FM三重「ウィークエンドカフェ」2011年11月19日放送

今回のお客様は、『大台町ふるさと案内人の会』会長 上野進さんです。
大台で生まれ、紀伊長島、尾鷲で育ち、その後は大阪、広島で生活をしていた上野さん。
お母さんの介護のため、ご夫婦で大台町に帰ってきました。
そして今から5年前、『大台町ふるさと案内人の会』が生まれました。
すばらしい景色、ここで生きてきた人たちの歴史、そして熊野古道…。
会のみなさんと町のことを勉強しています。


■大台町の財産を案内

「大台町で何かしよう」って思った時、まず大台町の財産は何だろう…と考えたんです。
お茶という特産品はもちろんありますが、地域的なハンディもありますしね。
その時に気づいたのが「ここの財産は、インターネットで売買できるようなものではないな」と。
今でも矢尻が出土するように、ここには石器時代から人が住んでいたという事実。
それから、北畠一族八代目の北畠具教(とものり)がここで殺害され、戦国大名としての北畠一族が滅んだという歴史。 
そう、歴史が財産なんですよ!
インターネットで「歴史売ってください」って言っても無理でしょ(笑)

それからやはり自然ですね。
日本一の清流・宮川流域91キロの、約2/3の60キロが、大台町を通っているんです。
それらの豊富な自然を利用したエコミュージアム…つまり自然を生きた博物館として捉えまして。
これも財産ですね。

歴史と自然…これがあったら人が来るし、人が来たら交流が生まれ、物も売れる…つまりお茶も売れる(笑)
しかし人を呼ぶには、歴史や地理を知っている人が居ないと。
歴史や地理に詳しく、熊野古道や北畠一族についても、来たお客さんに説明できるような。
それで案内人の必要性を感じ、『大台町ふるさと案内人の会』を作ったんです。



■案内人メンバーは60歳から

メンバーは現在18人です。
そりゃもう、みんな一生懸命ですよ!
自分住んでいるところを、お客さんに知ってもらって、PRしたいんですから。
知らなきゃいかんことがたくさんあるので、本当によく勉強しています。
最近では主婦…というか、女性が増えてきたのも嬉しいですね。

参加年齢は60歳以上限定です。
よく後継者がおらんやら、若い人に入ってきて欲しいとか言いますけどね、そんなもん無理ですよ!
若い人は働いて、子供を養って、マイホーム持って、ローンも払って。
そんな状態で、遊びに来るお客さんの相手をしているヒマなんてありません。
何時までに見学して、何時の列車に乗って…そういうお客さんのニーズに応えなきゃならんのですから。
そういう時間が作れるのは、ちょうど我々、団塊の世代なんです。
退職して退職金ももらって、あと数年したら年金ももらえるし(笑)
退職してすることがなくなって、「何かしたいな」と思った人が(案内人を)するので丁度良いんです。
それに、来るお客さんも、同じくらいの世代の人ですからね。
逆に30代くらいの若いガイドさんじゃ、話が合いませんよ。

退職して、大台町に帰って来て、勉強を始める人もいますしね…ここも捨てたところじゃないです(笑)

■地魂を感じてほしい

まずはこの地に来て、足で踏みしめてほしいですね。
地魂(ちたま)・国魂(くにたま)というか…地域の魂みたいなものは、ここに来なければわかりません。
歴史を味わうためには、本だけではわからないことがたくさんあります。
具教さんがかつて見ていた景色を、今、我々も見ることができるんです。
光徳寺というお寺にある念珠仏に、具教さんは手を合わせていたそうですが、この仏さんも具教さんを見つめていたということですよね。
そう思うと、400年の時を超えて、具教さんとの間に親近感が湧いて来ませんか?
やはり直接足を運ばないと、感じられないことがあるんですよ。



■たまり場づくり!

たまたま商工会の人に、大台町には一級建築士がいないの?かと尋ねたら、呼んで来てくれて。
で、「たまり場を作ってくれ」ってお願いしたんですよ。
それでできたのが、この『大台町ふるさと案内人の会』の事務所にもなっている『喫茶ラ・メール』。
家にいると、あれしろこれしろと色々言われるので、避難しているうちに、事務所になってしまった(笑)
ここは(自分で趣味で撮った)8ミリビデオを見るため、窓閉めてスクリーン下ろしたら楽しめるようにもなっているんですよ。
採算は合っていないけれど、皆がゲンキになれるような拠点づくりが必要でしょう。

そう、最近の60歳は元気なんですよ!
けれど、生きがいのない生き方はつまらないじゃないですか。
だからみんなで集まったり、一人コツコツやったものをみなで持ち寄って、まちかど博物館を開いたり。
でも、最近は忙しくってね。
ここには資料がたくさんあるでしょ。
ここは事務所『大台町ふるさと案内人の会』の事務所であり、『大台俳句会』の事務所でもあり。
他には写真のグループがしょっちゅうやって来るし、集英社の編集長だった方を招いた、小説の『歳月の会』と『宮川村エッセイ塾』なども、不定期ながら今も続いてます。
たまり場を作ることで、地域の文化づくりにも貢献していきたいですね。

ちなみに喫茶店の名前『ラ・メール』はフランス語で『海』のこと。
『海』という字の中には、『母』がいますね。
逆に、フランス語で『母』は、『ラ・メーラ』と言うんです。
今度は『母』の中に『海』がいるんですよ。
ちょっと良いでしょ(笑)