FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年8月25日放送

今回は四日市で味噌、醤油の醸造をされている『伊勢蔵』の式井康裕さんがお客様です。
伊勢蔵の創業は大正3年、式井さんは4代目。
伊勢蔵の蔵では、大きな樽が並び、甘く濃厚な匂いが漂っています。
100年以上たった今も代々伝わる製法を守り、丁寧に味噌を作り続けています。
そして素材の旨みを引きだした香り豊かな味噌が店頭に並びます。

最近では、お客様の好みが少しずつ変わってきました。
伝統の味を守りつつ、お客様の声を反映させながら味噌、醤油を作っています。

客様の要望に合わせて種類が増えている

だんだんお客さんの要望に合わせて、種類が増えてきています。
もともとは『蔵の華』が最初。
米麹を少しと豆麹が主力。
うち独自の、一番古くから作っている味噌です。
やはり、赤味噌や豆味噌が、この四日市は多いですね。
愛知県と同じような感覚だと思います。
普通は豆味噌と言うと、豆と塩だけですが、うちの場合は、米麹を少し入れる・・・さらにもう少し入れる・・・と、米麹を入れることによって、味の幅やまろやかさ、甘みなどを出して芳醇な味にしています。
これがうちの特徴です。

 

代のニーズに応えて新しい商品を開発!

味や色も薄くなってきていると思います。
醤油に於いても味噌に於いても、少しずつ薄くなっていく流れだろうと思います。
私の代になり、ちょっと色の薄い、白味噌ではありませんが豆味噌の中で白味噌に近いような商品を出しました。
新商品開発はチャレンジですが、お客さんのニーズも多様になり、関東などと人の行き来もある時代です。
地元の味だけではなく、さまざまな味に目を向けていったほうが良いのではと考えると、新しい商品が増えていくという形になります。
しかし、量り売り用にカップに入れたり袋に入れたりして陳列しておくと、「量り売りはないの?」と声がかかります。
朝詰めたてのをがあるよと言っても、量り売りが良いと言われるので、店ではカップなどに入れて置いたりはせず、お客さんが来てからその場で詰めて袋に入れるという昔ながらの売り方を、今もしています。

 

麦と大豆の配分を変えて白醤油を作っている

白醤油は材料の味を殺さず、色も味も引き立てます。
それから出汁の味も引き立てます。
醤油自身は濃厚な味もなく色も薄いということで、自分自身は強調せず、相手の素材を引き立たせるという食材ですね。
特徴は小麦が9割で、大豆が1割ということ。
濃口は大豆と小麦が半々。
たまりは大豆が9割で小麦が1割。
ということで白醤油はたまりの真逆の感じですね。
おうどんの汁、吸い物、卵焼き、茶碗蒸し、中華飯・・・色がつかないような料理にいろいろ使ってもらえると思います。

 

噌と醤油作りは、生き物を育てているのと同じ

色の濃いのは1年、ちょっと浅いのは8ヶ月。
たまりですと1年〜1年半。
白醤油だと4ヶ月。
仕込んでから1年とか1年半先に、出来上がるんですね。
新しい試みをした場合は、それくらい先にならないと結果がわからないということ。
ちょっと変えてみたいなとなると、また1年〜1年半先でないとできてこない。
1つのサイクルにとても時間がかかるので、新しいものに挑戦しようとすると年月がかかる商品です。
気長な人間でないとできない商売ですね。
このところとても暑いので、発酵具合がとても気になります。
発酵自体はいつもの年よりも活発で旺盛ですが、必ずしも美味しいものができるということではないかもしれないので、一生懸命発酵具合を見ながら、考えながら進めているところです。
天然で作っていると、麹のほうがよく知っている時があるんですね。
例えば夏がいっとき涼しくなったりすると、秋が来たと麹が勘違いして発酵を止めてしまう。
8月なのに発酵を止めてしまった年もありました。
ですから、今年はとても暑いので、どうなるかは醪(もろみ)を見ながらやっていかないといけないです。

発酵は旺盛なので、美味しい味噌や醤油ができるとありがたいですね。