FM三重『ウィークエンドカフェ』2018年12月1日

松阪で伝統野菜の1つ『松阪赤菜』を作っている『紅工房』の杉山喜代子さんがお客様。
松阪赤菜は、日野菜の原種とも言われていて、根も葉も赤いのが特徴です。
松阪で作られるようになったのは今から400年ほど前。
一時期、生産が途絶えてしまったのですが、それを復活させたのが杉山さんです。

統野菜とは知らずJAの人に勧められて作った

今から16年前、伝統野菜と知らずに、JAの方から「これは漬物にいい野菜だよ」と言われて作り始めたのが『松阪赤菜』。
40年間も誰も作っていなかったそうです。
寒い冬だから芽が出るかなと心配しましたがハウスに撒いた上に、その年は暖冬だったんです。
なので、真っ赤な足を揃えて出ていたときには、なんの野菜かと思ってビックリしました。
甘いし、ピリッと辛いので、大根おろしみたいにしても美味しいですよ。
色が綺麗なところに惚れました。
12月になってくると本当にきれいな赤になってきます。
芯の方も赤が通って、すりおろしてもだんだん色が濃くなってくる、不思議な野菜です。
大根のような辛味とシャキシャキした食感が特徴の松阪赤菜、大根部分を細く短冊にしてドレッシングをかけて食べても美味しいし、もみじおろしみたいにするときれいなピンクになります。
ピリッと辛くておかかとお醤油をかけて食べると美味しいし、私たちは正月の頃になると、その中にお餅を入れます。
これもまた美味しいです

 

うやく『松阪赤菜』もの名前が知れ渡ってきた

『松阪赤菜』がようやく少しずつ人に知られてきたかな、という感じ。
ここまで長かったです。
1年目は畳3畳分くらいにパラパラっと蒔いてしまって。
あ、これは大根のように蒔かないといけないなとわかり、条蒔きというか間隔を取って蒔くようになりました。
安定して作ることができるようになるまで、4〜5年かかりましたね。
雨に叩かれてダメになった年、早く蒔きすぎてダメになった年・・・難しいです。
これは冬の野菜で、遅いほうが作りやすい。
しかし、野菜のない時期にほしいなと思い蒔くと、すぐに出てきてくれるんです。
でも、弱いは弱いです。
在来種なので、生えるには生えるんですけど・・・難しいは難しいです。
はじめは1人で、そのあと4〜5人参加してきて、さらに8人来てくれて、だんだんに増えて、現在は13人ほどのメンバーがいます
変わった野菜なので、1人で作ったらもったいないと思い、仲間を呼びました。
そうしたら、私も作る、私も作ると近所の人が一緒に作ってくれるようになり、翌年『紅工房』を発足しました。

 

物が最初の加工品、そのほかのメニューがなかなかヒットしないのが悩み

漬物に合う野菜ということではじめたので、最初は漬物を作りました。
これは生でもいけるし、なんでもできる野菜だと気づき、開発をはじめたのが2〜3年前。
餃子に入れたりもしました。
赤菜を入れて炊くと、おはぎに薄紫というかピンクというか、きれいな色がご飯に付きます。
何か良いものを作れたらいいのですが、なかなか思いつきません。
紅工房の若いメンバーは、お焼きにしたことがあるそうです。
でもあまりヒットしなくってね。
漬物も最初の頃は漬けても捨てて漬けても捨てて・・・でしたが、今は足りないくらい。
漬けたら漬けた分だけ売れるようになりました。
自分も知らなかったし、知らない人が多いんです。
それでも、昔はけっこう有名だったのかな、「これや、この野菜や」と喜んでくれる人がたくさんいました。
あとは昔使っていたという肉屋さん『牛銀』さんでも樽で買ってもらえるようになりました。
松阪赤菜は細かく刻むほど美味しく、ちょっと硬いのですが、料理屋さんの手にかかると一層美味しくなるんですね。
懐かしくって買い求めてくれる人も多いです。
可愛いというか、我が子のように可愛いです。

 

生氏郷が松阪で作らせようと持ってきた

松阪赤菜は天正16年、つまり400年以上前、蒲生氏郷が近江国から持ってきたと言われています。
作る人も連れてきたと。
蒲生氏郷のおじいさんが、山でこのきれいな野菜を見つけ、引っこ抜いて滋賀県で育てていて、蒲生氏郷に持たせたそうです。
日野城から持ってきたということで、松阪の古いところでは『日野菜』とも呼ばれています。
松阪には400年以上前に近江から越してきた商人がいますから、その頃一気に広まったのだと思います。
本居宣長さんの『家事記録』にも『日野菜』として出てきているそうです。
その頃は呼び方がまちまちで、松阪の市民は自分のところにしかないものとして『松阪赤菜』と呼んだそうです。
他の野菜はもっと形が揃っていますが、松阪赤菜は形が揃っていないのが不思議です。
みんな違うんですね。
松阪赤菜の復活と漬物づくり、がんばってきて良かったなと思います。
そしてまだまだ良いことがあるかもしれないと思いながらやっています。