三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2019年12月8日

津市を中心に活動する一閑張り作家・マチノヤヨイさんは、琴の演奏家として活動する中で、和雑貨でもある一閑張りに出会い、衝撃を受けて独学で一閑張りを体得!
一閑張りとは、竹や木で編んだカゴなどに和紙を貼り重ね、柿渋や漆で整えたモノのことで、江戸時代からの伝統工芸でもある。
マチノさんは、カゴだけでなく、呉服店『きものひろば』の店主奥田さんの協力も受けながら、一閑張りの新しい可能性を求めて、様々な作品を製作しています!

津市久居烏木町の『きものひろば』という呉服屋さんで、ものを大切にする気持ちから生まれた日本の伝統工芸品が展示販売されていると聞き、やってきました。

「おそらくそれは『一閑張り』のことですね」

と、店主の奥田浩明さん。

 

こちらがその一閑張りで作られた作品。
竹や木で編んだカゴなどに和紙を貼り重ね、柿渋や漆で整えた一閑張り。
やぶれたカゴを補修・補強するために用いられた技法で物を大切にする日本の心が生んだ日本の伝統工芸です。
江戸時代に遠く明から亡命した飛来一閑(ひき・いっかん)が伝え広めた技術なので、一閑張りと呼ばれるようになったという説もあるようです。

 

数少ない一閑張りの作家、マチノヤヨイさん。
マチノさんはもともと琴の奏者で、和雑貨と触れ合うことが多かったそう。

「伊賀では陶器市に行った際、和雑貨なども販売している中に『一閑張り』が置いてありました。
その頃はまだ一閑張りを知りませんでしたが、手にとったときにとても軽くて衝撃を受けたんです。
それで虜になってしまい、作っては剥がし、作っては剥がして、いろんな試行錯誤しながら作ることができるようになりました」

 

マチノヤヨイさんの自宅兼工房。
ある展示会で一閑張りに出会ったマチノさんは、独学で技法を学び、自分のスタイルを確立。
個展や展示会を開くまでになりました。
ちなみに、作業場のふすまも一閑張り。
見事な装飾が施されています。

 

「白に柿渋を塗った茶色い作品が多かったのですが、洋装にも合わせたかったので青い和紙、赤い和紙、緑の和紙に、柿渋を塗って作品を作っています」

と、マチノさん。

 

マチノさんに作品を紹介してもらいました。
まずはこちらのバッグ。
とても軽いんです!
和紙に着物の生地が張られているのが特徴。
和服にも洋服にも似合います。

 

こちらは緑の和紙に鳥獣戯画のうさぎ。
思いきり、和テイストですね!

「なんか空き瓶に水入れて、その一輪挿しみたいな形で飾って頂いてもよろしいですね」

と、マチノさん。
時間がたつにつれてもっともっと濃い色になっていくそうです。

 

『きものひろば』の奥田さんと相談して製作した下駄の一閑張り。
強度がある一閑張りなのでもちろん実用も可能です。
そして帯かざり。
マチノさんは、常識にとらわれず、一閑張りの可能性をさらに広げようとしています。

 

一閑張りの製作は下張りから。

「隠れてしまうところなんですが、一番気を使うところなんです。
網目に沿ってしっかり張っていかないとあとから柿渋を塗ったときにピンと張りますので、浮いてきてしまうんですね」

カゴに塗っているのは、天然のりを水で薄めたもの。
丁寧に塗りつけ、そこに和紙を貼っていきます。

 

下張りが終わると一旦乾燥。
風通しのよいところで、1日ほど乾燥させます。

 

続いては本張りの作業。
しっかりと乾いた下張りの上にまたのりを塗り、今度は見せるための和紙を貼っていきます。

 

本張りを終えたらさらに1日乾燥。最後に柿渋を塗って仕上げます。
和紙を貼り重ねたことで丈夫になりますが、柿渋を塗ることで、さらに防水・防腐・防虫効果が生まれます。
さらに一閑張りは、農閑期に作業していたからという説や、一貫(3.75kg)の重さでも耐えられるほど丈夫なことから『一貫張り』と表記する所もあるそうです。
軽くてとても強い、伝えていきたい技法です。

 

柿渋を塗ったらまた乾燥。
手間と時間を惜しみなくかけてつくりあげるのが一閑張り。
伝統の技術を実用的に、そしておしゃれに、今の時代に生かしていきたいとマチノさんは考えています。

「モットーは『和魂洋才』。
和の魂に洋風の才・・・洋風を勉強するけど、和の魂も大切にするという四字熟語です。
その気持で『一閑張り』を続けていきたいですね」

と、マチノさん。
マチノさんが生み出す一閑張りの世界。
その魅力に触れてみたい方はウェブサイトへどうぞ。