FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年6月17日放送

今回のお客様は『NPO法人はあぶ工房Together』の理事長、そしてハーブインストラクターの坂井真佐子さん。
『はあぶ工房Together』は、心の病、精神に障がいがある方たちと一緒にハーブを無農薬・有機肥料で栽培し、そのハーブを使って商品を作り販売しています。
ハーブ農園を始めたのが今から20年前。
そして自慢のシフォンケーキやハーブティが楽しめるカフェが桑名市陽だまりの丘にオープンしたのが2005年の4月でした。

れからはラベンダーの季節

普通の植物と一緒で、あたたかくなってくる4月頃からジャーマンカモミールやワイルドストロベリーの実ができはじめます。
冬場はローズマリーが薄いブルーの花を咲かせてくれますが、春はミントも出てくるしタイムの花も咲くし、とてもハーブに満たされた季節です。
長年育てていると、その季節ごとに咲くハーブがあるのがわかります。
これからはラベンダーの季節なのでラベンダースティックを作ったり・・・とても良い気候です。

 

ともとは英語を教えたのがきっかけ

『はあぶ工房Together』はNPO法人として普通のカフェとは違う形で運営しています。
現在は障がいのある方5人と雇用関係を結んで、こちらのカフェとお庭でお仕事をしてもらっています。
原点は20年前に遡ります。
最初は、私自身が福祉で、障がいのかる方のために何かをしようと思ったわけではありません。
20年前、私は自宅で英語塾をしていました。
その頃桑名に初めて、精神障がいの方が通う施設ができたんですね。
今まで四日市に通っていた方や自宅待機していた方が桑名に通うようになった中、発病すると同時に高校を中退し入院して調子が良くなり退院してきた青年がいました。
もう一度復学したいということで、英語を教えたのが、精神障がい者と触れ合うきっかけとなりました。
20年前は、身体障がい者が活動する場があり、知的障がい者は保護者が自分の子供を守らなければと、声を上げながら活動していました。
しかし精神障がい者は世の中の偏見が強く、本人たちが施設に通うにしても、近所の人に知られたくないと、遠回りしながら作業所に通うという実情でした。

 

神の障がいを持たれた方が働ける場所を

精神障がいは早い人で小学生ぐらいから、そして社会人になってからと、発病する時期がまちまちで、それまでは普通に日常生活をしていた人たちです。
なのでいずれはまた社会に戻っていきたいと思うのは当然のこと。
しかし日本の社会は時間に追われていたり人間関係が厳しかったりして、現実はなかなか社会に戻ることができないと、精神障がいの方々と関わる中で知ることになりました。
その時にもともと関わっていた人から、ハーブは園芸療法にもなるし日本でも知られて来たので取り入れたらどうだろうと言われました。
そしていずれは作業所ではなく一般社会にあるカフェとしての位置づけでお店を作れないだろうかと言われたのですが、その時はまだ二の足を踏んでいました。
その時に一緒にやろうと手伝ってくれる人がいて、一緒にハーブ園を民間で始めることになりました。
私自身ハーブも園芸も好きで、お庭で育てていたので、それは楽しいことでした。
しかし一緒にしていた人が1年ほどで辞めてしまい、残ったのは私一人。
でもここで私が辞めてしまったたら精神に疾患のある人がどうなってしまうのかと思いました。
これからもここで暮らしていくのですから、この先どこかで彼らと会った時に、自分がやめてしまったことで後ろめたさを感じるだろうと思ったんですね。
私がみなさんとハーブを育てたりすることで、私も生かされて、障がいある方たちも活かされる道があるのであれば、そのほうが長い人生を考えた時に、私自身も幸せなのではと考えました。
そこでそのまま引き続きハーブとかかわりながら『はあぶ工房Together』 を作る意志でやってきて、現在にいたっています。

 

事が推薦してくれたシフォンケーキ

みんなとともにハーブ園を続けていこうと決めるのはとても勇気がいることでした。
でも、様々なことに関われることは幸せなこと。
収穫したハーブを使ってハーブ製品をつくり、『ふわふわシフォンケーキ』を作ってきました。
民家を借りて工房をスタートし、週2日オープンのカフェの運営。
みんな夢である『手作りハーブとシフォンケーキのお店』を作るための資金作りをし、7年の歳月を経て2005年にカフェがオープンしました。

三重県知事が『すごいやんかトーク』というイベントを開催していて、3年半ほど前、桑名で初めての開催場所として『はあぶ工房Together』に来てくださいました。
そのイベントでは、ハーブティーとシフォンケーキをみんなでいただきながらお話し合いをしました。
この時のシフォンケーキがふわふわで美味しかったのを知事が覚えていてくれて、去年の伊勢志摩サミットの『配偶者プログラム』で、昭恵夫人に推薦してくださったんですね。
突然のことでビックリしました。
県の職員さんが内緒でケーキを買いに来られたそうですが、私たちはその時はまだ知りませんでした。
時期的にはさくらのシフォンケーキだったと記憶にあります。
ケーキは外務省に送られ、昭恵夫人が召し上がって、このさくらのシフォンケーキと、ガーデンに咲いていたカモミールを使った、カモミールミルクシフォンケーキを出すことになりました。

 

度みかんを作ってジュースに!

私たちのモットーは、『自然にも人間にもやさしく』ということです。
みかんは農薬を10回ほどかけないと売り物にはならないというのが一般的なんですが、私たちはハーブも無農薬で育てているので、ダメと言われても無農薬でみかんを育てました。
見てくれが悪いため、スーパーなどでは出したりできませんが、やはり安心安全にこだわって作ったみかんです。
そこで最後までこだわったジュースを作ろうと決めました。
伊勢志摩サミットでみかんジュースを出した『夢工房くまの』さんが、皮を絞らず中身だけをぜいたくに絞って使っていると知り、そこでジュースにしてもらうことにしました。
去年11月、声をかけて集まってもらった50名ほどのボランティアさんと1日がかりで2000kgのみかんを収穫しました。
職員が運転できるということで大型トラックをレンタルし、翌朝出発し、熊野まで行ってきました。
すごい距離です。
朝5時に出て、『夢工房くまの』にギリギリの9時に到着。
そこでみかんジュースにしてもらうのを待ち、出来上がったジュースとともに帰って来たのが、夜10時でした。

 

のステップを見据えて

障がいのある方たちが、一人でも多く仕事ができるような環境を作ることが大事だと思います。
施設ではなく、一般社会での事業所を作ることが、私が目指している場所です。
『はあぶ工房Together』を訪れる人は、普通のカフェを楽しむように、ここにやってきます。
このように、施設ではない、開いた社会の中でみなさんが過ごせる場というのはなかなかありません。
私たちは民間でずっとやってきたので、売上がないとお店が回っていきません。最大限できることをして、お店をやってきました。
その形をずっと維持しながら、もう一歩踏み出せる段階に進んでいきたいと考えています。