FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年4月11日放送

今回は多気町にある『せいわの里まめや』の北川静子さんがお客様です。
豊かな農村の文化を残していきたい。
農村料理のレストラン・まめやができたのは今から15年前でした。
まめやが大切にしている食材のひとつが大豆です。
勢和には、昔、15軒もの豆腐屋さんがありました。
それが1軒だけになり、その方に教えていただいた昔ながらの製法で豆腐を作っています。

べてが地元産の食材、すべてが手作りの料理

はじめは8人、今は35〜6人働いてもらっています。
年代もはじめは60〜70代でしたが。今は20代から80代まで広く働いてもらっています。
昔の技や知恵は昔の人がお師匠さんなので、その人に教えてもらいながらみんなが腕を磨いていく、そういうお店です。
昔、法事などのときに集会所で呼ばれるおかずが、とても美味しかったんですよ。
それをいつでも食べられるようなお店ということで、全て手作り、全て地元産で懐かしい料理をお腹いっぱいに食べてもらおうとはじめたのが『まめや』です。
農家さんが美味しい野菜を作ってくれるし、子どもたちが土筆やフキを持ってきてくれます。
もちろんそれらは買い取ります。
足元にある素材を、昔の人は美味しく料理したりしました。
それらを全部こちらではお年寄りに教わって、懐かしい料理に変えていくわけです。
はじめは、子どもたちにしたら土筆などはそのへんの草ですよね。
見向きもしないもの。
でも、ハカマを取ってここに運んでくれば100g100円になりますから。
ハカマを取るというのが子どもは根気がなくて苦手ですが、家のおじいちゃんやおばあちゃんが手伝ってくれるんですよね。
それを得意げに持ってきてくれるので、秤にかけて現金で払うんです。
とても嬉しそうに子どもたちは持ってきますよ。

 

豆を使ったメニューは70種類

お豆腐とか揚げとか、味噌とか…最初はそのくらいだと思っていたのですが、実際にお店をやってみると、お味噌一つとっても旬で変わってくるんですね。
今だとフキノトウ味噌ができるし、冬だとゆず味噌ができるとか、揚げのそぼろのお味噌汁ができるとか…。
漬物もたくあん・らっきょなどいろいろな種類があります。
お豆腐は寄せ豆腐や濃い豆腐、揚げも厚揚げや飛竜頭もあるし。
やってみたらとても広いんですよね。
農村料理のバイキングをしていると、お客さんから食べた料理を買いたい、ほしいという声が上がってきました。
それを一つずつ商品にしてきたわけです。
はじめは豆腐や揚げや味噌や漬物くらいしか売っていませんでしたが、今は70種類くらいの商品があります。
お客様の声から生まれたものばかりです。
お母さんは、自分の子どもや孫や旦那さんに美味しいものを食べさせたいと思って工夫するじゃないですか。
工夫したり試行錯誤したりして年月をかけて磨き上げられてきた料理が家庭料理で、それぞれ家庭の味があります。
それらの味を、どれが一番美味しいかと磨き上げられてお出ししているのが『まめや』なので、私も呼ばれますが美味しいですよね。
気持ちが健やかになるというか。
そういう料理を作ってもらっています。

 

元がうまく循環することを意識しながら運営している

この地域の人たちに働いてもらっていますが、売上の65%くらいを地元に還元しています。
働いてもらった賃金であったり、農家の野菜代、子どもたちの土筆代であったり。
お客さんがここにお金を落としてくださる。
それを地元に向いてみんなでお金を回していく。
お酒もトイレットペーパーも、みんな地元で買いますからね。
お金を回す仕組みを、ここで作った形ですかね。
農家さんも子どもたちも、大豆を育ててくれる方たちも、働いてくださる方たちも、いろいろな人たちに支えてもらってここを運営しています。
みなさんの力でここは動いている感じかな。
ここの70代、80代の人たちはみんな元気ですよ!
いろいろなことも知っているし、動きも機敏だし…お年寄りは本当にすごいと思います。
ここの人たちは、半分家のことをして、半分ここで働いてもらっています。
それぞれ家の用事がりますからね。
子育てのお母さんもいれば、介護をしているお母さんもいれば、野菜を作っているお年寄りもいます。
みんなでシフトを作って働いてもらっているのが良いのかもしれませんね。
やっぱり、自分が風邪を引いて熱を出すこともあるし、子どもや孫が熱を出すこともあるし、急にお葬式が入ってくるなんてこともあるし。
家庭は、そういうことありますよね。
そのときにお互い様で、代われる体制ができています。
それは週の半分働くから、代わってもらえるんですよね。
週5日働いていたりすると、なかなか代わってもらえないです。
先日代わってもらった人が、今回は代わりに出てくれて、厨房とかお豆腐とか、いろいろなところを責任持って回してもらっています。

 

舎の助け合いの生き方が素晴らしい

田舎は助け合いがありますね。
田植えになったら近所まわりの人みんなが田に入って、お尻を並べて一斉に後ろに下がっていったり、稲刈りもみんなで一緒に農作業していましたね。
美味しいものをもらったらご近所に分けたり…そういうことで喜びを感じるというか。
そういうのがまだ残っている気がしますね。
お年寄りさんだから、そういう雰囲気が醸し出されているのかなあ。
率先して自分たちで、何かしなきゃならないときは「私がするわ!」みたいなところがありますね。
お年寄りさんたちは損得よりも『人に喜んでもらえたらとても嬉しい』という気持ちが溢れています。
私たちはそういうのを見せてもらって聞かせてもらって、人とのふれあいやつながりみたいなものを教えてもらっています。
やっぱりお年寄りさんたちはすごいな、と思います。

ここに来るお客様が、お日さまの日差しや心地良い風と、ここの料理とセットのような形で農村を楽しんでいるんだな、ということがわかりますよ。