FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年9月15日放送

今回のお客様は、鳥羽で『伊勢海老 海鮮蒸し料理 華月』を営む尾崎昌志さんです。
尾崎さんのお父さんがこのお店を始めたのが、今から26年前。
当時、海の幸を蒸して食べさせてくれるお店はとっても珍しかったそうです。
中学生になった頃から、尾崎さんはいつも、おみやげもの売り場でお手伝いをしていました。
それから20年ほどたった今、オーナーとなった尾崎さんが、新たなるおみやげ作りに挑んでいます。

■本物志向を貫きたい!

今、『尾鷲ひのき』のせいろを試作中なんですよ。
お客様から、『伊勢海老のせいろ蒸し』のお持ち帰りしたいとの要望がありまして。
蒸し上がった熱々の状態を、家で味わえないかと。
しかし、家に持って帰って電子レンジなどで温めると、2回温度を上げることになるので、どうしても味が落ちてしまうんです。

だったら伊勢海老は生きたままで、自宅でしていただいた方が良いかな、と思い、今回作ってみたんです。
実験段階では、このせいろを使うと、かなりお店と同じようなものができますよ。

あ、もちろんお店にも来ていただきたいんですけど(笑)

そして一回注文していただければ、次回からは、中身だけ送るということもできるでしょ。
実際、最近の普通の家にはせいろがありませんし、あってもシリコンスチーマー。
でも、本物志向の方にはこちらのほうが良いですよ。
ずっしり重量感もありますし。

食材、お店づくり・・・私はすべてに関して本物思考なんです。
そして本物を追求していると、面白い方に出会えるんですね。
自分と同じように、何かにこだわっている匂いがするというか。
「そこまでこだわっている人がいるんだ」とワクワクしてきます(笑)


■地物にこだわる・本物にこだわる

私が小学校2年生に上がる時にこのお店ができて、ちょろちょろ店内を走り回っていました。
そして、中学くらいから本格的に手伝いを。
お店の法被も着たりしましてね。
高校大学とずっと地元の学校だったので、その間もお店を手伝っていてました。

就職は別のところで10年ぐらいお世話になって、こちらに戻ってきたのは2年弱くらい前です。
お店に入ったのもそこからですので、まだまだなんですよ。

普段の仕事は料理長と話をしながら。
ウチの店は、私とは別に料理長がいまして、私が直接料理に携わるということはないんですね。
なので、どういう料理を作るか、今、旬のものは何か、その素材で何が作れるか・・・ということを話し合います。

父親の代の頃は「一年中伊勢海老を味わえるお店」「蒸してかぶりつける」というのが売りで、店名も『和風レストラン 華月』でした。
しかし、蒸し料理の専門店が東京ではチェーン店化されるほど沢山あるので、専門性が出せないと考え、私が帰って来たのを機に、『伊勢海老専門店』にしようと思ったんです。
もともと伊勢海老が常時生け簀に100匹以上いるのが当たり前だったので、看板を変えるだけで良いと。

『伊勢海老 海鮮蒸し料理 華月』という名前に変えて、お料理も蒸しの段の他、お刺身とか入れたりと、すべてメニュを変えました。

しかし、伊勢海老専門店になったものの、自分の中で『地物』の伊勢海老を使いたいという思いが強く湧いて来て。

ウチのお店は地元の人にも来てもらってますが、やはり観光商売ということで、大阪や名古屋から来ていただくことが多いです。
なのに使っている食材が千葉産、四国産というのは、目の前に海があるのに、お客様に対して何かこう、ウソをついているような気がしてしまって。
あ、もちろん千葉産・四国産が悪いという意味ではありませんよ。

そうではなく、やはり地物・・・三重県産にこだわって行きたい、という気がありまして。
今年から、伊勢海老の禁漁期間は販売しない。という方針をとりました!

伊勢海老のある時期は、今年は9月16日が解禁で網入れ。
17日に入って来るので、18日から伊勢海老コース料理を中心にして、来年の4月末までが漁なので、5月いっぱいまで何とか持たせようと。
それ以降は伊勢海老ではなく『アワビ専門店』になろうかな、と(笑)

ちょっと調べたんですが、江戸時代に大ブームとなった『おかげ参り』が、最初の観光旅行だったと言われているんですね。
その旅行の中で、内宮前の方々が『施行』というかたちで、参拝された方に無料でお食事を施したり、おもてなしをした。
お出しするのは、その時々にあった『地の物』。
それが最初のレストランというか・・・「食事を提供する」最初の形というか。

その時にある食材でおもてなしをする・・・ということを守って行きたいですね。


■スタッフは家族

私は今まで、自分から何かをしたいと、家族にあまり言ったことがなかったんです。
だから、「伊勢海老専門店にしたい」と言ったら、逆にびっくりされました。
それでスタッフでもある家族に、真剣に話を訊いてもらおうと。
実はノープランだったのを、何とか説得するためにプランがあるように作って話をして。
つまり家族にプレゼンしたわけです。
そのプレゼンをしたことで、自分の中でもモヤモヤが消えて、「よし、伊勢海老専門店でいこう!」と気持ちが定まりました。

父は、私が結婚してすぐ、倒れてしまったこともあり、「すべて任せる!」と。
プレッシャーはあまりなくて、逆に「こんなんできるかな、あんなんできるかな」と思うとワクワクして来ました。
その反面、心配なこともありますけど、やってみないとどうにもならないし。
失敗してもどうにかなるだろうと(笑)

まあ、実際やってみると、全然思い通りに行かなくて。
以前働いていたところにも、忘年会で使ってもらったりとたくさん助けていただいて・・・本当にありがたいです。


■鳥羽の三女神(さんめしん)

私が好きな場所に、このお店から車で5分くらいの場所にある『かぶらこさん』があります。
正式名称は『伊射波神社(いざわじんじゃ) 』。
『かぶらこ岬』の先にあるので『かぶらこさん』と呼ばれているそうです。
車を降りてから、実は15~20分くらい歩くんですが、ちょっと・・・かなり険しいんですよ、道が。
ここは『志摩の国一宮(しまのくにいちのみや)』と言われているところで、日本では一番険しい『一宮』だと、一宮めぐりの方々の中でも、かなり噂になっているそうです。

何でそんな場所に行くのかというと、険しいところをがんばって行ったからには、ご利益があるかな、と(笑)。
途中、2つ目の鳥居が見えてくる頃から、膝がガクガクしてくる。
ヒールで行っちゃいけませんよ。
石の階段が続くので、、本当に歩くつもりで行かないと。

最近『石神さん』が有名ですが、相差の『石神さん』、河内町の『彦瀧さん』、伊射和神社の『加布良胡(かぶらこ)さん』が鳥羽の三女神(さんめしん)と言われているんです。

彦瀧さんも石神さんも近くまで車で行けるのですが、かぶらこさんだけは、けっこう険しいです。
でも鳥羽まで来たからには、是非この3つは行って欲しいですね。
それから、この三女神は蛇を待つ神様と言われていて、途中で蛇を見ると良いそうですよ。
僕は2回見ました。
白蛇を見るといいそうです。

3つの神社に愛称が付いているのは、地元の人やその土地に、愛されているからでしょうね。
鳥羽は良い所ですよ!