FM三重「ウィークエンドカフェ」2022年7月9日放送

名張旧市街地に築100年を超える町家を改修してコワーキングスペース・イベントスペースの『フラットベース』が誕生しました。
今回は、フラットベース代表の北森仁美さんと『一般社団法人つなぐ』の代表理事、野山直人さんがお客様。
北森さんからリノベーションの相談を受けたのが野山さん。
野山さんにとっても守っていきたい町の景色がありました。
まずは大切な場所を北森さんに紹介していただきます。

主人の祖父母の家。昔からたくさんの人が集まる場所だった

北森 もともとこの建物が夫の母の実家で、夫のおじいちゃんやおばあちゃんが住んでいた家でした。
私は名張にご縁がなく、夫が生まれ育った町ということで、名張に住んでいます。
おじいちゃんおばあちゃんの家なので、子どもが小さな頃はよく遊びに来させてもらいました。
ここに来るといっつも誰かいるんです。
いっつも誰かいて、おじいちゃんがコーヒーを淹れて振る舞って、ケーキを出して…玄関の鍵も閉まっているところを見たことがなくて、いつでも誰かが「こんにちは!」っていう雰囲気で、とてもあたたかい場所だと思っていました。
私自身が叶えたい夢が、ここを人が集まる場所にして、みんなに元気になってもらいたいということでした。
おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなって空き家になったときに、ここの場所をつないでいきたいと思い、たまたま野山さんとのご縁もあり、ご相談したところ、1年でトントントンと進み、みなさんが集まれる場所をオープンできました。
人が集まるところは温度感が良いなと、肌感覚で感じていました。
空き家になったのを目の当たりに見て、一気に風が通らなくなり、温度が下がったような感じがしました。
それがとても寂しくて、おじいちゃん、おばあちゃんがつないできたあたたかいものがここで終わるのかなと思ったら、ちょっと耐えられなくて。
私自身も人と繋がりながら、この場所で人が元気になる応援ができたらなと思ったのが、きっかけです。

 

築屋さんとして携わった。自分の力を活かせないかなと思っていた

野山 私の本業は工務店です。
ここの場所も僕が建築家として工事をさせてもらいました。
もともと、5年前に創業・起業して、旧市街地を拠点に、ずっとやり続けてきました。
そんな中、建物の改装ということで、北森さんがご相談に来られたところから出会いがはじまりました。
僕は名張市で生まれ育って、特に10歳までは旧市街地にいたため友だちも多く、庭のような感じでした。
そういう思い出がある地域で、建築ができるという立場としてUターンして帰ってきました。
これまで建築で培ってきた知識や経験を、何かで恩返ししたいというか、力を活かせないかなと、日々工務店を営む傍ら、ずっと思っていました。
その中でも、起業して1年ほどで隣町の新町で空き家にご縁ができ、今も作業場としてずっとお借りしています。
そうすると、地域の人の声もよく聞かせてもらいます。
少子高齢化、名張も例外なくやってきています。
旧市街も本当に子どもの声が聞こえません。
顔を知った子どもが何人か通るくらいです。
日常を日頃から見ていると、昔の光景を知っているだけに、なんだか寂しい思いがしました。
まったく同じ景色を取り戻すのは、この時代は無理ですが、それでもこのまま指を加えて地域が廃れていくのも悔しいです。
もともと起業したときから持っていた思いを周りの人に言いふらしていました。
「こんな場所を作りたい」
「人を集めないといけない」
絵に描いた餅をずっと言っていたんですけど、言い続けていると不思議なもので、こうしていろいろなご縁が繋がっきて、形になってきました。

 

と人が繋がれる場所。大人の秘密基地。この姿を子供たちに見せたい

北森 『フラットベース』、この名前にはたくさんの思いが詰まっています。
自分が『フラットに帰ることができる場所』。
無茶苦茶がんばるというより、本当に自分がしたいことを、この場所でやり遂げることができるきっかけとなる場所、という意味だったり、人と人がフラットに繋がることができる場所だったり、あとは『フラッと』立ち寄れる場所…など、意味をたくさん込めて、この名前になりました。
そして『ベース』は基地という意味です。
大人が秘密基地みたいに集まってきて、出会いがあったり仲間が集ったり。
大人って楽しいなと思えるような場所にしたいですね。
その姿を子どもたちが見て、「早く大人になりたい!」と思えるようなことができると良いなと思います。
ここで夢を叶えるかもしれないし、本当にくだらないことでいつも笑っていたり。
ここに来てくれる方が、駐車場から歩いてくると何mも前から笑い声が聞こえてくると言っています。
寂しくなってきた町並みに、笑い声が響きだしている…そういう場所が、私たちだけでなくみなさんが来てくれることで、どんどん輪が大きくなっていったり、頑張ろうと、背中を押してもらえる人が増えていったりするといいなあと、思っています。

 

の世代が住みやすい街を作るには大学生と一緒に街を作ることが望ましい

野山 『一般社団法人つなぐ』は、大人は僕一人。
ですから代表は僕です。
が、この法人メンバーには大学生が3人いて、社員という形で迎えています。
4人で活動をはじめたわけです。
今はもうちょっと膨らんでいますけど。
名張には、自宅から関西方面の大学に通う学生たちがたくさんいますから、若い世代も一緒にこの場所を作っていっています。
現役大学生が、まちづくりの勉強をしてくれていたり、教育大学に通っていたり。
学校の勉強と僕たちの町で実地で活動をつなげつつ、楽しみながらここに出入りしています。
なんで大学生を、しかも3人も一緒に活動に加えていきたいかというと、僕たちがいくら『まちづくり』と言ったところで、次に住んでいく世代の子たちが住みやすいと思えなかったら、持続可能なまちづくりではないと思うんです。
僕はあと10年がんばって礎を築いたとしても、そのときにおっちゃんになってきていると、若い人に届かないじゃないですか。
そういうことをしているとだんだんと需要と離れていってしまうので、だったら今のうちから次のまちづくりの世代の子たちと一緒に活動して、これから10年積み上げていけば、ど真ん中世代となった彼らたちが、自分たちの思いでまちを作ってくれるんじゃないかなと。
その子たちがさらに次の世代につないでいく、というのがグルグル回っていけば、それこそ持続可能なまちづくりになるのではないでしょうか。
僕たちは建築屋さんを通してまちの課題を見て、こういうところできっかけをもらったけど、それを次に残していく仕組みを作ることを、同時に進めていかないとと思いますね。

北森 これからどんな風なことができて、どんな風に変わっていって、どんな風に人が輝き出すんだろう、というのが、今の原動力ですね。

野山 いろいろなものをつないでいく役目ですね。
面白い素材はまちに転がっているし、いろいろ面白い人もいっぱいいるんです、名張には。
僕らはそういう人同士を磨いて、見つけてくっつけていきます。