第19回「隊長レポート」2011年11月

大きな被害をもたらした台風12号の影響によって熊野古道を中心とした観光客が昨年の2割程度にまで激減しているという。
しかし2011年11月現在、通行できなくなっている道は一部のみで、熊野や紀宝町など被災した地域のみなさんは「どんどん観光に訪れてほしい!」と願っているという!
というわけでサルシカ隊長オクダは、熊野へ向かった!!


三重県の県庁所在地である津からでも、熊野は車で2時間半ほどかかる。
高速が半分ほどしかないせいもあるが、同じ県内とは思えないほど時間がかかる。
しかも今回まず最初に訪ねたのは、熊野からさらに南下した三重県最南端の町である「紀宝町」。

ウミガメがいる道の駅「紀宝町ウミガメ公園」で待ち合わせであった。
その待っていた人物がこちら。



ちゃらい(笑)。
ハッキリ言って「ちゃらい」。

ヒゲボーズのおっさんであるワタクシとツーショットでの取材などあり得るのか。
そもそも大丈夫なのか。
「・・・だっしぃ」とか「つーかさぁ・・・」なんて話されたら、ワタクシは冷静でいられる自信がない(笑)。

が、それはすべて杞憂だったようである。
すでに道の駅に到着し、店内からかけ出してきた青年は、きっぱりと礼儀ただしく、さわやかに日焼けした笑顔であった。

「隊長ですね! テレビやネットで拝見してます! 今日はよろしくお願いします!」

おおお、いいヤツではないか。
しかもワタクシのことを知ってくれているとは! なんと気持のよい青年なのであろう・・・と、先ほどまでの印象などすっかり忘れて、彼の案内によって目的地へ向かうのであった。



案内された場所は一面のみかん畑であった。

こちらは石本果樹園。
紀宝町を代表する果樹園のひとつである。
果樹園の広さは4ヘクタール。
どんな広さか想像がつかないので、青年に聞いてみたら、

「あそこからあそこ! ずっとあっちからあっちまで! 見えるとこ全部です!」

と非常にわかりやすい回答をしてくれた。
すなわちめっちゃ広いのだ(笑)。



石本果樹園では現在、ハウス蜜柑から極早生みかん(マルチ栽培)、完熟みかん、伊予柑、ポンカン、ハウスデコポン、はるみ、清見、三宝柑、カラ、そしてアテモヤ・・・・と、40種類以上のみかんと果実を栽培している。

いまあたり一面にあるのは、早生みかん。
みんながこたつでムキムキして食べる、あのごく一般的なみかんだ。



こちらが「ちゃらくない」青年、石本慶紀さん。

青年と言ってきたが、実はすでに30代。
しかもすでに3人の子どもがいるお父さんでもある。

彼は石本果樹園の3代目社長。
2代目の父、家族、そしてスタッフと共に石本果樹園を守っている。
家業を継ぐことに対しては何の迷いもなかったという。

「私が中学生のときにも台風で紀宝町が大きな被害を受けたんですよ。
 その時、テレビを見たお客さんたちから、お手紙やパンがたくさん届いて・・・。
 こんなに人に愛される仕事をうちはやってるんだ、と感動して、
 もうその時から後を継ぐと決めてました」

その思いはブレることなく、農業を勉強し、そして九州の農園で修行をしたのち、石本農園へ。



石本さんは数多くのメディアで取り上げられている。
それは若くしてみかん農家を継いだから、という理由からだけではない。
自分が暮らす地域、そして仕事にしている農業に危機感を抱き、なんとかしなくてはとさまざまな活動をしているからである。

その取り組みを紹介しよう。
それは6つから構成されている。

1.40種類以上のみかんの生産と販売(これは本業である)。
2.農業青少年クラブ活動(農業の後継者問題に取り組んでいる)
3.道の駅「ウミガメ公園」理事活動(地域ブランドの向上が目的。現在ここの副社長)
4.みえグリーンツーリズム活動(地域連携へのチャレンジ)
5.インターン生との活動(新規事業へのチャレンジ)
6.毎日の作業日記、ブログのUP(情報発信)



取り組みを途中で忘れて、カンペ(商品パンフに取り組みが書かれていた)を見るところが微笑ましい。
しかしまあ本当にパワフルに動いている。
いろいろなことを勉強し、咀嚼して自分のものにし、実践している。
まだまだ手探り状態のものもあるかも知れない。
でも彼なら光の筋を見出していくであろう。
力づくでも(笑)。



今回の取材には、1ヶ月間の体験アルバイト中の柳澤美穂さんも同行してくれた。
美穂さんは、石本さんのブログで石本果樹園を知り、新潟県から1ヶ月の住み込みアルバイトにやってきた。
彼女を決意させた石本果樹園の魅力は何だったのか。

「アメブロ(ブログサービスのひとつ)の農業カテゴリの中で、石本さんのブログはトップ10に入ってるんですよ、全国の中で。その情報発信力はすごいな、と思って・・・」

ブログで新潟から人を呼んでしまうほどの情報発信力。
これはすごい。

石本さんにその秘訣を聞いたら、「1日に4回必ず情報更新すると自分に課してるんです」と。
1日4回はすごい。
なおかつ仕事をしながら、なかなか出来ることではない。



などと感心しつつも、美穂さんに教えてもらいながらみかん狩り。
手に手を添えて・・・。
ワタクシは当然にやけてしまっているが、まあこれは仕方ない(笑)。
そんなワタクシを石本さんは完全に呆れて見ている。



体験アルバイトやインターンシップ生を積極的に受け入れている理由は、新規事業へのチャレンジだけではない石本さんは言う。

「やっぱり何より紀宝町に来てもらって知ってもらいたいんですよ。
 知ってもらうことで次のお客さんにもなってもらえるし、情報も伝えてもらえますし・・・。
 あと農業の楽しさ、やりがいも感じてもらいたいですね。
 農業を取り巻く環境は非常に厳しいけれど、誰かが守っていかなきゃならないので・・・」



石本果樹園は市場に商品を卸すことなく、ほぼすべてが直販。
特に電話やFAX、インターネットでよる全国への発送が、6割を越えるという。
これは情報発信力の賜であろう。

「うちはじいちゃんの頃から直販で勝負してきたので、他のところに比べたらまだまだ厳しさは少ないと思います。
 でも次の展開を考えていかないとやっぱりマズイと思う・・・。
 うちはジュースなどの加工品や、新しいみかんの食べ方、料理などの合わせ方など、新しい提案をどんどんしていきたいなあ、と思っています・・・」

前向き、積極的。
まるでベンチャー企業のような貪欲さ、スピードで突き進んでいる。

しかしこれは非常に重要なことなのかも知れない。



帰りに、石本果樹園のみかん100%のみかんジュース「したづつみかん」をいただいた。
家で飲んだら、まさに石本果樹園でつまみ食いさせてもらったみかんそのままの味がした。
感動的なおいしさ。
一瞬にして子どもにすべて飲まれてしまったけれど(笑)。

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