FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年1月27日放送

今日のお客様は『NPO法人災害ボランティアネットワーク鈴鹿』の理事長、南部美智代さんです。
NPO法人を立ち上げたのは2002年。
1995年に起こった阪神大震災のときから被災地支援を続けています。
東北へはもう40回以上足を運びました。
熊本地震の時にもすぐに現地へ向かいました。
全国に南部さんを待っている人たちがたくさんにいらっしゃいます。
南部さんが創始者の『縁側サミット』も三重だけでなくいろんな場で・・・。
古い着物を使ってオンリーワンの作品を作っています。

初はスペインで防災講座

一番はじめはスペインで言われて、防災講座をしました。
私はスペイン語なんかわからない。
自慢じゃないけど鈴鹿で生まれてずっとここに住んでいるので、鈴鹿の話はできるけども、スペイン語も英語もドイツ語もわからないし・・・でも防災講座しました。
もちろん通訳さんがつくから、阿吽の呼吸で。
本当に喜んでくれて、ここでも防災講座って成り立つんや!と。
そこの会場で味をしめて、イタリアのミラノでも講座しました。
30分でいいからさせて、ってお願いしてね。

 

側サミットの活動

『縁側サミット』は、地域の主婦たちが縁側に集まり和小物創作に取り組みながら会食と会話を楽しむ活動です。
小さな小さな布でも、お蚕さんが命をかけて紡いだものなので、なんとかきれいにしてあげたいと思い、古着をほぐして作っています。
人の真似をして作ることなら誰でもできると思いますが、私は自分で考えて作るのが好きで、こういうのをしていると認知症予防にもなると思います。
ここに来て作ってくれる人は、手も動かすけど、口も話して笑って使うんです。
でも、何も覚えていない。
それがいいんです。
手を動かしながらおしゃべりしながら、楽しみながら作業をすることで、いろいろな機能を使っている。
しかも完成したものがとても良いものなら嬉しいし。

そして、そこで終わるのならどこでもあると思うの。
でも私はそれを海外で展示しようと思って、海外へ持って行って展示して。
展示したらプレゼントしています。
そうするとより広がるんです。
海外の人は、着物を見たことがない人も多いので、とても喜んでくれます。
古い絹は手触りもよく、さらに喜ばれます。
イタリアにはイタリアの模様があり、ドイツにはドイツの模様がありますよね。
でも私は、作品を展示したあと、自分のものを増やして最後に捨てられるならと、もう潔くあげて、向こうに置いてきちゃうんです。

 

年寄りを元気にしたい

別にこれをしようと思ってした始めたわけではないのですが。
けれど、いっぱいお年寄りがいるので、なんとか元気になってほしいと思い、ここの場所を提供し、ここで何かしようと思いました。
お茶を飲んでお菓子を食べるだけでもいいかなと。
そうしたら本当にお茶を飲んでお菓子を食べるだけで、何も考えないんですね。
しかも縁側から入ってきて、帰りは玄関から帰るので、ウチの草履がなくなってお年寄りの草履がおいたままになっているという状態。
こんなはずじゃなかったのにと思い、来ている人たちに、古い着物を使って何か作らない?と聞いたら、
「もうそんないらへん、大きな着物はもう着やヘンし」
と言われたんです。
その「大きな着物」という言葉に、ピンときました。
大きな着物はあかんのやったら、小さな着物を作ろうと。
それが25年前。
小さな着物を作るという活動が、今も続いています。
亡くなった方の着物はみんな捨てられてしまうでしょ。
それが箱ごと届くので、みんなで残った人たちでほぐして作り上げて、海外で展示してみんなに喜ばれたら嬉しいでしょう。
そういうシステムです。
自分の着物を持ってきてくれた人には思い出もありますし。
それが羽が生えたように世界に飛び立っていったら、楽しいじゃない。
自慢するようなことじゃないけど、着物を作ることは誰でもできるんです。
鈴鹿で墨を作っているのだから、それも世界に発信したいと。
そこでシミがあるところに墨で文字を書いたりすると、着物がまたまったく違う感じに変身するんですね。
そうやってしているときに、着物だけでなく、どこにもないお人形を作ってみようとなって、いらない布で試行錯誤して作ったのが『のうのう人形』。
紀宝町に行ったとき、「困ったのう」「えらいのう」「どうしようかのう」「なんにもできへんのう」・・・みんな「のう」って言うんですよ。
みんな苦しんでいる顔を作って、型紙もなんにもなくて、その場で考えながら、布と綿と墨とで作って。
これがまた楽しくてね。

 

がい者、高齢者など弱者のための防災

今までは健常者のための防災をしていました。
しかし20年経って、私たちは間違っていたのではないかと思い始めました。
多動性障害の子、発達障害の子など、いろいろな子たちのためにどうしたら良いだろう。
どうしたらあの子たちが「うん」と納得してくれるのだろう・・・との思いから防災講座をしようと。
20年前、地図上で避難の状況をシュミレーションする災害イマジネーションゲーム『DIG(Disaster Imagination Game)』を考案しました。
ここ鈴鹿市寺家の街を走り回ってなんとかしようとしたのが『DIG』の発祥。
鈴鹿市のすごい大学が作ったと思われていますがね。
そしてもうDIGはDIGGERで掘り起こしたので、これからは『LODE』やと。
Lは『(Little people)子ども』Oは『(Old people)高齢者』、Dは『(Disabled people)障がいのある』、E『(Evacuation)避難』の頭文字を取って名付けられた新しい災害図上訓練ゲーム。
小さな人も、老いたる人も、障がい抱える人もみんなで避難しよう、みんなで生きていける社会をつくろう。
これが『LODE』です。

しかしこれがまた難しすぎて、何がなにやらわかりません。
そこでやる前に気づいたのは、『手引き』が必要だということ。
あいうえお順に、メモを作りました。
例えば『あ』は、「あの子より少しこの子のほうがマシだと考えたいものである。他人には分からないこその親の欲目が見え隠れする」。
一番最後の『を』は、「を父さんと違う。お父さんと一生懸命口に出しているこの子がいる。俺には『お父さん』と聞こえるぞ」。

という感じで、心の叫びを辞書に作りました。

 

のお雛様

今はお雛様の準備で大忙しです。
鈴鹿の子安観音に飾るお雛様、伊勢や熊野のお雛様も手掛けています。

私はみなさんに何百万円のお雛様をあげることはできないので、今年は貝のお雛様にしようと思いました。
桑名のハマグリを食べて、殻を洗って干して、そこに着物を着せました。
そこで私流で違うことはなんだろうと考え、顔は全部墨で描くことにしました。
全部私が描くんですが、パールセンターの小西さんにお願いして、本物の真珠を1個、中に入れました。

中に真珠が入っているけど、すぐに開けると真珠が化けてガラス玉になってしまうよ、今日も頑張りますとお祈りするときれいな真珠になるよ、と、みんなには言ってます。
何年かたったら開けてな、2つあるのでイヤリングも作れるよって。
・・・そういう話をしているんです。
そうすると、なんでもないお雛様が宝ものになると思いませんか?

すごいお金やいろいろなものがある素晴らしい生活よりも、悔しい思いをしている人たちの財産はすごいなと思います。
災害ボランティアの中で、そんな人たちを養っている人たちは優しいです。
私がどんなにぎゃあぎゃあ言っていても、まあまあ座れと。
落ち着きなさいと(笑)。
ありがたいと思いますね。