究極までお腹を減らしてから夕食に臨みたかったので、部屋付きの露天風呂に入ったり、中浴場に入りに行ったり。
予約時間の19:00には、倒れそうなくらいの空腹。
食事は部屋ではなく、ダイニングルームへ。
とはいえ、格子状の壁で区切られていて、プライベートな空間です。
まずは『季節の食前酒』からスタートし、

前菜。
桜長芋木の芽味噌掛け
合鴨ロース
飯々蛸
花丸胡瓜
サーモン小袖寿司
諸子甘露煮
烏賊三度豆黄身焼
雲丹ゼリー寄せ
一寸豆蜜煮
花びら百合根
諸子をここでいただけるとはうれしいです。
どれもクオリティが高く、烏賊の黄身焼はムチムチと身の甘さが際立ち、雲丹のゼリー寄せは、やや甘めの出汁のゼリーに濃い旨味の雲丹。
百合根を蒸して裏ごしし、それをまた花びらの形にした『花びら百合根』は「仕事」を感じました。
ここからの料理に、心が踊ります。


お造り。
中とろに真鯛に、伊勢海老にカンパチ。
口に入れた瞬間、思わず「うおお!」と声を出してしまった中とろ。
いや、もう大とろ状態。しかも脂の香りが良い!
自然な脂の乗りを感じます。
伊勢海老の焼き霜は、ガスの香りがなく、旨味が倍増。
娘は真鯛とカンパチの刺身が気に入ったよう。
彼女も私と同じで、「淡白でありつつ旨味の深い魚」が好きなのです。


清汁仕立。
油目くず叩き
桜豆腐
竹の子椎茸
花びら独活
木の芽
まず、出汁の美味しさにうっとり。
油目(あいなめ)は葛粉がまぶされていて、外側チュルンの身はほっこり。
旬だけあり、身が豊かで甘いです。
竹の子と独活が美味しいのは当たり前で。
何気に、瞠目するほど美味しかったのが、『桜豆腐』。
つまりは卵豆腐なんですが、出汁の味を最小限にして、良質な卵の旨味を強調した味わい。
こんなにおいしい卵豆腐をいただいたのは初めてです。


しかしてここからがメイン。
『黒鮑のバター焼き」。
・・・美味しい・・・。
ダメだ、何なの、この美味しさ。
口に入れて一口噛み締めるなり、あまりの美味しさに笑いが。
「・・・お、美味し・・・ふふ・・・ふふ・・・」
と、不審者になるほど。
バタの風味のする、火が通ったエリンギのような食感の鮑に、肝のソースが!
理性を失ってしまいそうです。
そこにアスパラのホックリとした味わいと、有り得ないほどの旨味と食感の大黒しめじ。
本当に、火が通って旨味が活性化した鮑の実力は、まさに海の王者です。
もっともっと語りたいですが、まだ先があるので。


『目張オランダ煮』
めばる、豆腐、牛蒡、人参、三葉、桜麩、竹の子、木の芽。
『オランダ煮』というのは、南蛮煮かな。
これは地味ながら、どの素材も丁寧に調理されていました。


焼肴の、牛ロース。
季節の野菜一式に白ワインソース。
間違いなく和牛で質の良い肉と脂。
ローストビーフ状のそれがくるくると巻かれていて、肉のミルフィーユ状態。
野菜と一緒にいただくと、脂のこってりと野菜のあっさりシャクシャクが相殺されて、とても食べやすいです!
いや、それ以前に、肉とソース自体も有り得ない美味しさで・・・いろいろ語り尽くせません。


合肴、甘鯛ポテト焼。
帆立オイル焼、蓬麩田楽、蕗辛煮、青唐。
帆立は醤油風味で、身の中心がレア。
絶妙な味わいです。
ポテト焼は、甘鯛のしっとりとした旨味と、ポテトのクリーミーさと舌触りの良い滑らかさ。
脇を飾る『蓬麩田楽』が野の香りが強く、はっとしました。


〆のご飯は、ちりめん山椒に大葉。
お腹がいっぱいなのに、するすると食べられます。
赤出汁はご飯を邪魔しない、軽めの出汁。
それがうれしいです。


最後はベリー系のデザート。
重くなくて口の中がさっぱり、なおかつ『最後にちょっとだけ甘いものが食べたいな』の気持ちを満足させてくれます。
ここはお料理が美味しいのはもちろん、ホスピタリティの高さにも驚かされました。
敷地に足を踏み入れた瞬間からのサービス、客である私たちを喜ばせてくれようとする姿勢。
さらにソムリエさんが夫の知り合いの知り合いという縁もあり、食事に合うワインを細かに見繕ってくれました。
でもこれは、ほかのお客さんでも言えば喜んで相談に乗ってくれると思います。
できることなら、毎年1年に1泊でもいいからここに宿泊し、定宿にできたらうれしいなあ。
・・・なんて全体のまとめ的なことを書きましたが、まだ『夜食編』&『朝食編』へ続きます。
ご馳走様でした[#IMAGE|S58#][#IMAGE|S58#]