FM三重『ウィークエンドカフェ』2019年6月29日放送

青山高原の裾野、津市白山町。
水田の青は美しく、日本の原風景が残る場所です。
ここに森の劇場、津市白山総合文化センターがあります。
今回のお客様は、『森の劇場プロジェクト』の代表、長野多恵さん。
子どもと親と地域に暮らす皆さんで作りだす舞台。
明日、初日を迎えます。

しい公共施設の活用法を考える

公共施設の活用の仕方が問題になっていました。
津市は大きな市なので、これからできる劇場も含め、4つも施設があり、それを市民のために活用できないかという市の考え、そこに私が長年舞台活動をしてきたという流れがありました。
「試す」ということで、白山総合文化センターを使って、何かができるのかできないのかということから始まったのが『森の劇場プロジェクト』。
『こども里山そうぞう学校』というのがメインになっている活動で、感じる、考える、伝えることを6か月のプログラムで楽しみます。
自然体験とたくさんの芸術体験、地域の人たちとたくさん触れ合う体験、そして最後にそれまでインプットしてきたものを今度はアウトプットして、表現活動として発表する場を持つ。
知らない人の前で自分はどう思うのか・・・と、半年間かけてやってきたことを外に出してみるという体験が舞台発表になります。

 

ども里山そうぞう学校に決まり事がほとんどない

『こども里山そうぞう学校』は今の時代的には非常識かもしれません。
挨拶もしてもしなくてもいいし、休憩時間もないし、やってもやらなくてもいい・・・決まり事がほとんどないんです。
集まってきた子どもたちは、最初は混沌としています。
ギクシャクしていますが、同じ空気の中にいるという体験の中で、徐々に自然になにか関係性ができていきます。
最後の発表は、みんなで協力しなければ実現しません。
1ヶ月ぐらいたつと自然に挨拶ができてきたり、自然に仲間関係ができてきたりするのが見えるんです。
自然に生まれてくることって、こんなにも気持ちよく感じが良いものなのだなと思います。
来年も頑張ろうとか、力になるわけです。
『こども里山そうぞう学校』に行くと、ハキハキみんなの前でしっかり話せる子を育てる・・・と勘違いしている人がいます。
別に市小さな声でしか話せなくてもいいんです。
みんなの前で話すのが苦手でも全然いいんです。
いろいろな人がいるから良いのだし、ずっと付き合っていると『言いたいことがない』という子はいないのがわかります。
小さな声でも、自分で選んだ言葉を使って表現できたときは、とっても伝わるんですよね。
いろいろな経験を積む子は積むとは思いますが、家の中でゲームをしてもそんなに寂しくないので、子どもたちがちょっと偏っているのかもしれないと思います。
家庭で一生懸命子どもを見ても、今という時代がいろいろな経験をさせられない、ちょっと厳しい時代に来ているのではないでしょうか。
学校は学校で一生懸命していますが、時間が取れないというか。
『こども里山そうぞう学校』の中でその時間が取れたら・・・待つとか感じるとか考えるとか・・・一緒に見られたらいいなあと思います。
その中でポツポツ、花が咲いたり、種が芽を出す瞬間に触れているので、私はとても希望を感じています。

 

人もやりたいと思うプログラム

このプログラムを作ったとき、そこにいた大人がみんな「自分もやりたい!」となったんです。
ということは子どもたちにもいいんだなと。
今の時代の流れで、その時にしなきゃいけないこと・・・ある意味、怪我してほしいと思っているんです。
転んだり、田んぼの中で転げまわって汚れたり、虫を踏み潰しちゃったり、お友達と意見が合わないとか・・・混ぜこぜにしていろいろな体験をしてもらうことが、楽しく生きるとか、なりたい自分になることへと繋がっていくのではないかと。
今、文化政策も変わってきていて、地域に生かされる『地域包摂』という言葉が出てきています。
その中に『全てをひっくるめて地域の人に必要な場所にする』ということが挙げられています。
『こども里山そうぞう学校』を始めて感じるのは、来る子どもたち、その保護者、関わる私達、それを取り巻く地域たち・・・輪が広がっているというか、これまでだったら絶対会わなかったであろう人間が、その文化施設を通して出会っているんですね。
普通、大人だと知らない者同士で、急に協力して何かをするのはとても難しいことだと思いますが、子どもを介すると幸せになってほしいとの気持ちが出てくるんですね。
よくわからないけど、いい大人になってくれ、幸せになってくれ・・・と、おじいちゃんやおばあちゃんも願ってくれて。
その時は大人たちも、何も気にせずに仲間になれて、人間の輪が広がって来ているというのは嬉しいですね。
こういうことを繋げていって、これからの劇場ができていくのかなと思っています。

 

の劇場プロジェクトは舞台を作っているのと似ている

プロジェクトはもちろん楽しいことばかりではありませんが、舞台を作るのに似ています。
最後、緞帳が降りる頃・・・『こども里山そうぞう学校』は12月に閉校するのですが、その「じゃあね、元気でね」という時に、いろいろな苦労も帳消しになるというか、半年の中で、子どもと大人が一緒に問題を解決したり乗り越えたりした実体験が次の喜びになるのかな、と。
大人同士が今、その振り返りができているのが、とても心強いというか誇らしい。
今までの仕事ではなかった感情ですね。
子どもは、楽しく生きる力を育む
大人は、再生する
この便利な世の中で、肉体的にも精神的にも危なくて、何かに依存していることにも気づかない。
それがこの実体験のなかで気づき、「あ、まずいな」と大人がしっかりして、今何ができるかを考えないと。
そういうことにたくさん出くわして、大人も子どもも、未来を見る勉強をしている感じがあります。

なにか好きなことに出会うと、全員天才だなと思います。
なかなかそれに気づくことや出会うことはできないかもしれませんが、もし出会って努力することができたら、みんな天才になります。