FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年3月25日放送

今日のお客様は桑名の『千羽鶴を広める会』代表の高木文子さん。
会ができたのは、平成14年の1月。
高木さんが、この鶴に出会ったのはもう少し前。

折り紙といえば鶴を折る人も多いでしょう。
その鶴が、1枚の紙から2羽、3羽、最高は97羽。
出会った瞬間、宝物を見つけた!と思ったそうです。

名の伝統文化を小中学生に広めたい

もともと、ものを作るのが大好きな人間でした。
父親が大工で、私も本当は大工になりたかっのですが、当時は女が何を言っているのだと。
モヤモヤしながら結婚して桑名に来て、桑名を知るためにいろいろな講座に参加しようと思った中で、鶴の折り方講座に参加したんです。
そこで折り鶴を知り、その緻密さに病みつきになりました。
1枚の紙でこんなにたくさんの鶴ができるなんてねえ。
それまでは1枚の紙で作った1羽の鶴を、糸でつなぐことしか知りませんでした。
こんなふうに立体的にできるなんて、この技術を残すためになんとかしなきゃと。
いつかこの鶴を桑名の子どもたちに教える機会を持ちたいと、胸に秘めてきたのです。

そして、いろいろな市民活動をするようになって、『桑名の千羽鶴』を提案したところ、やりましょうという話になり、すぐに会員さんが20人ほど集まりました。
嬉しくて、すぐに会を立ち上げ、いろいろなところで桑名の千羽鶴教室を開催したいと、桑名の小学校全部に鶴と紙を持って回ってお願いしに行きました。
桑名の文化を子どもたちに伝えれば、その子どもたちが世界に発信してくれると教育委員会に訴えました。
今も小学校中学校、それから三重県内のイベントにも参加し、全国から集まった方に桑名の千羽鶴を体験してもらっています。
ほんとうに色々なところから依頼が来るようになり、嬉しい悲鳴です。
でもみんな喜んで指導しているため、1人に集中すると怒り出すので、みんなで平均して行ってもらえるようにしています。
本当に良い出会いでした。
この千羽鶴に出会わなかったら私は今、何をしていたんだろうという感じです。

 

災後の東北でとても喜ばれた

『百鶴』と呼ばれる鶴は、一枚から97羽の鶴ができ上がります。
本当はもっともっとできるのかもしれませんね。
これを発案したのは江戸時代、桑名の長円寺住職、魯縞庵・義道と伝えられています。
その鶴の折り方を、友人が本に残したのが『桑名の千羽鶴』と名前が付いています。
なのでそこに載っている49種類以外の鶴は、『桑名の千羽鶴』とは言わないですね、今のところ。
他の地方でもつながった鶴、連鶴をしている方もいると思いますし。

つながっている鶴がこんなに喜んでもらえるんだと思ったのは、震災の後。
ボランティアで被災地に行ったとき、紙を持って行ってみなさんとお話しながら簡単な鶴を折りました。
鶴は昔からおめでたい鳥、瑞鳥として親しまれてきたためか、つながった鶴を教えてあげると、本当に喜んでくださって。
今でも「あなたの声を聴くと元気になるの」と電話をくれるおばあちゃまもいたりします。
今度はいつ来るの?と。
遠いし旅費も大変ですが、こうして元気な声を聞かせてもらうと、行って良かった、鶴をしていて良かったと、うれしく思いますね。
つながっているっていいですよね。
1人じゃないんだよ、という感じで。
鶴がそれを示してくれるのかなと。

 

につけられた名前も素敵

口と口でつながっていて、親鶴が子鶴に口移しで餌をあげている『拾餌(えひろい)』、親鶴が真ん中にいて、両羽に小さな鶴がつながっている『花見車』。
『花見車』は今でもある桑名の『九華公園』にお殿様が車に乗って家来が引っ張っていく様子と言われています。
折り鶴に名前をつけて世に出した人は『東海道名所図会』の編著者、秋里籬島(あきさとりとう)という人。
本来忘れられていくはずのものが、秋里籬島のおかげでこんな素晴らしい文化として残ってくれたのです。
だから私は秋里離島大好き!
大事に大事にしていき、桑名をもっと発信していきたいです。
そんなに難しいのではなくても、4〜5種類知っていたら尊敬されると思いますよ。
子どもたちに教えると、本当にびっくりしてくれます。
実際に自分が折ってみると、納得してくれます。
この素晴らしい文化が埋もれてしまわなくて良かったと思います。
ここから道路をはさんだすぐの場所が、『桑名の千羽鶴』を考えた人のお寺なんですよ。
そこを通るたびに、「ありがとうございます」と心のなかで感謝しています。

 

名は住むのにとってもいい町

桑名は住むにもとっても良い町。
大きな揖斐川があり、涼しく風がありますし。
大きな川が見たくなると私は、揖斐川・長良川を走ります。
まだまだ自然と思えるところがたくさんあるので、良いですね。
お買い物などは名古屋に近いので、都会にふれたいなと思う時は出かけて、活力やエネルギーをもらって帰ってきます。
で、やっぱり住むには桑名だな、と見直して。
名古屋には同級生がたくさんいますが、みんなに「桑名にいらっしゃいよ、空気を吸いにおいでよ」と言いたいくらい。
夏休みに桑名で教室を開催するよと声をかけるたら、男の子も来ました。
来ると、桑名っていいところだなと。
折り鶴も楽しいなと。
その子は地元でお友だちを集めて、折り鶴の教室をしているそうですよ。
桑名の千羽鶴に出会えて、自分のものにもできて・・・お寺が近くにあったことも含め、桑名に来てよかったなと思います。

 

名の折り鶴ができることに感謝

桑名に住んで出会った桑名の千羽鶴は、私にとってかけがえのない宝物。
会ができたとき、鶴を折る和紙をどこから仕入れようと悩んでいたところ、「うちで仕入れようか」と声をかけて下さった眼鏡屋さん。
今でも感謝しています。
遠いところまで行けば買えたでしょうが、桑名の町で和紙を買うことができて、それで本を見て折ってもらえる・・・そして今も一緒に活動をしてくれる仲間がいる・・・これもひとつの財産だと思います。

桑名の千羽鶴は、全国、そして海外にも広まっています。
言葉が通じなくても、和紙一枚でつながることができるんです。