FM三重『ウィークエンドカフェ』2020年9月5日放送

今回は、フォトグラファーの古市真崇さんがお客様です。
今年、今までの仕事を辞め、カメラマンの道を歩み始めました。
大学時代、写真の世界を知り、楽しさがどんどん増していきました。

学はデザインやグラフィックに行きたかったが成績が足りず写真へ

写真を始めたのは大学の頃からなので、それだけで言うと15年くらいやっています。
が、写真を仕事にしたのは、実は今年からなんです。
けっこう最初は動機が不純で。
本当はデザインとかイラスト的なところに行きたくて、大阪芸術大学を受験しました。
ちょっと実力が足らずにデザインでは受からず、写真ではいけそうだったので、そちらを勉強しながらデザインも並行してやっていこう、との考えから入学しました。
しかし本気で一眼レフを買ってやるうちに面白さに気づいたのがスタートですね。
被写体にすることが多いのは、人ですね。
今は動画もしているんですけど、これも風景だけではなく人に対するバックボーンをどうやって前に出してくるかがとても楽しくて、人を撮ることが多いです。
その人の『真実』に触れたいという気持ちがあって、写真を撮るというのは、僕の中では手段であって、結局のところ、その人の本質に触れたいんです。
なぜこの人はこういうことを始めたんだろう…とか。
例えば料理人だったら、なぜこの人はこの料理を作ろうと思ったんだろう…というところに触れたい、知りたいみたいなのが、原動力にあって、それをするのに写真や映像が一番近くにあったので、それを選んだという感じですね。

 

を続けることよりもカメラをやりたい気持ちが勝った

伊勢で初めての江戸前蕎麦を始めたのが父の店『みなせ』です。
大学卒業して1〜2年後、ちょうど東日本大震災のタイミングで伊勢に帰ってきて、継ぐことになりました。
そこから約8年間お店をやり、その後店を閉めたということになります。
継ごうと思うきっかけは、単純に父親から帰ってこいと言われたのと、当時は東京に住んでいたのですが震災のタイミングが合って、ちょっと当時住みづらい空気があって。
仕事も震災の影響で、一旦休むとなっちゃって。
じゃあもう辞めて帰ろうかと。
休みのタイミングで帰ってちょくちょくやっていたりしたためか、感覚でわかっていたのか、とても早く、3ヶ月くらいで覚えて打っていた気がします。
ちょうど父とフェードイン・フェードアウトで変わっていく感じで、いつの間にか父親が打たなくなっちゃって、という感じでした。
勇気は確かに要りましたね。
伊勢で33年続いた人気の蕎麦屋の閉店は、町のみなさんから残念がる声をたくさん聞きました。
愛してくださるお客さんもたくさんいらっしゃったし、僕の中でも生まれたときからあったところなんで…心苦しいこともあったんですけど、そのときは新しいことに挑戦したい気持ちが勝ちました。
それしか見えていませんでした。

 

安もあったけど、今は前を向いて歩いていける

足元を見るじゃないですけど、ふと下を向いたときは不安になります。
細かい数字とかにゾクッとすることもあります。
でも、今はそういうのが気にならないくらい前を向けているというか。
やっぱりやりたいことに対する不安というのは、こんなにも気持ち良いというか、悩んでいて楽しい。
これを乗り越えたらあそこに行けるというワクワク感と、それを前で待っていてくれるというか、「早く来いよ!」と言ってくれる人たちが、ありがたいことに周りにたくさんいるので、今はモチベーションが下がることなくあるき続けていられます。
それも込みで、お蕎麦屋さんの繋がりだったり、昔からの友だちとかに助けてもらっています。

 

客様の見える部分とその裏側も引き出したい

飲食店のHP写真を現在進行系でしていますが、そのときにHP用の写真がほしいと言われたんですね。
料理の写真ではなく、その人のルーツである熊野の写真を撮ってほしいとのことでした。
その時僕は熊野に行ったことがなくて、なんとなく想像していたのは雄大な自然とか…本当にそういう、雑な言葉でしか語ることができなかったんです。
熊野に実際に行ってほしいと言われ、その人に連れて行ったいただいて。
実際に体感した自然がもう、怖くなるような…言葉は悪いですが、本当にここで僕がいなくなっても誰も気づかないし、変わらずここの自然は移り変わっていくんだろうなと、雄大というよりは畏敬の念を感じるような自然でした。
それを帰りの車でシェフに話したら、それを写真に撮ってほしかったんだと言われました。
体験・体感して写真を撮るのと、最初に抱いていたイメージだけで写真を撮りに行くのとじゃ全然違うということがわかりました。
自分は好奇心旺盛だと思うのですが、それでガンガン写真を撮りに行って、この目で見たもの・感じたものを写さないといけないんだなと、改めて勉強させてもらった機会でした。

何かしら、『みなせ』以上にみなさんに伝えられるものを残したいと思います。

書家・伊藤潤一の個展内で上映されるプロモーション映像を担当しております。