

「すべて貴重ですね、日本の宝と思って扱っています。
(辻村さんには)この仕事が好きで天職だと思うので、楽しんでそのまま、奥深い世界を突き詰めていって欲しいです」

と、夏子さん。

 

お昼は、先代のお父さんとお母さんを交え、家族で食卓を囲みます。
辻村さん夫妻は別の場所に暮らしているため、親子が顔を合わせる貴重な時間。

「昔のやり方を押し付けるのではなく、時代の流れや古いものを大切にする考え・・・いろいろあると思うので、黙って見てるしかないですね。
人に聞いたりとか見たりしてくる方が勉強になると思うんで、私は一切言いません」

とお父さん。
辻村さんは「言うやん」と苦笑していますが・・・。

 

実は辻村さんは4年前、さまざまな分野の職人たちが技術を競う『技能グランプリ』の表具部門に出場。
しかし、小さなミスから敗退し、涙を飲みました。
が、今年2月10日、2大会ぶりに県代表として出場することになりました。

 

辻村さんが出場する『表具部門』では、2日間9時間半を使って課題作成に挑戦します。
この日は、技能グランプリに向けての訓練の日。
県表具組合の先輩と後輩を招いて、本番さながらの緊張感で挑みます。

 

「先輩も後輩もみんな同じ位置にいるので、協力しあって1つでも良いものを作り上げることができたらと思っています」

と、先輩の表具師、宮崎祐史さん。

「辻村さんは技術に対する追求がすごいと思います。
70点でもいいかなと思うところを、100点を必ず目指してゆくところ。
技術も道具も考え方も。
そういうところを見習いたいと思っています」

と、後輩の表具師である伊藤定英さん。

 

夕方、学校を終えた辻村さんの子どもたちが従兄弟を連れて作業場に遊びにやってきました。
夫婦で働いているため、いつのまにかこれが日常の風景になったといいます。

 

長男の真太郎さんに、お父さんの仕事について聞いてみました。

「とてもかっこいいと思います。
グランプリは1位でなくても良いけど、できるだけ頑張って欲しいです」

 

「僕が作った掛け軸などは、家業を続けていけば孫やひ孫の代で仕立て直すことになります。
その時に、『じいちゃんこんな仕事しとったらいかんやないか』と言われないよう、そして依頼していただいたお客さんにも喜んでもらえるよう、一生懸命知識と経験を積んでいきたいと思っています」

と、辻村さん。
技能グランプリ、頑張って欲しいですね!