FM三重『ウィークエンドカフェ』2017年7月29日放送

今回のお客様は、尾鷲市にある『特定非営利法人あいあい』の理事長、湯浅しおりさん。
『あいあい』の仕事は、看護、介護事業、ヘルパー養成、児童見守り教室、そして『夢古道おわせ』のレストラン運営。
とにかく声掛けを頂いたことはチャンスと受け止める。
そうして、ずっと一所懸命にやってきました。

快を与えない言葉や印象を心がけて

介護事業を立ち上げようとした時、尾鷲の産婦人科で看護師として働いていました。
産婦人科ですから、何百人もの赤ちゃんが生まれています。
何十年も前に赤ちゃんを産んだお母さんと再会した時、「私が長男を産んだ時に立ち会ってくれた看護師さん?」と覚えていてくれて、「湯浅さんにとっては何百人のベビーでも、私にとっては一生に一舞台の出演者です」と言ってくれました。
これはね、震えるくらい嬉しいというか、気が引き締まりました。
私はそれまで、自分がすごい場面にいるということに、気づいていなかったんです。
でも相手はそうやって覚えてくれている。
このギャップをしっかり身に刻まないといけないということを、今の仕事でも勉強させてもらっています。
一瞬で相手の気持ちをよくさせる接遇、逆に不快な思いを与えてしまう印象・・・気をつけなければいけないと思いました。

 

に有言実行。本当の接遇は何か

「『あいあい』の拠点を建てる!」
・・・と、自分に暗示をかけるように言いました。
嘘をついちゃいけないから、できない時は言わない。
言った時はやるって決めているということも、17年間やってきて、スタッフのみなさんもわかっていて、笑っています。
また何するんだろうね、って。

伊東 6〜7年前、『夢古道おわせ』のバイキング調理のお願いに行ったときも「待っとった!」と。

実は新聞で募集がかかっていたんですよ。
接遇というのは介護でも医療でも、介護する側は強者なんですよね。
患者さんは弱者で、介護は、されている方が遠慮してしまっている中での接遇。
なので本当の接遇ができているのかと、自分自身疑問に思っていたのです。
そんな中、来たのがバイキングの話。
飲食業は本当の接遇です。
美味しくないものを出したら怒られます。
新聞を見たときから気になっていたのですが、普段私が何を言っても絶対反対しないスタッフさんが、冷たく「やめてください」と。
研修にもなると思ったのですが、まあ部類も違うし、たまにはスタッフさんの言うことも聞かないといけないし・・・と、諦めたんですよ。
そうしたら、伊東さんが来るのが見えて。
来たら断れないなと思って、私、ニコニコして待っていたんです。
そして、たまたま伊藤さんが来た時に、障がい者の支援をしたいという方が面接に来ていたんです。
その人にバイキングの話をポロッと言ったら、知り合ったばかりのその人が、やろうと。
結果、その人は障がい者の支援どころか、6年以上ずっと、バイキングの方でがんばってもらっています。

 

を上げない人が損をしてはいけない

実習の時に「あんたはこんなに生ぬるいお湯で身体がふけると思ってるの!」
とか、私にスゴイ熾っていた家政婦さんがいました。
しかし、4月1日に看護師として配属したとたんに、「看護師さん、これからよろしくね」と。
意味がわからなかったんですよ。
もっと怒られるはずなのに、急にみなさん気を使ってくれるようになって・・・。
なんだろう、この白衣の持つ力って・・・と思いました。
そう思いつつもその気持は置いておいて、16年看護師をしてきました。
私は愛想の悪い方ではありませんでしたが、ちょっとのことでもみなさん『優しい看護師さん』と言ってくれました。
しかし介護の世界に入ってみると、ヘルパーさんは裸で勝負しているんですね。
白衣という鎧を着ていないので。
1年ヘルパーさんの仕事をして、本当にビックリしました。
自分がこれまで、白衣の力の上にあぐらをかいていたということを感じました。
でも、それがなければあの医療現場では戦えなかったかもとも思いました。
生身の自分で勝負するということは、とても自分自身を磨き上げていかないといけない。
そういう意味でヘルパーさんをとても尊敬しています。

