FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年5月11日

今回のお客様は、伊勢市にある『小西萬金丹本舗』の小西治さん。
お伊勢参りの旅道中には欠かせないものとして愛用された萬金丹。
現在は健康維持食品として販売されています。
昔からずっと多くの人々に愛用されています。
外宮さんの近くにある『小西萬金丹』の現在の建物は、明治の初めに江戸時代のものを再現して作られたもの。
『まちかど博物館』として、屋内を見学することもできますよ。

宮の近く、八日市場は立派な家が多い

『小西萬金丹本舗』は創業1676年、江戸時代の四代将軍の頃からになります。
私で16代目。
学校がちょうど外宮さんの横にあったので、始業のベルが鳴ってから家を出ても間に合いました。
前の宇仁田呉服店さんも古いですし、横の歯医者さんも斜め前の家も・・・。
終戦まで焼け残ったので古い家が並び、なかなか良い感じの通りになっていますね。
上品な通りにも見えます。
昔からの家があるので静観な感じがしますね。
私たちの前の家だけで10軒くらいありますので、掃除するのも腰を痛めるくらい大変なんですよ。
2〜3年前に文化庁の有形文化財の指定を受けまして、観光客にも建築の愛好家にも見てもらっています。
宮大工さんが設計した切妻造りの建物で、明治の初期に建ててもらいました。
古くなっていますので、毎年屋根を直したり内装を直したり、経費がかかって、維持が大変ですね。

 

金丹は土産として買ってもらっていた

当初はここの場所で萬金丹の製造と販売を行っていましたが、現在は販売だけで、製造は薬屋さんに依頼しています。
江戸時代の頃は薬自体があまりなかったので、参拝客がお土産のように買っていて、売上も多かったと思います。
店舗もあちこちに出して、四日市や江戸の方にも出していたようです。
伊賀や草津、近江などにも出店を設け、たいそう繁盛していたようです。
今も全国から郵送で送ってほしいという人もいますので、ほそぼそとやっています。
一応、お客さんもたくさんいるので、私の代でも続けさせてもらっています。
昔から飲んでいる方は、子どもさんの代やお孫さんの代になってもずっと続けて飲んでくれています。
16代前の人が、堺市まで行って薬の勉強をして、秘法を受け継いで、こちらで販売したようですね。
京都や江戸で出店を設けるのは大変だと思います。
初代から二代、三代で各地に店を作るまでに広げたらしいですね。
三代目の清聿(きよのぶ)という人が、かなり広めたと聞いています。

 

計や石臼など当時の珍しいものが今も残されている

現在は『まちかど博物館』として建物を見ることもできます。
珍しいものも多く、当時の華やかな雰囲気が伝わってきます。
萬金丹の製造道具など、古いものがいろいろ残されています。
薬研とか、江戸時代の「子丑寅卯辰巳・・・」で表示されている時計、温度計、石臼・・・古いものがたくさん置いてあります。
それから出始めた頃の写真、当時の従業員が着物姿で写っている写真など、珍しいのではないでしょうか。
当時は時計が珍しく、時間を尋ねにこの家まで来る人がいたと聞いています。
伊勢市辺りの昔の方はみな、萬金丹を知っていましたが、最近の若い方はわからないかもしれませんね。
もともと漢方薬なので、副作用のない自然の材料を使った薬です。
今は漢方薬ではなく、『健康維持食品』として販売させてもらっています。

 

っていこうという責任感がようやく湧いた

最近の時代は、僕らのお袋とおばあさんが中心になってやっていました。
それからはうちの姉とその夫が中心にやっていまして、その後、私が定年になって勤めをやめてから後を継ぎ、10年ほどになります。
私が元気な間は続けたいと思っていますが、一言で言うと『難しい』ですね。
続けてきた歴史が350年近くあるので、続けていかないといかんという意識もありますが、プレッシャーは嫌だなという思いもあります。
これを続けていて、経済的にはどうかなとも思います。
若い時分は歴史など興味ありませんでしたから、親を見て「面倒くさいことをやっているな」と思う気持ちもありましたが、良いところもあるので、元気なうちは続けていかないと・・・という気持ちも芽生えてきました。

建物が好きな方、昔の物が好きな方も見えますし、萬金丹も好きという方もいますので、その方たちの思いを汲んで続けていくようにがんばります。