FM三重「ウィークエンドカフェ」2011年12月3日放送

今回のゲストは、『河村こうじ屋』の河村幸信さん。
紀伊長島で手作りの米こうじ、麦こうじ、お味噌を作っています。
大学を卒業後、栃木県で6年間修行、味噌の研究もしていました
そして地元に帰り、14年。
現在、三代目として頑張っています。
河村さんのお店はこうじの専門店。おいしいこうじをいつも作っています。



■そもそも麹って?

米に麹菌が付いて発酵したものが『麹』です。
つまりカビなんですね。
そう言うと気持ち悪い感じがするんですけど、味噌とか醤油造りに欠かせない存在なんですよ。

作り方は、まずお米を一晩水に浸します。
翌朝にそのお米を蒸して、人肌ぐらいまで冷ましたところに、麹菌をまんべんなく振りかけます。
これを『もろぶた』という蓋のない木の箱に盛り込み、湿気のある部屋で足掛け3日、だいたい40~48時間発酵させます。
熱を発してくるので、広げたり冷ましたり…生き物なので昼夜問わず、つきっきりです。
時間がずれてくると、休みもなくなります。
何と言っても生き物ですから。

良い麹は真っ白でふわふわで、栗のような香りがするんです。
そして、握った時にちょっと柔らかい感じ。
可愛いんですよ(笑)



■尾鷲では変わったお味噌を使っている?

小麦の麹なんです。
大学卒業後に味噌の会社で働いていたのに、実家に帰ってくるまで全く知りませんでした。
恥ずかしいです(苦笑)
これは紀伊長島…特に尾鷲に多いんですが、小麦の麹は全国的に珍しいらしいです。
本当に全国でもポツポツとしか見られないそうで。
そもそも小麦は醤油の原料なので、お味噌も醤油に近い味がするのが特徴です。

なので、尾鷲は麦みそと言えば小麦の味噌…地元の人は特に、ちょっと早い「麹臭い」香りのする味噌汁を好むので、それ用の味噌も作っています。
いわば『尾鷲バージョン』ですね(笑)
他にも「こういう配合で作って」と言ってもらえたら、オーダーメイドで、ご希望に合わせて作りますよ。

河村家ですか?
ウチは味噌屋なので、いろいろな味噌を合わせています。
ちょっとした贅沢ですね(笑)



■『麹』を使った食品について教えてください!

最近話題となっている『塩麹』。
これは自分でも作れるんですよ。
麹に塩と水を入れて、一週間、毎日毎日一回かき混ぜるだけで完成です。
簡単でしょ?
この『塩麹』は、塩が入っているので塩気と、それから麹の甘み…さらに酵素が入っているので良いですよ!
鶏肉・牛肉・豚肉・野菜・干物、何にでも合います。
鶏肉を半日漬けるだけでしっかり甘みと旨みが染みこむので、焼くだけで十分美味しくなります。
この甘味は砂糖の甘味ではなく、自然の甘みですから、素材の味をしっかり出してくれるんです。

それから、これから寒くなるとシーズンを迎える『甘酒』。
実は昔は、夏に飲むものだったって知っていますか?
俳句の季語も、甘酒は『夏』なんですよ。

江戸時代に、体力を回復するために飲まれていたのが『甘酒』。
夏に、今と違って、冷たくして飲んでいたんです。
今でも『飲む点滴』と言われているんですよ。
それだけ滋養があるんです。
来年の夏は、是非、冷たく冷やした甘酒を飲んでみてください。



■味噌作りで食育?

今、朝ごはんを食べない家庭が、たくさんあるんですよ。
身体のためにも、家庭にとっても、朝ごはんを食べることは大切なんです。
パンでも良いですけど、やはり味噌とお米は本当にバランスが取れているので、是非食べて欲しい。

そんな思いから、今、保育園や小学校で手作り味噌教室を行っています。
やはり『食育』は小さな頃から、ということで、子供さんがまだ小さい、若いお母さんに参加してもらっています。

まず味噌とはなんぞや…ということを知ってもらって。
お味噌作り体験に参加してもらうと、お母さんが本当に愛情を込めて作ってくれるんです。
そのお味噌は美味しいに決まってますよね。

一回味噌作りに参加して、その価値というか食卓の大切さとかを知ってもらえたら、その後は自分で作ってもらってもいいし。
何だったらスーパーで買ってもらっても構いません(笑)
大切なのは朝食をきちんと摂ってもらうことと、食卓を囲む家族の笑顔なんです。

麹をみなさんに知ってもらって、ニコニコしながら家族みんなで食卓を囲んで、美味しいお味噌汁を飲んで…。
そんな風景を広めていけたらな、と日々、思っています。