三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2018年6月10日

組子の技術を継承し伝える『指勘建具工芸』の黒田裕次さんと黒田之男さん親子。
組子とは、クギを使わずに木を組み付ける技術のことで、室町時代の書院造りと共に発展され、窓や障子などの建具や欄間の格子などにほどこされる日本の伝統技法。
指勘建具工芸は、昭和7年に創業。二代目となる之男さんは「現代の名工」にも選ばれている職人で、「後光組」「六法転」といった独自の意匠を手掛けてきました!
息子であり三代目の裕次さんは、組子の技術を使って、さまざまな商品開発に取り組み、平成27年のイタリア・ミラノ国際博覧会の日本館に出店、平成28年の伊勢志摩サミットでは、アウトリーチ会合参加国の首脳などへの贈呈品として、指勘建具工芸が製作した組子入り文箱が採用されるなど新しい展開をし、また、組子を知ってもらう取り組みを行っています!

まるで万華鏡のような多面的な広がりは、差し込む光によって幻想的な影を映し出します。
小さな木片を組み合わせ、繊細な意匠を生み出す組子の技術。
ひとつの建具に10万個以上の木片が使われることもあるそうです。
室町時代、書院造りとともに発展したといわれる日本の伝統技法で、釘を使わず、木を組み付け意匠をほどこします。
1本の材木から、わずか1.5mmの木片に切り分け、切込みやほぞを施して組み合わせていくのです。

 

組子職人、黒田裕次さん。
『指勘(さしかん)建具工芸』の三代目。
二代目の父親である之男さんのもとで修業し、組子職人として伝統を受け継いでいます。

「小さい頃から父親の背中を見ていて、とても楽しそうにしてるのが一番印象に残ってます。
その姿を見て、自分もやってみたいと思い、継ごうと決意しました」

黒田さんは建具展示会などで、内閣総理大臣賞・三重県知事賞など数々の受賞歴を持っています。

 

伊勢志摩サミットでは、アウトリーチ会合参加国の贈呈品として、黒田さんが製作した『輪つなぎ』という吉祥文様で組み上げた文箱が採用されました。

 

菰野町にある『指勘建具工芸』の工房では、組子の技術、魅力を多くの人に知ってもらおうと、切り込みやほぞを入れた木片パーツを事前につくり、誰にでもつくれるようにキット化。
工房やイベントなどで、子どもたちに体験してもらっています。

 

およそ20分ほどで、36のパーツを使った桜亀甲のコースターが完成!

 

続いて、黒田さんのご自宅に移動。
組子のありったけの技術を駆使した作品を見せていただきました。
こちらは父親の之男さん考案の『光輪』。
『矢車後光組』という、独自の技法を使っています。

 

『白鷺城』は、姫路城を組子で描いた大作。
10万個以上の組子で作成しています。
現在の姫路城は屋根が白いですが、以前は黒かったため、この色に。
その屋根の色は、天然の木材の色。
地中に千年ほど埋まっていて掘り起こされた『神代杉』を使用しています。

 

こちらの作品は大小の輪を木製チェーンでつなぎ、自転車の車輪のように連動させたもの。
そう、動いているんです!
中心の位置が少しでもずれて、一個でも狂うと全て回らないという繊細な技術です。
黒田さんの自宅は、まちかど博物館として毎月第3土曜日に開館。
見学やキット製作体験などを行うことができます(見学要予約・キット製作体験有料)。

 

工房での組子づくりは木材のカットからはじまります。
使うのは年輪がしっかり詰まったヒノキや杉など。
節やクセのあるものは使えません。
どんどん細かく、そして正確にカットしていきます。
わずかな狂いも許されません。

 

黒田さんの父、之男さん。
現代の名工、ミエマイスターの称号を持つ二代目です。

「0.1mmでもずれていたらはまりません。
0.00いくつの世界です。
骨組みはすべて同じ木で作っています。
一緒でないと、だんだんと色が変わってきてしまうんですね」

 

腕を競い合うふたりの匠。
親子の作品は、2015年のミラノ国際博覧会にも出展。
繊細な意匠は世界の多くの人々から称賛されました。

 

「息子も組子職人となって20年ほど経ち、私の技術はもうすべて、手に入れたと思います。
安心して看板を引き渡すことができます。
私の時代は仕事さえしていれば良かったですが、今はそうもいきません。
しかし息子がいろいろ取り組んで、私以上にもうやっていってくれると思います」

と、之男さん。

「現状は木製の建具がはまる家が減っています。
建具をはめられる家が増えて行くのが一番良いのですが、今は、自分たちが組子を使って何ができるのかを考えています。
文箱やランプシェードなど・・・個々のお客さんからいろいろな提案をいただき、自分がどこまでできるのかを試していくうちに、展望が開けてくるのではないでしょうか。
最後はやはり4本ならびの建具はまるような場所に、自分の技術を詰め込めるような機会が得られれば、とても幸せだと思います」

と、裕次さん。

組子の伝統を三代にわたって伝える・・・。
独創性を奮い立たせ、革新を追求しています。

みなさんも組子の繊細さ、魅力を目の当たりにしてみませんか。
『まちかど博物館』は毎月第3土曜日に開館、要予約です!