FM三重「ウィークエンドカフェ」2011年12月31日放送

今回のお客様は、万協製薬株式会社の松浦信男社長です。
そうそう、あのフィギュアをいっぱい集めている方!
軟膏やかゆみ止め薬などを作っている製薬会社の社長さんです。
神戸にあった会社は、阪神淡路大震災で壊滅的な被害を受けました。
そして、多気町を新たなる場所と選んでから、気づけば16年の月日が流れていました。

■多気町で目指すまちづくり

まちづくりには3つの要素があるんです。
まずは『工業』…これは僕らが行なっている部分で、立地によって産業を活性化して、雇用を増やして住民を増やすというところ。
次に『観光』、これは、外から来る人によって、町を変えていくということです。
そして『商業』ですね。
これは「まちづくり」というところで行政と一緒にね。
久保町長も「多気町を日本一良い町にしたい」と言っています。
じゃあ「良い町」とはどういう町か…それを僕は今、具体的に実証し証明していこうとしているんです。

例えば去年と一昨年は、『美し国おこし三重』との活動で、健康のツーリズムというのを行いました。
さらに現在は、「健康になってもらうために多気町に来てもらう」という趣旨のツアーも計画中です。

それからですね、多気町で是非、フルマラソンの大会を開催したいんですよ。
三重県でフルマラソンが開催されたことはないので、多気町が一番先に!
けれど、僕が目指しているのは、ハードなものではなく、「観光としてのマラソン」です。
タイムを競うのではなく。距離を楽しむ。
中継地点では、相可高校の食物調理科が用意した食事が置かれていてね。
記録を取るか食事を取るかはあなた次第!
やたら熱い豚汁が置いてあったり(笑)

これからは「観光」として多気町に力を注いでいきたいですね。
多気町は観光名所が何もないと言われているんですが、これからは旅の形が変わると思います。
20世紀の観光は「国の光」…つまりその国(地域)の光る部分(名所)を見てきました。
しかし21世紀は「人の光」…自分自身の中にある光を見つけるために旅に出るんです。
旅本来の目的をルネッサンスしたいというか。
あ、難しいこと言っちゃったかな(笑)


■働く人を元気づけ、モチベーションを上げる会社づくり!

会社のテーマはまず第一に、「自分が元気になろう」。次に「自分以外の誰かを元気にしよう」。
そして三番目が「お金を儲けよう」です。
まず、「どうしたら自分の明るさを発揮していけるか」を、会社ぐるみで考えているんです。

けれど日本の企業は多くは、三番目の「儲けよう」が一番に来てしまっていますね。
だから社員のモチベーションが上がらないんじゃないんでしょうか。
会社が「お前の成長なんて待ってられない、今、儲けなければ」という考えじゃ、社員がついていけないでしょ。

ウチの会社では、社員のモチベーションを高めるために、会社ぐるみでイベントを行なっています。
清掃活動しながらマラソンする『ダラソン』。
それから、社員がお互い褒め合う活動。
これは褒めた人も褒められた人も500円ずつもらえる仕組みで、『ホメラニアン活動』って呼んでいます。
人はみなホメラリアン(笑)。
両方に500円ずつというのは、「(褒めた方に)良く褒めたね」「(褒められた方に)良いことをしたね」

という気持ちから。
お互いに「ありがとう」といえる環境を作っていくのが大切なんですよ。

普通の企業は、まず成果を求めますよね。
例えば、人間性が悪い営業マンでも成果を上げれば高く買う、みたいな。
でも僕は、そういうのは嫌いなんです。
「成果は皆で出せばいいじゃないか。大事なのは、働いている人を元気づける方」というのがウチの考え。
だからウチの会社には、営業部がないんです。
みんなで一緒にお客さんの意見を聞いて解決する。コンサルティングセールス。
特定の人だけがスターになるような仕組みは、作りたくありませんね。


■阪神大震災で大きく変わったこと

地震の前の僕は、こう見えてもおとなしい人間だったんです(笑)。
3週間前に擦った車のキズを気にするような、ホントにネチネチとした「餅のような男」でした。

でも、地震で全て壊れた時に、「どれだけ自分が考えてもその通りに行かない」ということに気付かされて。
それからは、できるだけダイナミックな選択をしていこうと。

それに何と言うか…私の人生が阪神大震災を超えたからといっただけで、誰かに興味を持ってもらうことはないだろうと思い、あえて、今まで選択しなかったような選択ばかりをしてみた。
全く違う場所で再起業したのもその一つですね。

今があるのは、むちゃくちゃを続けてきて16年間、それでも潰れなかっただけです。
それならもっと新しい要素を取り入れることによって、会社も人生も、よりアクティブにできるのではないかな、と常に考えています。
人生は一度しかないですからね。
自分の場合は地震で一回死にかけて、命を拾ったようなものなので、その後の人生は「オプショナルツアー」だと思っているんです。
だから、どんどんやっていなかったことをやって、そのライブ感覚で次の日を生きています。
「これ、もしこうしなかったら、こうなってなかったやんか」の連続…つまり偶然のハプニングを必然に変えていく毎日です(笑)


■プチコミファミリー制度

4年くらい前、入社した社員の3年以内の辞職率が十数%に上がったことがあるんです。
勤めるからには長く勤めて欲しいですよね、僕としても。
なので辞める人にアンケートをとってみたところ、「社内に相談できる人がいない」というのが多かったんです。
同僚や先輩には、プライベートなことなどは相談しにくかったんですね。
そこで、多部署から社員を集めてきて、長く勤めている人を長男長女にして、年代も部署も違うグループを4人1組で作ってみました。
これが『プチコミファミリー制度』です。
会社がお金を出すから、ファミリーみんなでご飯食べといで、コンパ行っておいで…と。
最近ではそのファミリーで、社内旅行に行くようにまでなりました。
毎年1回1週間の休暇と一人10万円で、旅行に行ってきて下さい、と。

僕の裏テーマはですね、『家に帰りたくない会社』なんですよ(笑)
だから社内には、色々なクラブがあります。
キックボクシング部、総合格闘技部、卓球部、ギター部、ブリザーブドフラワー部…。
会社がお金を出すので、仕事の後も会社で楽しんで下さいと。
楽しくて楽しくて仕方なくて、家に帰りたくない…そんな会社があったら最高でしょう!

日本の多くの会社では、楽しくないのが当たり前、上司に文句言われても「お金もらってんだから楽しいわけない」というのが多いけど、サービスを受ける側からすると、どうですか?
そういう人たちからサービスを受けても楽しくないでしょ?
だから僕は、社員をすごく大事にしています。
逆に、会社から大事にされていない社員が、お客様を大事にするでしょうか…ということも考えちゃいますね。


■フィギュアと会社の再生を重ねあわせて

もともとフィギュアが大好きで、昔からコレクションをしていました。
けれど、震災に遭ってコレクションも全て失って、もう集めるのはやめようと思っていたんです。
それから三重県に来て…。
たまたまリサイクルショップに行ったら、自分がなくしたおもちゃが売っていたんです。
思わず買いました。
そして、「もう一度集め直すってこともアリだよね」と、思って。
会社の再生とコレクションの再生を、同時に始めることにしました。
16年でコレクションが増えて会社も大きくなって、両方ともどんどん場所がなくなって。
とうとう単独のフィギュア館も建設しました。
年間1,000人くらいの見学者がいらっしゃいます。
みなさんも、是非一度、ご来館下さい(笑)