三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2020年3月8日放送

『伊勢あさくさ海苔保存会』は、幻の海苔とも言われる三重県産のアサクサノリを『伊勢あさくさ海苔』として養殖に取り組み、三重県や県漁連、三重大学・企業の支援を受けて独自ブランドを確立!
アサクサノリは昭和30年代までは日本の食卓にあがる海苔だった。
しかし、環境の変化や育てるのが難しいことから違う種類の海苔に変わった。
現在では、環境省レッドデータブックで絶滅危惧Ⅰ類に指定されている。
三重県では平成23年に自生しているアサクサノリを採取、平成25年から養殖を開始!
2年前の平成29年には国内での最高価格で競り落とされるなどした 『伊勢あさくさ海苔』
『伊勢あさくさ海苔』の紹介と、アサクサノリが出来るまでの2年間に密着!
アサクサノリの種付けから張り込みを経て、摘採作業となるが、その出来はどうだったのか・・・?
3回連続放送の第2回めです!

昭和30年ごろまで、日本の食卓で食べられる海苔といえば、アサクサノリのことでした。
しかしアサクサノリは環境の変化、病気に弱く、いまでは絶滅危惧種に。
平成23年、県内で自生しているアサクサノリが発見され、採取保存。
平成25年から一部漁場において養殖がはじめられました。

 

そんな幻のアサクサノリを復活させ、三重の新たな海のブランドとして売り出していこう、と取り組んできたのが、『伊勢あさくさ海苔保存会』のみなさん。
県漁連、三重県、三重大学、そして企業の支援を受けて、収穫量を伸ばしてきました。
しかし・・・
昨年、まさかの全滅。

 

そんな中、対策を重ね、今シーズンの収穫時期を迎えました。
午前4時。
桑名市伊曽島漁港。

「去年は最悪でしたすが、今年は、その前年度までくらいの状況で収穫できると思います」

と、『伊勢あさくさ海苔保存会』会長であり、『伊曽島漁業協同組合』組合長の服部茂さん。

昨年アサクサノリが全滅した原因。
それは、潮の満ち引きが不安定になる異常潮位が要因の一つと言われています。どれだけ対策を練っても、自然の力にはなすすべがありません。

 

冷たい雨が落ちる中、アサクサノリの収穫がはじまりました。
スサビといわれる一般的なノリは数回収穫できますが、アサクサノリは1回のみ。
慎重に、残すことなく収穫していきます。

 

「今年は、ここの漁場のアサクサノリを張っている人は、もう全然いないんですよ。
それでも少しだけまだこの漁場で収穫量が伸びたので、まだ良い方だと思います。
質も、乾燥してみないとわかりませんが、多分良いと思います」

と、『伊曽島漁業協同組合』の伊藤敏雄さん。

 

アサクサノリとホッとした安堵の気持ちを乗せて、船が港に戻ります。
しかしこれで終わりではありません。
これから休むことなく加工へと移ります。

 

まず加工場で行われるのは、洗浄。
大きな機械でノリを撹拌し、ゴミなどを取り除きます。

 

丁寧に洗浄を繰り返し、大きな異物を取り除いたら、今度は屋内の機械でさらに洗浄。
徹底的に異物を取り除きます。

 

不純物がなくなったら、それを伸ばして乾燥。
大きな機械にかけるまえに、一枚だけつくってテストします。
厚さと重さ、水の含有量がノリの味を左右します。
狙った数字に近づけるよう、なんども機械を調整して試します。

 

調整が終わり、大型の機械が動きはじめます。
すだれの上に一枚分ずつのノリが置かれ、そのまま温風乾燥。
完全オートメーションです。

 

収穫からわずか5時間。
乾燥を終えたアサクサノリが出来上がってきました。

 

2年ぶりに復活したアサクサノリ。
最後は人の手で一枚一枚確認し、小さな異物まで取り除きます。

9月末の種付から、網の張込。
そして極寒の中での収穫と、徹底した品質管理。
この手間ひまが、アサクサノリのブランドを築いていくのです。

 

加工を終えたアサクサノリは、名古屋にある協力企業のラボに運ばれ、DNA検査を受けます。

 

なぜ検査、分析が必要なのかを、プロジェクトに参加している三重大学大学院生物資源学研究科の柿沼誠教授にお聞きしました。

「アサクサノリとスサビノリは基本的に同一の漁場を使って養殖されているんです。
アサクサノリの漁場にスサビノリの漁場から胞子というものが流れ着いて付着してしまうことがあるのですが、天然の海で養殖しているとそういう現象が起こるので、まあ100%のアサクサノリというのはできません。
そこで、混入率を検査して品質を確保していくためにDNA検査が必要となっています。
私もこの研究に携わるようになって、初めてアサクサノリを食べたのですが、今市場に出回っているスサビノリの製品と比べると、非常に香りが強く、味も非常に濃厚で美味しく歯触りも良いです。
三重大学も含めて三重県は、毎年、しかも生産者毎に製品をチェックしています。
それも品質を担保するためです」

外部の分析機関によってDNA検査を受け、アサクサノリと認められたもの。
摘み取るのが1回であること。
三重県で採取されたアサクサノリの野生株で、三重県水産研究所が保有する種を用いること、など、
三重県では5つの定義を設け、伊勢アサクサノリの品質を守り、そのブランド価値の向上につとめています。
 
9月末の種付から漁場への張込・、そして摘採と呼ばれる収穫を終えたアサクサノリ。
昨シーズンの、ほぼ全滅という試練を乗り越え、再び新たな一歩を踏み出しました。

香り高く濃厚な味わい。
かつて日本の食卓を支えた伝統の味をいまによみがえらせ、漁業の活力にしたい。
そんなみなさんの熱い思いが込められた1枚1枚が、いま市場に出ようとしています。

 

3週に渡って放送する『伊勢あさくさ海苔保存会』の取り組み。
次週、いよいよ最終話。
奇跡の復活をとげた伊勢アサクサノリは、市場にどう評価されるのか。
共販と呼ばれるセリの様子をお届けします!