FM三重「ウィークエンドカフェ」2013年1月12日放送

今回のゲストは羽田知弘さん。
出身は愛知県津島市で、現在、三重大学・生物資源学部の3年生。
森林の計画や林業について調査、研究をしています。
そして、尾鷲をこよなく愛する人です。
その想いはとても強く、2012年12月5日、尾鷲ひのきを使った商品を販売するオンラインストア『おわせカンパニー』を立ち上げました。

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■若きフォレスターが誇りを持って働いている!

僕は高校が進学校だったのですが、大学受験に失敗して一年浪人したんです。
そして志望していたのとは違う大学に入学し、「何かしないとヤバイな」と思ったのですが、何をしていいかわからない。
そんな時、たまたま早稲田大学のボランティアツアーに参加する機会があり、3週間、岡山県新見市の森林で間伐作業をしました。

全国から大学生が30人くらいが住み込みで来ていたので、3週間、朝から晩までチェーンソーで間伐し、夜はみんなで飲んで・・・の共同生活。

その時に若いフォレスター(林業技師)の話を聞く機会があったんです。
驚いたのが、月の給料が7万だということ。
雨や雪の日が多いと仕事にならないので、7万にしかならない。
衝撃的でしたね。
それじゃ食べていけないでしょう。
1000人に1人は死ぬといわれているような職業なのに、7万じゃ誰もやらないよな、おかしいよな、と思いました。
でもその人は、誇りをもって仕事をしている。
でも7万。

ちょうど、この3週間の間伐作業経験を通して、林業に行きたい・・・もっともっと林業について勉強したいと思っていて。

林野庁に行くか、大手のハウスビルダーに行くしかないなあ、と考えた時に、あまりしっくりこないな、と思ったのが、『おわせカンパニー』を考えはじめたきっかけでした。
自分が山に入って安いお給料で木を切りたいかというとそうでもないし、かといって林野庁とか大手に行きたいかというと、それも違うなあ、と。
将来は木材や林業にかかわりたいと思いながらも、じゃあ何をしたら良いんだろうと、ずっと悩んでいた時期ですね。


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■林業はカッコイイ!

尾鷲は3大人工美林と言われているんです。
人工的な山で、日本で3本の指に入る美しい山という意味。
それは教科書で勉強したし『尾鷲ひのき』というブランドがあるのも知っていました。
しかし、実際山に入ると暗い山が多いんですよ
全然間伐されていないような、もやしみたいな細い木ばかりで、暗いんです。
持っていた知識と、そのギャップに最初は驚きました。
でもやっぱり、ヒノキの木目というか、木材になったものを見ると、本当に綺麗なんですね。
肌色というか薄いピンクで、すうっと木目も通っていて、年輪も緻密で。
何より、香りが強いです!とても良い薫りが。

こんなに周りにいっぱいあるのに、お金にならないとか、仕事にならないのはもったいないなあ、と思いました。

とても印象的だったのは、子どもから親の仕事は何かと聞かれた時に、「林業だと、胸を張って答えられない」と言っている方がいて。
自分のフォレスターという職業を、子どもに誇れないと。
僕にとっては、それがとてもショックでした。

なので僕は、「林業ってカッコイイじゃん!」「日本の森を守っているってカッコイイじゃん!」と思ってもらえるような、モノを作っていったりとか、そういう仕事が出来ればな、と考えています。


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■1円でも売り上げを出したい!尾鷲の町を発信したい

林業のことをずっとブログで書いていて、それにコメントをくださり、読んでくださっている方がいる一方、僕は主義主張を言っているだけなのに気づきました。

言うだけでなく、もっともっと前に進むため、1円でも売り上げを稼ぐために『おわせカンパニー』を立ち上げ、尾鷲ひのきのブレスレットの販売を始めました。
出来上がった商品を初めて見たときの感動、箱を開けたときのあの香りは絶対に忘れません。
森を作る人たちは、職人。
僕はその思いを発信する人になりたいです。

お金を稼げるようになって、尾鷲に移住できればな、ということも考えています。

今はまだ三重大学の学生ですが、自分で稼げるようになって尾鷲に移住して、もっともっと尾鷲の森や、尾鷲の町自体の魅力を伝えていきたいです!

僕は愛知県津島市出身で、そこももちろん大好き。
尾鷲は僕がインターンシップに取り組んだ町ということもあるんですけど、とても魅力的なんですよ。
コンパクトシティというか、ギュッと凝縮している感じ。
背中は山だし、目の前は海だし、町中には家とか店が詰まっていて。
林業と漁師の町でもあるので、それに通じて発展した文化とか風土がいっぱいあって面白いなあと。
例えば『はしご酒』も尾鷲の文化ですよね。
40年以上営業しているスナックがたくさんあって、普通に朝の5時くらいまで営業していたり。
4軒くらいはしごして、ベロベロに酔っ払ってね。
お酒大好きです(笑)
年上の人と一緒に飲むお酒も大切です。
人生の勉強がたくさんさせてもらえますから。


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■オンラインストアをはじめたことで大学の勉強の重要性がわかった!

大学生的な生活は、入学して3ヶ月くらいで全部できちゃったんです。
例えば、恋愛をしてみる、合コンに行ってみる、サークルに入ってみる、徹夜で飲みまくる・・・大学の講義をサボって、どこかへ遊びに行くとか。

大学生らしいことってたくさんあると思うんですけど、僕は浪人していたこともあって、すごく妄想していたんですよね。
大学に入ったらあれもしてこれもして・・・みたいな憧れ。
それが勉強していた時の頑張る原点だったんですけど、実際入学してみたら、3ヶ月くらいで全部終わっちゃって。

そのことが最初に話をした、林業のボランティアに行ったきっかけとなったんです。

実際にオンラインストアのビジネスを始めてみて、改めて大学での勉強の大切さを知りました。
僕のビジネスはモノを売るだけではなく、理論的な勉強や林業とか森林の専門的な勉強が必要です。
それは大学でないと学べないので。
そういう意味では、今、とても学べているな、と感じます。

大学生でありつつ、森にも携わりつつ、自分のやりたいことをする・・・そういう点では、『おわせカンパニー』というウェブサイトは、あるべき形だったのかもしれないですね。
大学は津だし、『おわせカンパニー』の舞台は尾鷲市だし、自分が住んでいるのは愛知県の津島市。
離れているんですけど、そこにいなくてもインターネットで自分のしたいことをできる形があるのは良いことですね。


僕はずっと、少しでもレベルの高い高校・大学に行って、みんなが知っている大企業に就職して、そこで大学で学んだことが少しでも活かせて、他の人より少しだけ多くお給料をもらって、福利厚生が整った企業で働くこと・・・これが自分にとっての一番の幸せだと思っていました。

しかし実際に『想い』を持って働いている方と一緒にいると、

「こんな風に生きてもいいんだ!」
「こんな風に生きて、こんなにキラキラできるんだ!」

と自分の中で大きく実感したんです。

「オレもこんなふうに生きたい!」
「こんなふうに『想い』を持って仕事をしたい!」

と感じたことが、とても良い経験であり、フォレスターの方に学ばせていただいたなあ、と思っています。