三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2018年6月3日

病気やケガなど様々な理由により、食べることや飲み込むことがうまくできなくなってしまう摂食嚥下障害を持つ人が、外食や外出を楽しむことができるようにと活動している『つばめスプーンプロジェクト』!
食べることをサポートするあらゆる分野の人が手を取り合い、情報誌の発行や、食べやすい嚥下食のレシピをネットで公開。オリジナル支援グッズの開発、販売もおこなっています!

みなさんは『摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)』という言葉を聞いたことはありますか。
怪我や病気、加齢などさまざまな理由によって、食べたり飲み込んだりすることが難しくなる障害のことをいいます。
今回は、そんな摂食嚥下障害がある方々のサポートをしようと取り組む『つばめスプーンプロジェクト』の活動をご紹介します。

 

『つばめスプーンプロジェクト』代表の新谷麻衣さんに、活動内容をお聞きしました。

「摂食嚥下障害という言葉を聞くと、医療や福祉などの閉ざされた専門的な分野と捉えられがちなんですが、『つばめスプーンプロジェクト』では、おいしいものを届けるさまざまな立場の人に個々に関わってもらい、障害のことについても知ってもらって、摂食嚥下障害を持つ人が、外食や外出を楽しむことができるよう幅広くサポートしてもらう、異業種合同プロジェクトです」

 

実際に嚥下障害を持つお子さんとお母さんからの評判が良いという、三重県総合文化センター内の『Cotti菜』。
『つばめスプーンプロジェクト』でもおすすめの、障がい者のみなさんが働くカフェ・レストランです。
なんといってもこちらの人気は、障がい者のみなさんがつくっている新鮮、安心のこだわり野菜。
オープン間もない頃、ゲンキみえでも紹介させていただきました。

 

こちらは週替り定食を刻んだものと、ペースト対応した『Cotti菜カレー』。

 

「ひと口に『刻み』と言っても、一口大でいい方もいれば、もっと細かく何ミリ角という方もいます。
刻みの大きさや、ペーストの具合もほんとに粒がなくなるまで完全に裏ごししたものか、単純にペーストだけでいいのかなどを、おいしく召し上がってもらいたいので、できるだけ事前に詳しくお聞きするようにしています。

と、『Cotti菜』総責任者の豊田悦子さん。

「みんなと一緒にテーブルを囲んで、素敵な空間の中でみんなと同じものをおいしく食べる・・・それを実践してもらっているのが、本当にありがたいです」

と、新谷さん。

 

『つばめスプーンプロジェクト』では、摂食嚥下障害の人がもっと外食や外出を楽しめるようにと、『つばめ手帖』を制作して無料配布中。
食べやすい嚥下食に対応してくれるお店の情報などを発信しています。
津市役所や県立図書館他で無料配布中で、現在、さらに設置場所を募集中です。
しかし、まだ理解を示してくれるお店が少ないのが現状だそうです。

「実際にやってもらっている所があることを、こうしてみなさんに見てもらえれば、どんどん輪が広がり、お家でしか食事を取れていなかった人が、どんどん外出される世の中になってくると思います。
そうすると、もっともっとニーズが高まってくるのではないでしょうか」

と、新谷さん。

 

続いて、案内してもらったのは、津市高茶屋にある『b-Café』。
保育士が運営する、ゼロ歳からみんなで楽しめるお店で、今回つばめ手帳の発行を機に協力を申し出てくれました。

「うちの店は『0歳からのみんなのカフェ』なので、、そういう要望があったときに対応できるのならしたいという思いがありました。
ただ、摂食嚥下障害は聞いたことはあっても実際どういう形でしたらいいのかわからないので、教えてもらえるとありがたいです」

と、店主の河村隆太さん。

 

ここで新谷さんが取り出したのは『Eazy2Swallow』と名付けられた表。
注文する人と調理する人がわかりやすいように、食べ物のきざみや、ミキサー加工の固さや状態などを、5段階に分類しています。

 

表を参考に、実際のメニューを使って実践。
切り干し大根ですね。
刻み食は、普段小さいお子さんに出しているのでお手のもの。

「お子さんの年齢によって、このままで食べられる子はこのままで、離乳食が終わったくらいの子は、もうちょっと細かく刻んで出すようにしています」

 

続いてミキサー食に挑戦です。
食材が固くて細かいなどでミキサーがかかりにくい場合は、水分(だし汁)やごはんを入れるとの、新谷さんからのアドバイス。
舌でつぶせるほどのペースト状になりましたが、味は美味しい切り干し大根のまま!
これならば、みなさんと一緒のもの食べている感覚になりそうですね。

 

こちらも新谷さんおすすめのとろみ剤が入ったお水。
とろみ剤とは、食べ物や飲み物に加えて混ぜることで、温度に関係なく適度なとろみをつけ、食べ物や飲み物を飲み込みやすくするもの。
嚥下障害の人たちは、おでんやお味噌汁、すべての液体の料理にこれらを使っています。

「そんなに手間がかかるものではないので、具体的に手順を示してもらったらすぐに対応できると思います」

と、河村さん。

 

こうした食べやすく、飲み込みやすく、そしておいしい料理の調理法はインターネットでも公開中。
誰でも無料で見ることができるようになっています。

 

また、『つばめスプーンプロジェクト』では、オリジナルの支援グッズの開発・販売にも取り組んでいました。
それがこちらの『つばめスタイ』。
シャツのような感覚で、おしゃれに身に着けてもらえるよう、生地やデザインにこだわったスタイです。
赤ちゃん用のスタイはよく販売されていますが、大きくなった子どもたちのためのスタイはなかなかありませんでした。
おしゃれをして外食を楽しめるように、との思いから作られた商品です。

 

実際に大人が着ても、ほぼ違和感がありません。
しかも食べこぼしを受けられるよう、ポケット付き。
ツルツルな素材ではなく布なので、自然な感じで付けることができます。

「当事者の方の声と、飲食業のお店の声を聞けるので、その橋渡し役を、一番自分たちがやるべきことだなと思って動いています。
あそこに行っておいしかったよ、ここに行って嬉しかったよというみなさんの声や、実際お料理を提供して、ペロリとたいらげてもらい嬉しかったっていう声をどんどん届けてることで、うちもやってみよう、うちも出かけてみようっていうふうに、みなさんの輪が広がっていくことを目指して、がんばっていきたいなと思っています」

と、新谷さん。
飲食店のみなさん、『つばめスプーンプロジェクト』の輪に入ってみませんか。