三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2020年3月1日放送

『伊勢あさくさ海苔保存会』は、幻の海苔とも言われる三重県産のアサクサノリを『伊勢あさくさ海苔』として養殖に取り組み、三重県や県漁連、三重大学・企業の支援を受けて独自ブランドを確立!

アサクサノリは昭和30年代までは日本の食卓にあがる海苔だった。
しかし、環境の変化や育てるのが難しいことから違う種類の海苔に変わった。
現在では、環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅰ類に指定されている。
三重県では平成23年に自生しているアサクサノリを採取、平成25年から養殖を開始!
2年前の平成29年には国内での最高価格で競り落とされるなどした 『伊勢あさくさ海苔』
『伊勢あさくさ海苔』の紹介と、アサクサノリが出来るまでの2年間に密着!
アサクサノリの種付けから張り込みを経て、摘採作業となるが、その出来はどうだったのか・・・?
3回連続で紹介します!

みなさんは『アサクサノリ』をご存知ですか?
実は『アサクサノリ』は商品名ではなく、海苔の種類なんです。

 

というわけで、訪ねて来たのは、松阪市の『のり流通センター』。
そこにある海苔テラスは、三重県産の海苔や海藻類が食べることができ、お値打ちに購入できるところ。
海苔の風味を味わえるおにぎりランチも人気です。

 

こちらが『伊勢あさくさ海苔』。
なんと5枚入りで970円!
強気なお値段ですね。
このアサクサノリ、非常に養殖が難しく、そのため希少価値の高い商品となっているとのこと。

 

昭和30年ごろまで、日本の食卓で食べられる海苔といえば、アサクサノリのことでした。
しかし、アサクサノリは環境の変化、病気に弱く、いまでは絶滅危惧種に。
平成23年、県内で自生しているアサクサノリが発見され、採取保存。
平成25年から一部漁場において養殖がはじめられました。

 

まずは『アサクサノリ』と普段食べている『スサビノリ』を試食。
スサビノリは食べ慣れた、馴染みのある味。
対してアサクサノリは、香りと味が強いです!
甘みが強く、味がついているのかと思うくらいです。

 

そんな幻のアサクサノリを復活させよう。
三重の新たな海のブランドとして売り出していこう、と取り組んでいるのが、「伊勢あさくさ海苔保存会」のみなさん。
県漁連、三重県、三重大学、そして企業からの支援も受けて、養殖技術や品質管理を確立させてようとしています。

アサクサノリの養殖は9月末頃、こちらの「種付」からはじまります。
11月に入って海水温度が十分に冷えたら、種付された網を「張込」。
12月末から1月初旬に、育った海苔を「摘採(てきさい)」、収穫します。
その後、加工、検査、分析を経てようやく販売。

その長い道のりを2年にわたって取材しました。

 

2018年、『伊勢あさくさ海苔保存会』会長であり、『伊曽島漁業協同組合』組合長の服部茂さんにお話をうかがいました。

「枚数も徐々に増えてますし、アサクサノリの性質をいろいろ聞いて、全員で取り組んだ結果、安定供給に近づいている状態だと思っております。
去年一昨年と特に枚数が増えてきて、昨年度は34万枚。
『伊勢あさくさ海苔保存会は』平成29年度全国青年・女性漁業者交流大会で、漁業経営改善部門の最高賞である農林水産大臣賞を受賞し、会員も自信を得たと思います」

 

こちらはおととし、2018年9月の種付の様子です。
前年まで増加してきたアサクサノリの生産量、そして農林水産省大臣賞受賞を受けて、保存会の会員の期待は高まるばかり。
さらなる飛躍をめざして作業をつづけていました。

 

海苔の種は培養プールで育てられます。
水槽の胞子が貝殻に潜り込み、糸状に生長したところで種付しているのです。

「アサクサノリは最初何もわからなくて、で、まあとりあえずやってみるかぐらいの気持ちではじめた始めたのですが、たまたま成功したため、それから苦労はしたんですけども、今やっとちょっとつかみかけています。
今年も、漁師さんに頑張ってもらいたいと思いますね」

と、『伊曽島漁業協同組合』培養研究技師の豊永秀樹さん。

 

種付の途中、網の一部を切り取ります。
それを培養研究技師の豊永さんのもとへ。
海苔の種が網にちゃんと付いているか、顕微鏡でチェックします。

赤く光って見えるのがアサクサノリの種。
しっかりと付着しているようです。

 

種付を終えた網は、プールの中で広げて寝かせます。
こうすることで、のりの種がさらにしっかりと網に付着するそうです。
そしてアサクサノリの種をしっかりとまとった網は、冷凍庫で保管。
海水温度が19度以下になるタイミングをじっと待ちます。

 

11月下旬、水温が下がり、種付された網を漁場に張込むときがきました。
浅瀬に広がる海苔の養殖場で、張込がはじまりました。
アサクサノリの種が定着した網を海へ流していきます。
潮に流されないよう、海から突き出た竿に網をくくりつけます。

 

「張込は水温がやっぱり平均20度以下か、19度以下になってからですね。
あまり早くから暖かいうちに張ると、やっぱり獲れません。
あんまり早いとプランクトンがうじゃうじゃいるし、ま、よろしいんじゃないかな。
今日はええ日と違う?また獲れるんじゃない?」

と、『伊曽島漁業協同組合』の横井元司さん。

が、しかし、この期待は大きく裏切られました。

 

2018年12月末がすぎ、翌2019年1月初旬を超えてもアサクサノリは育たず、ほぼ全滅状態でした。

 

なぜアサクサノリは育たなかったのでしょうか。
専門家である『三重県水産研究所 鈴鹿水産研究室』主査研究員岩出将英さんの意見をお聞きしました。

「アサクサノリは潮の満ち引きによってあの海水の中に浸かったり、一時的に外気に触れたりということを繰り返しながら成長していくわけなんです。
昨年度は異常潮位と言って潮位変動が安定していなかかったため、網の管理が非常に難しかったということが、桑名地区の不作になってしまった経緯の一つだという風に我々では考えています」

そして昨年2019年。
県、漁連などの関係者が集まり、さまざまな対策を検討、実施。
のぞみをかけて種付をし、張込をしました。

果たしてアサクサノリは復活するのか。
3回連続で追っていきます!