『あいあい』を始めたころは、時間に遅れても怒られるし早すぎても怒られるし・・・叱られることがたくさんありました。
そして10年ほど経った頃に、スタッフさんの中から、クレームが少なくなったという声が上がったんです。
でも私は違うと思いました。
『あいあい』が大きくなってしまい、圧力になってしまっているのではと。
言いたいことも言えなくなくなってしまっているのではと。
『あいあい』が四畳半からスタートした時は、みんな怒ってくれていたのに。
それから、アンケートを取ったり、何かあったら私の携帯に連絡してもらうようにしたり、声を汲み上げる努力をしてきました。
それでも絶対に隠れているクレームや遠慮があるはずなので、常に意識していなければいけないと思っています。
声を上げる人だけが得してしまうのがこの世の中ですが、声を上げない人たちがどれだけがんばって我慢しているのかを、掬い上げていかないと。
飲食店では「美味しかったですよ」と言ってくれる人もいれば「味を見たの?辛かったわよ」と怒る人もいる。
その日指摘されて食べてみたところ本当に辛くて、慌てて現場に電話したところ、間違えて味の素を2倍入れてしまったと。
あそこで言ってくれなかったら、その日のお客さんは全員二度と来てくれなくなっていたかもしれません。
ちなみに、指摘してくれたお客さんはたった1人でした。
その意見をありがたいと思わないと育たないな、と思いました。
その一件があって以来味見をし続けて、太ってしまったんですけど(笑)。

 

暇がなければ仕事はできないので時間は上手に使う

時間を上手に使うことができないとストレスになりますね。
みなさん、私が夜も朝も寝ないでがんばっているんじゃないかと思っているそうですが、しっかり9時間寝ています。
余暇も楽しむし、それがなければがんばれません。
スタッフにも遊んで遊んで、働いて。
お金がなければ遊べないし。
遊んだエネルギーを仕事に使ってほしいと言っています。
働くばかりだと私でも無理です。
余暇といっても仕事のメンバーと遊ぶので、仕事の話もしますが、それが楽しいんです。
近いところのメンバーは変わっていないですね。
お姉さんも含め週に3〜4回は10人くらいでご飯食べているみたいな。
今日の出来事をわかり合うメンバーというか。
でも決してそれをマイナスに終わらせず、いろいろあったけど最終的に良かった、明日につなげよう・・・ということを心がけています。
疲れて嫌だよね、とはならないように。
正式な会議やミィーティングではないけども、とても濃い情報交換の場ですね。
8人いる理事もほとんどが女性なので、こちらも週に3〜4回ディスカッションしています。
理事会がいらないくらいなんですが、議事録を書く人がいないので(笑)。
私がいろいろな事を提案しすぎるので、みんなが控えていてくれないと、どんどん忘れていってしまう。
「この前、これ、しおりちゃんが言ったセリフね」と言ってもらって、メモ見せてもらってようやく思い出すみたいな。

 

連れ出勤OKの、みんなが助け合える職場! みんながファミリー!

女性が多い職場ですから、職員同士のケアができない人が、利用者さんのケアなんてできないと思うんですよ。
身近な者同士がお互いを支え合い、内容は違えど持っている弱みを理解し合うことが大切。
そしてやはり女性は子育てが大変なので、子育ても丸ごと引き受けようよ、という考えを私は当初から持っています。
なので仕事場は子どもだらけ。
子ども連れで出勤していいですか、なんて聞く人は誰もいません。
なぜならみんな、何も言わずに子ども連れで出勤してくるから。
子どもの声がすると高齢者の方も喜びます。
スタッフも助け合って、自分の子も他の子も面倒見たり、見てもらったり。
巡るような助け合いは必要ですね。
女性は頭が柔らく、時間を上手に使うので、子育て中のお母さんでも時間の隙間を使って仕事ができます。
家のことをして仕事をして・・・とてもがんばってもらっています。
子どもが熱を出したりすることも、みんな通る道ですし。
17年前小さかった子どもたちが、今ではアルバイトにバンバン来てくれています。
自分では17年経ったというのがピンと来ないけど、自分の子やスタッフの子を見ると年数が経ったのを感じますね。
今度はその子どもたちが、ここをどういう風に展開してくれるのか楽しみです。
そのうち孫も生まれるだろうし・・・もう、ファミリーですね。
みんながファミリー。
バイキングもファミリー、あいあいもファミリー、そして地域がファミリーになれば何も揉めずにうまくいくと思います。

私は悩みを抱えてその日を終え、眠ることはしません。
だから明日、悩みを相談したいと言われるのが大嫌いです。
会って話したいからと言われても、電話でもいいから今日言ってくれないと寝られない。
明日は明日の問題があるので、それに備えて今日の問題は今日解決したいんですよ。
忙しいですからね(笑)。
それから、みんなを引っ張っていくには、自分自身がいつも健康でいることが大切です。
だからこそ、食にはこだわりたい。
来年の5月にはセントラルキッチンも完成するんですよ。
とても楽しみです!